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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
ンキリトリセン(パラレルワールド的なジャングルでサバイバル前編)
86/162

さみしい=うつろい=だいすき

 パビャ子は自由だ。

 空に向かって両手を広げ、雷を受け止める。電撃に身を任せ、天と地が繋がる感覚を享受する。

 または海の流れに身を任せ、魚たちの群れに紛れる。網につかまる。

 または山を登り、雲と霧の境目の空気を吸い込み、静寂の中で吹く風の音に耳を澄ます。

 または人混みに紛れて、酔っ払い地面に伏したサラリーマンやジッと身を潜めるように座り込んだ浮浪者を横切る。酒臭い夜の街を抜け、線路を歩き、行く宛てのない徒歩の旅をする。

 または──。

 自由とは、終わりがない。

 いつだか、遠い昔、誰かに言われた。「それは現実逃避と何が違う?」

 確かにそうかもしれない。自由とは、誰にも縛られてはならない。自由とは──

「私はお前が羨ましいとは思わないよ」

 乎代子が静かに言った。夜闇に沈む黒い髪と瞳が視界に映る。

「羨ましいと思った所で、私にはお前みたいに振る舞えないからね」

 パビャ子はその言葉が嬉しかった。

 パビャ子はパビャ子なのだ。

「私は乎代子が好きだよ」

「おえっ」

パビャ子は乎代子が大好きであれ。

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