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第7話 俺の婚約者は最高

英俊さんが結婚を認めてくれた次の週の週末。

今度は美優がうちに挨拶することになっていた。

本来なら大石家に行った翌日の予定だったのだが俺が二日酔いで参加できる状態じゃなかったので延期になってしまったのだ。

……本当に申し訳ない。


「き、緊張するね。拓哉はこんな中で先週挨拶してたんだ……」


「わかる。だけど今回はそんなに緊張しなくても大丈夫だよ」


「……?どうして?」


「父さんと母さんに美優と結婚することを伝えたら大喜びしてたんだ。だから美優が拒絶されるなんてことは絶対にないよ」


そう言って俺は美優との結婚を伝えたときの両親の姿を思い返す。

その喜びようといったらすごかった。

どこかに隠し持っていたらしいお高い酒を開けて飲みまくっていた。

そんなわけで美優は歓迎されること間違いなしだ。


「あはは……そうだといいけどね」


「まぁなんとかなるさ。行こう」


玄関の扉を開け中に入る。

父さんたちはリビングで待っているはずだ。

リビングの扉を開けると二人とも座って待っていた。


「ただいま。美優を連れてきたよ」


「お久しぶりです。おじさま、おばさま」


美優は行儀よく頭を下げる。

その姿はとても洗練されていて美しい。

昔から美優は行儀よかったもんな……


「久しぶりだね。さあ座ってくれ」


「また会えて嬉しいわ。お茶菓子も用意したからよかったら食べてね」


俺達は二人並んで両親の正面に座る。

すると目の前に置かれた茶菓子の正体に気づく。

それは美優が昔大好きだったどら焼きだった。

この用意周到っぷりにも両親がいかに美優を歓迎しているか分かる。


「お気遣いありがとうございます」


美優もそれに気づいたらしく顔からは緊張が減っていた。

我が親ながらその気遣いに関心してしまう。

俺もそういう気遣いはぜひとも身につけたいものだ。


「今日は拓哉さんと結婚させていただきたく挨拶にお伺いしました」


「拓哉から聞いているよ。拓哉をよろしくお願いします」


「この子は美優ちゃんが尻に敷いちゃっていいからね」


両親は一瞬で俺と美優の結婚を快諾した。

……挨拶終了。

美優もあまりの早さに呆気に取られている。


まぁうちの両親は息子にいきなり家を渡すくらいの人たちだ。

そういうものだと受け入れるしかない。


「挨拶も終わったことだし拓哉と美優ちゃんの馴れ初めとかアレコレを聞きたいな〜?」


母さんが目を輝かせて聞いてくる。

今まで聞きたくてしょうがなかったようだ。

美優は教えてもいいのか、とアイコンタクトをしてきた。

俺はしばらく考えて口を開く。


「もう夕暮れ時だし今日はやめておいてまた別の機会で良いんじゃないかな」


結論、逃げた。

だって親に恋バナ(そういう話)をするのは恥ずかしいだろう。

話さなくていいことは無理して話す必要はないのだ。


「それなら美優ちゃんもうちで夕食を食べればいいのよ」


「え?」


「い、いいんですか……?」


よほど聞きたかったのか母さんは美優を夕食に誘った。

美優も割と乗り気のご様子。

この状況ではもはや俺に止めるすべなんて残ってなかった。


◇◆◇


我が家のキッチンでエプロン姿の美優が料理をしている。

大切なことだからもう一度言おう。

我が家のキッチンでエプロン姿の美優が料理をしている。


どうしてこんな状況になったかというと母さんが料理を作ろうとしたとき美優が立候補したのだ。

美優が作ると言った瞬間俺と両親は大喜びでお任せした次第である。


「何か手伝えることはある?」


「それじゃあお皿を出しておいて」


「了解」


美優に言われ食器棚へ向かう。

人数分の食器を取り出し持っていく。

もう美優の料理が完成しているみたいだ。


「ありがとう。それじゃあ盛り付けて持っていこう」


盛り付けも手伝い完成した料理をダイニングへ持っていく。

白米、肉じゃが、味噌汁を始めとした一汁三菜がしっかりと揃っている。

見るからに美味しそうだ。


「それじゃあ食べようか」


「「「「いただきます」」」」


言うが早いが肉じゃがへ箸を伸ばし一口。

う、美味い……!

肉とじゃがいもに味がしっかり染み込んでいる。

美優が作っただけでも金で買えない価値があるのに美味いなんてまさに最強じゃないか!


「最高だよ……!毎日食べたいくらいだ」


「よかった……」


隣では両親も美味しそうに食べている。

その様子を見て美優も安心したようだ。


「それにしても美優ちゃんって料理上手なのね。これじゃあ私が味を教えるどころか教わりたいくらいだわ」


「そ、そんなことありませんよ……!ぜひおばさまに教わりたいです」


美優もだんだん緊張が解けてきたようだ。

母さんとも普通に笑顔で話せるようになってきている。

嫁姑問題は起こらなさそうでなによりだ。


「拓哉。料理上手な美優ちゃんが嫁に来てくれるなんてよかったじゃない」


「ああ。料理以外にも美優は最高だけどな」


「も、もう……!」


美優の口調は文句言いたげだったが顔を赤く染め満更でもなさそうな様子だった。

外ではクールな美優だがこうやって感情表現してくれるところが可愛くて仕方ない。

やっぱり俺の婚約者は最高だ!



食後に俺達は母さんの恋バナ攻撃をくらうことになったが結局父さんが止めてくれた。

その後も諦めず母さんは美優をお泊りに誘って食い下がろうとしていたが美優は仕事があるとのことで俺が車で送っていった。


……また一つ美優との結婚が近づいた一日だった。

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