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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
ンキリトリセン(パラレルワールド的なジャングルでサバイバル前編)
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じゃんぐるにでる☆とろぴかる

「なあ、ここがエンバイテネット島だとしらどうする?」

 駅を探索しながら、ラファティ・アスケラがふと呟いた。

「えん?なぁ?」

 パビャ子が目を見開いたまま首を傾げる。

「島民が行方不明になったり、魔物がいて帰って来れない島って有名なヤツだよ、確か」

 ネットで囁かれるマイナーな都市伝説だった。

 乎代子はそう付け足して、年季がはいったターミナル駅を見やる。頑丈な作りなのか不気味なほどに整っている。ずっとここに居座る手もあるが…。

 もし例の島ならば普通に島の海岸沿いに行けば人に出会えそうだ。

 都市伝説的ではあるが一応、舞台は地球なのだから。

「いや…あー、さすがのエンバイテネット島でもさ。宇宙人が助けを求めてきたらびっくりするかー、歴史的瞬間だよな、それ」

 苦笑して彼は自らの考えを否定した。

「ロマンがあっていいじゃん!」

「宇宙人がバレたら大変なの。地球は」

 えー、と茶髪の女性は残念そうにしているが、それより危険な島にいるかもしれない方が乎代子は嫌だった。

「それによ。色んな生命体を呼び寄せている、って乎代子が仮定してたろ?そんだったら俺ら、例の島とは違う世界に来ちまってる気がするんだ」

「確かに」

 エンバイテネット島はアフリカ、ケニアのトゥルカナ湖にあるとされている。都市伝説的な話では人が行方不明になる、魔物のうめき声がする──など。真偽は分からない。

 ただこの話に実在性があるのなら、自分たちはケニアの島の『裏の世界』に来てしまったのではないか?

「どちみち、俺が閃いたヤツはナシ。忘れてくれ」

「まあ、"よくある話"として頭の隅に置いとくよ」

「ああ〜さすが乎代子!分かるヤツだぜ!」

 ハイタッチしてこようとしてきたラファティの腕を、パビャ子が高速で弾いた。

「いって!」


 ターミナル駅には複数のホームと、またはキヨスク。そしてトイレや窓口など、地球上の文化とさして変わらなかった。

 文字が読めないだけで、感覚でキヨスクと分かるほど酷似している。食べ物は根こそぎなく、例の異星人たちが持っていったのだろう。

 この施設にためになる情報はなさそうだ。転送されてきた被害者なのだし。

「疲れたぁ」

 巨大すぎて全貌は把握できず、三人は仕方なく崩落した連絡通路からジャングルへ踏み出した。谷になっているようだ。瓦礫や岩を利用しながら下に降りる。途中、滑落した何かの遺体の残骸があった。

 類人猿だろうか。

「…水がある…」

 頭痛薬を飲みたがっていた乎代子は、清流が近場を流れているが飲むか迷う。

 まさにここはジャングル。日本の雑木林とはまた雰囲気の違う植物が生い茂る。さながら恐竜時代の原始的な森にも思えた。

 何が毒を持っているか分からない。

 不快な湿度と暑さに参っていると、

「ぎゃー、でかいシダが生えてる!」

 パビャ子が安直な思考でもぎ取り、ジッとながめた。巨大化しすぎたシダの葉が連なり、地面をおおっていた。

(コイツ、シダが好きなんか…)

「変なトンボもいたから気をつけろ。首狙ってくる」

「変な?オニヤンマじゃなくて?」

「ああ、やべーぜ」

オニヤンマ でかいですよね


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