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妄想へ  作者: 白黒君
1/1

気まぐれ神、地に降りる


天地創造の遥か昔、まだ世界が「もやもや」としていた頃。

あらゆるモノが名前を持たず、光も影もごちゃ混ぜの渦だったころ。

その中心に、ひとりの神がいた。


「おーっし!今日もいい感じに混沌してるな〜!」


そう呟いたのは、創造神タケル。

気まぐれで、お調子者。けれど、その指先ひとつで山が隆起し、空が割れ、命が芽吹く。


「飽きた!次!次は何を創ろっかな〜……あ、そうだ!“人”とかどう?」


そんなノリでヒトは生まれ、獣は駆け、森は笑い、水は歌い始めた。

創造という遊びに夢中になった彼は、世界に名前を与え、流れる時間を定め、法則を撒き散らした。

その名も「ユグドラシル」。

「気に入ってるんだ、なんかカッコよくね?ユグドラシルってさ!」


だが、神にも眠る時間はやってくる。

一通り世界を作り終え、飽きてしまったタケルは、天の果てにある雲のクッションに寝そべり、長い長い昼寝に入った。


「ん〜……退屈になるまで寝る!起こさないでね、マジで!」


そう言って数千年。




そしてある日。

夢の中、彼はなにか“ざらざら”とした感覚に眉をひそめた。

理神ルナの声が、遠くから届く。


「タケル様、起きてください。世界に歪みが出ています」


「え〜、やだな〜。オレ、まだ寝てたいんだけど……歪みってどんな感じ?」


「時の流れが捻れ、魔力が乱れています。放置すれば崩壊するでしょう」


「……崩壊か〜。うーん、困るな〜。っていうか、面白そう!」


ぱちりと目を開けたタケルは、ひとつあくびをして、にやりと笑った。


「じゃ、ちょっくら見に行ってくるか。今回は――ちょっと趣向を変えて、赤ん坊とかで」


「は?」


「なんかよくない?チートもなし、神の力もなし、ただの赤子からスタート。ちょーエモくない?」


「……まったく、あなたという方は。記憶は、どうされます?」


「うーん……持ってるとズルしそうだしな〜。じゃあ、封印!力も、記憶も、いったん全部預けちゃお!」


「本気ですか?」


「本気本気。忘れてる方が面白いでしょ?オレ、未来のオレに期待しとくからさ!」


タケルは、光の粒となった記憶をひとつひとつ手放し、それをルナの手の中へ託す。

「……ただし、“あの子”が本当に世界に必要になったとき、返してやって」


「……承知しました」


タケルは魂のかけらを削り、それを翠に染めて地上へ放った。


生まれたのは、ラインハート王国の名家——

「エメラル」家。幸運と翠の象徴を掲げる由緒ある一族。


その末子として、ある春の日に産声が上がる。


名は、翡翠ヒスイ

神の記憶も、力も持たぬ、ただの赤子として。


「さーて、オレが作った世界、今どんな風に転がってんのか……他人事として見てみるのもアリかもね!」


お調子者の神は眠り、ひとりの赤子として新たな人生を始める。

――やがて、世界が彼を呼ぶその日まで。

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