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7.偏見と敵意と銃士

「お初にお目にかかります、皇女殿下。私は……」


 ——名乗られせてももらえなかった。


「殿下はお疲れです。貴族でもない方が、いちいち挨拶などしなくてよろしい」


 セシリア皇女の前でルシアが先ほどと同じように挨拶をしようとすると、それを遮って幼い皇女の隣に立つ男が冷たく言い放った。


 銃士隊の恰好をした男だった。

 金髪に緑色の瞳。小柄なアリスと比べれば十五センチ以上は高いが、他の騎士や銃士たちの中では平均的な身長だ。

 体つきも華奢と言うほどではないが、やや細身である。

 彼もまたアリスのように女性的な整った顔立ちをしているが、その美貌までもが心なしか歪んで見える。


 まだ名乗ってもいないのに……とも思ったが、身に着けた白色の鎧を見れば彼らが騎士であることは一目瞭然だろう。


 それより、アリスにはその目に既視感があった。

『星の民』至上主義者の騎士クレドや騎士オルトスが、「純血」でない自分たちを見るあの目。

 あれと同じだ。


「レナード!」


 プラチナブロンドの可憐な皇女が、非難するように隣の男を睨む。

 宝石のような蒼い瞳が揺れていた。


「……失礼しました」


 レナードと呼ばれた銃士は慌てたように顔を背け、ギリギリ聞き取れるくらいの小声で謝罪する。


「メーリック殿。ナディアでは騎士団の隊長格になると、『男爵』の爵位を与えられると聞きます。この方々も貴族と言うことになりますぞ」


「クラウディス殿か」


 いつの間にか、先ほどまでローレンス皇子の隣に控えていた大柄な騎士が皇女のもとへ来ていたようだ。


 目を移せば、すでに皇子の前にあった列はなくなっていて、今はローエンデールの第三皇子とナディア王アルベルトが同じテーブルについて歓談していた。

 アルベルト王の隣には、宮廷魔導士長ランフィスの姿も見える。


「……ふん、領土も持たぬ爵位になど何の意味がある」


「レナード!!」


 吐き捨てるような銃士の言葉に、皇女の声音がさらに強くなる。

 今にも泣きだしそうな顔だ。


「……いえ、銃士様のおっしゃる通りです。皇女殿下はまだお若いと言うのに、昨日も今日もずっとお勤めでいらっしゃいました。この時間までお話していては、お疲れになるのも当たり前でしたわ。私どもの思慮が足りずに失礼致しました。どうかご容赦くだいませ」


 涙ぐむ皇女に優しく微笑みかけてから、ルシアは皇女と銃士、そして大柄な騎士に深々と頭を下げた。

 アリスも慌ててそれに倣う。ルシアに比べると、やはりどうもぎこちない。


 ルシアは優雅に礼を済ますと、アリスの腕を引き、目だけで「行くよ」と合図をする。

 アリスもぎこちなく頷いて、ふたりはその場を速やかに退散した。

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