ななしのやま
『三角山』と書かれた古びた観光案内の看板があり、地図にもここが目的地の山らしい。某動画投稿サイトのオカルトハンターが住んでいた田舎となる場所だろう。
「三角にはぁ〜〜…見えないけどねー」
パビャ子が目を凝らして山の輪郭を眺めている。なだらかな二つのコブがある様な形をしていた。
「アンタら、登山客かい?」
野良仕事をしていたおばあさんがこちらに話しかけてきた。登山口の横側にある小さな畑だった。
「いやぁ、以前、動画投稿サイトで知り合いになった山田 紀伊太さんが…」
「あーあー、あのバカか。有名人になるって言って、家業やめてねえ」
「ええ…」
おばあさんはやれやれ、とため息をついた。
「ちょっとした理由で山田さんのお宅を伺いたいと思いまして」
洞太 乎代子はスラスラと嘘をついたが、全てがという訳では無い。彼らの生存確認をしたいからだ。
「ああ…七死様の山には今、熊が出てるらしくて。入らない方がいい。それに…」
「えっ、三角山じゃないの?!」
パビャ子が目をキラキラさせて飛びついた。
「うーん、秘密にして欲しいんだがね。この山は七人で山を登ってはいけなくて、三角山っつう名は三体の不動明王様をお祀りしておられるから…ま、表向きの名だよ」
「はあ、そうですか…」
「今、馬鹿どもが七人、熊を仕留めに入ってる。危ない。だからお姉さんたちも…」
「オメエら!どっか来た!」
背後から先程の自治体職員たちや町民がこちらを見つめている。敵視。
乎代子はパビャ子の手を引っ張って、登山口へ身をなじた。
怪談話テイスト。




