のらねこにまちがえられる
覃(のびる、ひととなる)は暇を持て余し、国道を歩いていた。
彼は、または彼女は──この世の者でない部類だが、存在しないか存在するかのどったかだった。昔、どこかの浪曲師が歌っていたメロディを口ずさむ。
ユキヒョウに似て、異なる体はゆったりとアスファルトを踏みしめ、真夜中の国道をゆく。
昔、走り屋が技を確かめあった峠道には誰もいない。幽霊は人の脳が起こした誤作動だ。なら──
「ウギャア!なに?!?」
背中に激痛が走り、振り返るとリクルートスーツの女性が白いけ並にかぶりつき肉を引きちぎろうとしていた。
「うわ!うわ!チョームカつく!なに?!お前!」
「あれっ、野良猫が喋ってるぅ!」
「ハーーーーー?のびるは野良猫じゃないですぅ!」
明るい茶髪の女性は口を離すと身軽に地面に着地した。
「のびる?ごめんね!!」
「全然謝ってないじゃんソレぇ。お前さあ、ナニモン?」
「パビャ子!ごめんえ!お腹すいちゃって!野良猫がいるから食べちゃおうって!」
てへへ、と恥ずかしがると国道の草薮からガサガサと物音がした。「あ!メシ!」
パビャ子と名乗った女性は全速力で道を脱していった。それを眺めていたのびるは、バカバカしくなり舌打ちする。
「サイテー。まー、いいや。ボケ老人見つけたら食ってやろゥ」
ぶつくさ言いながら、また峠道を歩み出す。真夜中の誰もいない峠では鹿の鳴き声がした。
のびるくんをたくさん書きたくなります。




