第10話 家でなら続きをしてもいいよ
「じ、じゃあそろそろ出発しようか」
「うん。そうだね」
美優の荷解きが終わって休憩していた俺たちだが必要な買い物兼デートのお誘いをする。
元々約束していたのもあって美優もすんなり頷いてくれる。
俺たちは早速車に乗り込み近くのホームセンターへ向かう。
「美優はインテリアとかこだわりたい感じ?」
「うーん、見た目よりは機能性を重視したいな。でもお金出してくれるのは拓哉だしお任せするよ」
美優にはあらかじめ今日の買い物は全て俺が負担することを伝えていた。
遠慮されたものの家具を持ってこなくていいと言ったのは俺だから、と説得すること30分ほどで納得してくれた。
あれは熱いディベート対決だったな……
「お金のことは気にしなくていいよ。快適な生活のために一番良いのを選ぼう」
今までは家賃も払う必要はなかったしこれといった趣味も無かったのでたくさん貯金してあるのだ。
美優との生活のために惜しみなく投入しようじゃないか。
美優はもう今日の俺に遠慮するのは無駄だと悟って色んな家具をスマホで調べて教えてくれた。
お互いの要望を出しながら話し合いをする時間は楽しいものであっという間に目的地に到着した。
◇◆◇
「いい匂いだね……!」
「ああ。見るからに美味そうだ……!」
俺達は早速ホームセンター……ではなく某うどんチェーン店に来ていた。
あれだけ家具の話をしまくっていたのに結局お腹が空いて先に昼食を食べることにしたのだ。
俺は肉うどん、美優はかけうどんを注文している。
「「いただきます」」
手を合わせて麺をすする。
肉の脂とつゆの出汁が麺と絡まりあって最高においしい。
美優はうどんが好きらしく美味しそうに無言で食べ続けていた。
「昔の頃はうどんそこまで好きじゃなかったよね?いつから好きになったの?」
夢中で食べている美優には悪いがせっかくのデートなので話しかけてみることにした。
昔と好みが変わっているなら知りたいしな。
「結構最近のことだよ。イラストを夜遅くまで書いてて何か軽く食べれるものってなったときにうどんをよく食べてたの。そしたらある日突然魅力に気づいちゃった」
「なるほど。そういう理由があったのか」
思ってたよりもちゃんとした理由だった。
なんとなく好き、という感じのふわっとした理由だと思って聞いてしまったよ。
それから美優はうどんについて楽しそうに語ってくれた。
美優はかなりうどんにハマっていたようでめちゃくちゃ詳しい。
俺も楽しそうに話す美優の姿を見て最高に楽しかった。
……色んなうどんの名前が頭から離れなくなった。
◇◆◇
「美味しかったな〜」
「うん。あと、ごめんね。つい熱くなっちゃって……」
美優が恥ずかしそうに謝ってきた。
信じられないかもしれないがこれでも美優は外ではクールキャラ。
家族や親しい人しか見ることができない豊かな表情を見せてくれることがすごく嬉しい。
「美優の話はすごく楽しかったよ。またよかったら聞かせてほしいな」
「う、うん……わかった」
美優はしっかりと頷いてくれた。
俺もうどんに興味が出てきたのは事実だし美優と会話できるなら一石二鳥だ。
いつかは有名なうどんを巡る旅行とかしても楽しいだろうな。
「あ……見て、拓哉」
「ん?どうしたんだ?」
美優が指差したのはあるブランドのジュエリーショップ。
店頭には美しい指輪が並んでいた。
それだけで美優が何を言いたいのか分かった。
「俺達の結婚指輪もいつか作ろうね」
「……うん!結婚指輪楽しみだなぁ……」
美優はうっとりした様子で指輪を眺めていた。
女性だしそういう憧れもあるのだろう。
どうせなら美優が一番喜んでくれる指輪を買いたいものだ。
「美優はどういうのがいいとかあったりするの?」
「私?私は拓哉とお揃いならなんでも嬉しいよ」
「ブランドとかこだわりないの?」
女性はブランド物に憧れるってよくネットの記事に書いてある気がするけど。
だが美優の表情を見ると本気でそれでいいと言っているように見える。
「ないよ。値段とかブランドとかなんでもいいの。拓哉が私に結婚指輪を着けてくれるっていうだけで私にとっては唯一無二の価値があるんだから」
「美優……」
その穏やかな笑顔に見惚れてしまう。
それと同時に心の中で愛しさが加速する。
思わずその場で美優を抱きしめる。
「た、拓哉!?ここ外だよ!?」
「あ……ごめん」
美優の抗議に大人しく離す。
周りの人にもだいぶ見られていたようで微笑ましい視線を向けられて美優は顔を真っ赤にしている。
多分俺の顔も負けじと真っ赤になっていることだろう。
「本当にごめん。つい……」
美優は顔を真っ赤にしたまま口を俺の耳に近づけてくる。
「その、恥ずかしいけど嫌じゃない………家でなら続きをしてもいいよ……?」
ほうほう嫌じゃなかったか……………続き!?
続きって一体どこまでのことを指してるんですか!?
俺は聞く度胸もなく悶々とした思いを抱き続けることになった。




