くぎをさしにくる
「サリエリ・クリウーチくぅん。お久しぶりですェ」
モニターと機械が巧妙に羅列された部屋でサリエリはふと振り返ると、奇妙な子供に目がいった。
日本古来の角髪と髪型をした不可思議な容姿。知っていた。麻宇汝旴愧堕焚邪命。
神話にでてきそうな仰々しい名を、聞いて忘れるはずがない。
噂を耳にしてはいたが、実物を見るのは初めてだ。
施錠していたはずだが──アレらにそのような常識は通じないか。
「…何か御用でしょうか?」
珍しく敬語を使い、ややめんどくさそうに後ずさる。眼前に、やけに畏まった態度の──不思議な髪型の子供は腑抜けた笑顔を浮かべている。
笑顔。
猿では威嚇に使われる顔の表情。口角を上げ、歯を見せる。
肉を引きちぎる牙を見せる。凶器をチラつかせ牽制する。
彼から同様の気迫を感ずる。
「ワエらの、愛おしい後輩たちをイジメないで欲しいです。アナタにとって取るに足らない虫けら何でしょうけれど」
「まさか、虫けら、なんて」
「アハハ!そうだった。クリウーチさんは同僚もミンナ、虫けらだと思ってるんだった!」
わざとらしく額に手を当てて笑う様は芝居がかっており、非常に苛つきを覚えた。
「…ええ」
「今、諸君らの元同僚に執着しているあの子のコトですが…」
「はい」
「イジメたらどうなるか分かっていますよ〜ねェ?」
急に歩み寄るとサリエリへ何かを渡してきた。
ダンゴムシだった。
「アナタの好きな虫けら」
腑抜けた甘ったるい笑みが、凶悪な悪魔の笑顔に一変する。
そのダンゴムシはお前の命だ、と。
「潰すのも生かすのもアナタ次第。自分の命、大切に」
保身第一。そういうと子供は消えていた。冷や汗が頬をつたう。
「虫けら…」
かつて同僚らに放ってきた失言に、サリエリは俯き、泣き笑いを浮かべた。
新キャラの言葉遣いに悩んでいます。




