かのじょのひみつ、は
「よいしょ。これで、最後かなぁ」
どっしりとした書類の束をデスクに置いた。ブカブカの白いスーツの裾をめくり、たくさんの言語を眺める。全世界の言語の束は重厚だった。
古びて埃臭い一室には届かなかった何世紀ぶんの『言葉』が収納されている。この部屋はどこにもない、奇跡の空間だった。
淀んだ空気をかき混ぜる換気設備の音しかしない、深夜。
「郵便屋さんに届けなきゃ…」
まだらなでくせっ毛なブロンドヘアーを掻きながら、デスクに置かれたエナジードリンクを飲んだ。するとポケットから電子音がして、彼女は無感情に携帯を開いた。
「…」
虚ろな目がフッと監視カメラに向けられる。
「よいしょ。これで、最後かなぁ」
「止めて!自分何もしてない!ただ、人を食べてただけだよ!」
「ギャビーなぜだよ!?お前、オレたちの仲間だろ?!」
「…あんた、何者?!ワタシは死なないんだから!何したって無駄よ!」
名もない人面獣や白いスーツをきた三下、そこら辺で悪事を働く貧弱なリクルートスーツのこの世の者でない部類。その他。
ギャビーと呼ばれた背の低い女はため息をついた。
「私はギャビーではありませんよ、ま、名前なんて、どうにでもできますから。わら」
はあ、とため息をつき、彼らを足蹴にプールへ投げ込む。彼らは縛られているために無抵抗に沈んでいく。「さて、魔法の入浴剤を入れますか」
内ポケットから隠し持っていた謎の『入浴剤』を取り出す。
「きれいさっぱり消えてもらいます。地球のゴミども」
軽蔑すらこもっていない、業務的な声色で彼女は言う。
粉をプールの水中に入れ、そのまま廃れたスイミングクラブから立ち去る。
「どこにいるんだよ?サリエリが郵便局から苦情が来てるってお怒りだぞ」
もう一つの電話から着信があり、ラファティ・アスケラの疲れた声がした。
「ご、ごめんね…エナジードリンクを買い足してたら時間たってた…」
平然と嘘をつき、そそくさと部屋に戻り、待ちぼうけをしていた『郵便屋さん』にメッセージを渡す。
「お前さ、本当にエナジードリンク買いに行ってたのか?」
デスクに新しい缶を並べていると、ラファティが疑いの目を向けてきた。
「はい。これ、期間限定の自販機限定エナジードリンクなんだ」
サイケデリックな柄のジュース缶を渡して、にへら、と笑ってみせた。
「…。そう、あんまり深入りしたくないから、いいや」
「うん」
パソコンの隣に置かれたスケルトンの魚のフィギュアに目がいき、彼は「ギャビーってスケルトン好きだよな」とふいに呟いた。
「うん。だって、なんか、綺麗でしょ。何もかも、こうやって透けるの」
その動作や声の質が、リクルートスーツを来た輩どもの異常な執着心に似ていて気持ち悪かった。
我らにアイツらに似た執着心は必要ない。あってはならないのだ。
「…堕天すんなよ」
「する訳ないじゃない」
ギャビーさん 初登場!
もっとミステリアスな感じにしたかったのに無理でした。




