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薄明怪異目録  作者: 立花 みかん
第一章
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第四話『至極当然』


「はぁ」


 意識を今に引き寄せる。

 教師の話を片方の脳に入れて、瞳の裏に病室の一誠を思い出した。今彼は教室に復帰しているけれど、本調子であるかは目には見えない。

 早く部屋に戻りたい。早く速く、アレを解決しなければ――――。



 5限が終わり、鏡子はいち早く教室を出ようとした。

 するすると教材を鞄に入れ、音を最小限に立ち上がる。

 少ないクラスメイトは、各々にこれからの放課後を選択するのだろう。全てが安倍と関りがあるとは言えど、学生の間は従者のように鏡子に付き従う必要はない……のだが。


「鏡子さま!」


 彼は――それでも、そちらを選択する。

 鏡子によって、病院送りにされていたくせに。


「一誠……」


「その言葉はいりません、鏡子さま。僕が代わりに引き受けた、それってすごく光栄なことですから!」


 笑顔の彼に、鏡子はぎこちなく頷いた。

 一人より二人のほうが効率は良い……効率は良い、のだが。


「第一に、鏡子はかの怪異……スレンダーマンを祓うつもりです」


「はい」


 二人は場所を変えた。

 あらゆる書を携えたカーテンを閉じた小部屋――、学園内で鏡子が占領している部屋だ。

 元々は資料室であったが、陰陽道、宗教学、民俗学、考古学――そういう閲覧制限がかかる書物が沢山あるために鏡子が入り浸り、もはや私室と化した。


「この間は……真正面から乗り込まざるを得なかった、それが駄目だったのです」


 先日スレンダーマンと遭遇したのは、言ってしまえば不測の事態であった。

 スレンダーマン自体の情報は頭には入っていた。でも、調査していた怪しい霧が、スレンダーマンから発せられているとは思わなかった。

 初遭遇、……異国の、怪異。


「直接怪異を鎮めるのは……初めて、いいえ、本番は、初めてですが……」


 鏡子は手を握りしめた。

 己を鼓舞しようと、僅かな瞳の影の中で圧を強める。


「……やりますわ。だって鏡子は、安倍晴明の生まれ変わりですもの」


「――はい! 鏡子さまならば、絶対できますよ!」


 で、あれば、やることは作戦建てだ。

 大人の手を借りるべきか――? いや、それは出来ない。

 だって、あなたは安倍鏡子。

 出来て然るべき人間だ。

 こんな簡単な一歩、踏み出せなくてどうして安倍鏡子なの?


「……一誠」


「……はい?」


 本を見繕っていた一誠は、鏡子を見た。

 鏡子は影に顔を隠したまま、静かに口を開く。


「一誠は下がりなさい。準備が整いましたら、呼びますので」


「……はい! 鏡子さま!」


 流石だ、と一誠は口角を上げた。

 さすが鏡子さまだ――! 安倍晴明、その人は、本当に何もかも違う!

 一誠は半ば踊り出しそうに部屋を出た。痛んだ傷はもうない。こうやって、卵が孵化するのを守っているだけなのだから、負うべき傷は明日への架け橋なのだ。

 あーあ、僕だけ特等席で見れちゃうのか。他の奴らに申し訳ない。

 申し訳ないけど、まあ、これも時の運ってやつだからねえ。

 このことは他の奴らには黙っておこう。僕と鏡子さまだけのお仕事なんだからさ!


「……とりあえず、なにか、情報を……」


 早く、速く、片づけなくちゃ。

 大人に気づかれる前に、結果だけを提示して微笑むのが最適解だ。

 幸いにも一誠が使える、ということは、それに仕える二神将を使ってもいいということだ。二人にはスレンダーマンはバレているのだから、これ以上無い幸運だ。

 気づかれず、悟られず、いつもどおりにこなし、学園生活を送る。

 

「……出来ますわ。だって、鏡子は……」


 鏡子は一誠が残した書に目を落とした。

 まずはこの本達から、何か使える情報を洗い出そう。

 

私は柑橘の魔女なので、西洋魔術は得意なんですが東洋魔術はちと知識不足……。

ゆえにすぐにソロモンに頼りそうになる自分を叱咤し、心でレッツゴー陰陽師を唱えるのです。

ニコ動復活おめでとう!

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