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イレイズ

まずこの世界について説明しよう。この世界では魔法が全てだ。魔法が上手く使えないだけで蔑まれ、差別される。そんなことが当たり前の世界。魔法には火、水、風、光、闇の5つしかないとされている。これらは生まれつきの適正で決まり、5歳の時に調べられる。さらに、それぞれの適正の中で最も優れた一族を魔帝と呼ぶ。みんな魔法を使い魔物を倒すのだ。魔物とは魔法を扱う元となる魔力を持ち凶暴化した動物のようなものだ。弱い魔物なら魔法を使って来ないが強い魔物ともなれば一撃で大被害を生むことも出来る。魔物の中の最上位にはドラゴンがおりドラゴンの中でも最強の個体を龍神という。そして、龍神にはこんな言い伝えがある。「龍神は天災である。怒りに触れたならただ、過ぎ去るのを待つのみ。」




僕は水の魔帝グラント家に生まれた。生まれた時は赤ん坊とは思えないほど多い魔力を宿していたらしい。さらに3歳になる頃には魔力が上がり魔帝の一族の中でも1番の魔力量になった。誰もが僕を認めてくれた。僕には姉と弟、妹がいた。姉とは1歳差で、弟と妹とは同時に生まれた、いわゆる三つ子だ。そんな中、姉には甘やかされ妹には憧れられた。まぁ、弟には嫉妬されたが幸せな毎日だった。そう、だった。

僕の人生を奈落に落とす出来事が起きた。それは5歳の時の適性検査だ。適性検査は水晶に触れ魔力を通すだけ。すると水晶の色が変化するのだ。火なら赤、水なら水色、風なら緑、光なら金色、闇なら黒となる。そして複数の適性を持つ人はまさしく才能の塊とされる。僕も複数の色がある。これだけなら僕も喜べた。だが、色が問題だった。僕の色は青と黄色、あと、不思議なことに他の人にはない靄のようなものもあるのだ。

この日から全員の態度が変わった。誰とも一切喋ってくれないくっなのだ。誰もが口をきいてくれない。そう、まるでいない存在として扱われているように。

僕は必死に頑張った。また、認めてもらえるように。また、楽しい時間を手に入れるために。

魔力量と魔力制御はかなり上達した。だが、それだけだった。自分の適性が全く分からないのだ。仕方がないだろう。

半年が経ち、僕は捨てられた。しかも周りに露見されないために貴重な現代では複製できないとまで言われるアーティファクトと呼ばれるものの一つを用いて僕を最も危険と言われる“死の森”と呼ばれる森に転移させられた。


「何で僕がこんな目に・・・」


小さい頃は大事に育てられたが適性がよく分からなかっただけで捨てられるなんて酷い人生だった。しかも送られたのがよりにもよって“死の森”ときた。

絶望しながらこれからのことを考えていると僕に影がかかった。見上げているとそこには龍がいた。


「そうか、君が僕の処刑人か。」


僕を殺しにきたのは龍。逃げるのは不可能だろう。


「なぜ、人間がここにいる?」

「喋れるんですか?」


龍が人間の言葉を喋ったのだ。驚いて当然だろう。


「そんなことはいい。我の質問に答えろ。」

「捨てられたんですよ。ここに。」

「なぜだ?」

「適性検査で色が黄色と青だったんです。」

「ククク、クハハハハ!!」


僕が理由を話したら大笑いするなんてなんてどうしたんだろう?


「一応聞くが適性検査の時、靄がなかったか?」

「え!ど、どうしてそれを!」

「遂に見つけたぞ。我の後継者。」

「後継者?あなたの?」


龍は説明してくれた。この龍は龍神らしい。聞いた瞬間は嘘だと思ったがどうやら本当らしい。俺の適性は氷と雷と龍という適性らしい。そしてこの龍の適性が龍神の後継者となる資格のようなものらしい。過去には氷と龍の適性の龍神や最悪の龍神と言われた雷と龍の適性龍神もいたが、三属性持ちの龍神は初めてのらしい。


「と言うことで汝には魔法を扱えるようになってもらう。」

「どうしたら龍神になれますか?」

「我が死ねば汝が受け継げる。我はもう長くない。恐らくあと1年持つかどうか。そんな中、汝に会えてよかった。最初はかなりの魔力量を持ちながらあまりにも幼いから話しかけたのだがよかった、よかった。」

「えと、僕は人間ですよ?」

「汝は龍の適性を持っておるからなる資格がある。本当ならあり得んことだがなれるのだから問題ない。」


どうやら俺が死ななかった理由はただの運ということか。だが、魔法を使えるようになるのは願ってもいないことだ。しかも、龍神なのに人間って変だろ絶対。


「よろしくお願いします。」

「そういえば汝の名前は聞いていなかった。我はイレイズだ。」

「僕はゼラル。家名はもう無いからイレイズ。ゼラル イレイズです。」

「ククク、我の名が家名か。我の名前を背負うからにはしっかりとした龍神となれ。ああ、言い忘れたが龍神と言っても自由に生きて良い。普通の人間と紛れても良い。好きにするがよい。さて、早速特訓だ。」

「はい、イレイズさん。」

「イレイズで構わん。敬語も不要だ。」

「分かったよ、イレイズ。」






そして1年が経ちこの時が来た。


「ゼラルよ、我はもうすぐ死ぬ。」

「・・・ああ。」


そう、もうイレイズは衰弱しきり、立つのもままならなくなった。


「我死んだ後、変な球に変わる。それに魔力を通せ。良いな?」

「何でだ?」

「それが龍神になる本当の儀式だ。龍の適性を持つものが魔力を通すとそれが吸収され、さらなる力を得る。」

「俺は龍神になる資格があるのか?」

「球の名前は龍玉という。龍玉は身体能力全般に加え、魔力量や魔力制御能力も上がる。それが我の中にある状態で汝は勝ったのだ。しかも、まだ、病気の症状が酷くない状態でな。恐らく汝が、龍玉を手に入れたら歴代最強の龍神に成るだろう。頼むぞ、我が息子。」

「っ!!」


まるで親のように、いや、親よりも愛情を注がれた相手がもうすぐ死ぬんだと今になって、初めて息子と言われて実感してきた。少し涙が流れたのは仕方がないだろう。


「分かったよ、イレイズ。約束だ。」


この日、龍神は死んだ。俺は約束を果たすことにした。龍玉に魔力を通す。すると、龍玉が俺に吸収されていく。俺はあまりの痛みに意識を落とした。


次の日起きて色々のことがわかった。まず、魔力量と魔力制御の変化。まぁ、これは予想どうりだがなんだか自分の体に違和感を感じ、少し歩いたところにある湖で自分のことを写すとそこには別人のような人が立っていた。自分と分かっていなかったら見とれてしまうくらいイケメンだ。

髪が黒から銀髪になり、瞳はイレイズと同じ金色になった。心なしか身長も伸びた気がする。


「イレイズと同じ金の瞳か。」


この瞳はとても嬉しい。俺とイレイズを繋ぐ確かな証のように思えるからだ。


俺はイレイズのおかげで強くなった。正直グラント家は憎んでいるが潰そうとは思はない。グラント家のおかげでイレイズに会えたのもまた、事実だからだ。だが、特にしたいこともない。そこで俺は今後の予定を決めた。それは、学園に通うことだ。入学できるまで時間がかなりある。その時までトレーニングを年単位ですることにした。それしかやることがないしな。

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