すーぱー
午後六時頃。リクルートスーツを着た茶髪の女性──無意味名 パビャ子は珍しく、証明写真機の前で佇んでいた。それを見かけてしまった乎代子は見なかった事にしようと踵を返して、スーパーに行くのを諦めた。
「あ、乎代子!」
「ゲッ」
「暇なの?」
「夕飯の買い出し」
「ふーん」
買い出しと言っても、安値のカップ麺を一つ購入するだけの外出だった。食欲もわかないせいか、最近は安値にされたカップ麺ばかり食べている。
「明日面接でも行くんですか?」
「やだー。証明写真機でたまに、泣いてる女の人がいるから確かめに来てんだ」
「…。見た事ないけどなぁ」
「まー、月に一、二回現れるだけだから運だね」
パビャ子はほら、と証明写真機の隣を指さした。そこは壁で、何やら小さな何かが貼られていた。
変哲もない女性の証明写真だった。
「このひと。このひとが泣いてんの」
就職活動中の、よくある没個性化された女性の真顔。誰かのイタズラか、まだ真新しい。
「わざわさ泣きに来て、貼っていくと」
「んー…」
「泣いてるようには見えませんけどね」
泣き腫らした顔には見えず。名も無き社会人の写真は、誰にも気づかれない。
「あの、貼ってるの君たちじゃないよね」
スーパーの店員がこちらの井戸端会議に水を差してきた。たまに店内で見かける男性の店長だ。
「こ、困ってるんだよ…そういうイタズラは」
「は?私たちはこの人とは関係ありませんよ」
「まさか!じゃあ何で…」
顔を真っ青にして彼は口を閉ざしてしまう。「な、な、な〜〜~?」
わざとらしく詰め寄り、パビャ子はニヤニヤしながら問いただした。
「彼女は死んでるんですよ…四ヶ月前に…」
「えー?でも、これぇ」
「ほ、ホントに勘弁して欲しいんだよっ!俺はパワハラなんてして──」
ガシャン!と吐き出し口から写真が落ち、店員は腰を抜かし逃げていった。
「あ、うわ、あはは。見て、首吊り〜」
首を吊った女性の写真が証明写真として出てくる。
「これ、戦国武将のダジャレが書いてあって好きだったんですが…」
明日には撤去されるのだろうか。
証明写真機って独特の怖さがあります…。




