詩 塾
「あ」
「どうしたの?」
下校途中、俺が足を止めると、彼女が不思議そうに見つめてくる。
ダイヤのように澄んだ瞳。
俺は素直に答える。
「俺、塾に通うことになるかもしれない」
「え、塾!?」
彼女がびっくりしたような顔をし、口に手を当てる。
周りをちらりと見回したが、誰も注目している人はいなかった。
「ここの塾、この前、親と見学に行ったんだよ」
「そ、そうなの…? でもそんなにテストの点が悪いわけじゃ…」
「そうなんだよな」
塾の窓を眺め、大学進学率1位とか書かれた文字に吸い込まれる。
今、テストの点は文系が得意で、上位に名前があったりするのだが、理系は散々で、荒れていた。
数字や記号を見ただけで、幽霊に出会ったかのように、ぞわりとする。
「私が教えようか?」
彼女の提案に、俺は嬉しくて口元を緩めたが、首を静かに横に振る。
「駄目。お前には、お前の勉強法があるだろう? 俺に合わせるな」
「でも、その、2人の時間が…」
「大丈夫。夜だから下校するのは一緒だし」
「そうなの? それならいいんだけど」
彼女はほっとしたのか、胸を撫でる。可愛い奴だなど思い、頭をぽんぽんと叩いてやる。
それから意地悪な質問をしてやる。
「そんなに俺といたいか?」
「い、いたいに決まっているでしょう…!!」
彼女が負けじと両手を握り、訴えてくる。
顔は真っ赤で、一生懸命なのが分かる。
俺も嬉しくなって、つい肩を抱いてしまう。
「俺もだよ。ずっと一緒にいたい」
「…っ!! もう」
背中に腕を回され、柔らかい身体の感触を楽しむ。
絶対に放さないからな。




