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3.幼い王子

 謁見の間の巨大な扉から広い廊下に出るとすぐに、アリスの視界に小さな子どもと若い女の姿が映った。


「アリス!」


 ダークブラウンの髪をした幼い少年がアリスを見つけて、駆け寄ってくる。

 一緒にいた女も慌ててそれを追いかけてきた。


「レックス王子!」


 アリスは駆け寄ってくる少年に目線を合わせるようしゃがみ込んで出迎えた。

 少年は人懐っこい笑みをアリスに向ける。


 後を追ってきた王子の侍女は、アリスと目が合うと丁寧にお辞儀をした。

 アリスもそれに笑顔で会釈をして応えてから、少年に正面から向き合う。


「アリス。隊長に就任したんだって?おめでとう!」


 少年は太陽のような橙色の大きな瞳をキラキラさせながら、屈託なく笑っている。


「ありがとうございます、殿下」


 アリスも笑顔で答えた。


 少年の名はレックス。

 現国王アルベルトと今は亡きフローラ王妃との間にできた唯一人の子である。

 齢七歳。


『海の民』の外見的特徴を多く持つ父王と比較すると、どちらかというと『大地の民』の出身である王妃似の顔立ちをしている。

 ただし、その太陽のような色をした瞳は父そっくりだ。


 年齢以上に幼い印象もあるが、素直で人懐っこい性格で王宮内の侍女たちのアイドル的な存在でもある。


「すごいね!アリス。十六歳で隊長なんて、オルフェやルシアと同じ最年少記録じゃん!」


 幼い王子は少し興奮気味。心から嬉しそうだ。


「そう……ですね。身に余る光栄です」


 だが対するアリスは我知らず苦笑していた。


「あれ?もしかして、アリス、あんまり嬉しくないの?」


 王子がまん丸の瞳でアリスをまっすぐ見つめながら、少しだけ心配そうな表情を浮かべて首を傾げる。


「……あ、いえいえ!嬉しいです、もちろん。隊長になれたことも嬉しいですし、何より殿下にお祝いのお言葉をいただけて、とても嬉しいですよ!」


 七歳の王子に完全に見透かされてるじゃないか、と心の中でもう一度苦笑してから、アリスも満面の笑みでレックスに答えた。

 それを聞いて王子の顔がまたぱっと明るくなり、嬉しそうに笑う。


「本当?良かった!カッコいいなあ、星芒騎士隊長!」


 それから王子はいたずらっぽい笑みを浮かべて、


「残念だけどぼくは〈星芒騎士〉にも、その隊長にもなれないからさ。ぼくの分まで隊長のお仕事がんばってね!アリス!」


 大陸中に名を馳せる〈星芒騎士〉は王子にとってすら憧れの存在だ。

 もっとも、彼が言うように、王族が騎士になることはもちろん無理な相談ではあるが。


「はい、頑張りますね」


 アリスも精一杯、低い声で力強く答える。


 少しでも大人っぽく聞こえるよう、背伸びをしてみた。

 自分でもちょっとわざとらしく聞こえたが、レックスは素直に受け取ってくれたようだ。


 少し離れたところで、王子の侍女がその光景を微笑ましそうに見守っていた。


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