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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(フス編)
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なめらすじにきたるまもの

 変哲もない女子高生の多田 香純(かすみ)はいつもの帰り道、春先の不安定な風に揉まれながら歩いていた。

 高校時代にも限りがある。寂しいような、安堵のような──寂しいのはパビャ子や乎代子と会えなくなる事の恐れだろうか?

 分からない。分かった所で何も変わらない。

 そうだと思うのは、彼女たちが現実の存在では無い気もするから。

「あーあ。私、それだけの人間なんだな」

 投げやりに陸橋のトンネルを潜ろうとした。すると白い毛並みの大きな獣が、何かを貪っていた。

 まさか、どこかの家から逃げ出した大型犬だろうか。縞模様に似た黒い柄は、どの犬にも当てはまらない──ような気がして、雑種かと訝しがった。

 ふわりとした足先で人間の肢体を押さえつけ、ぐちゃぐちゃと肉を食いちぎる。買い物から帰っていた女性だろうか。アスファルトに食べ物が入ったビニール袋とミカンが転がっている。

(あ)

 普通ではないのを悟り、引き返そうとした。

「ン?」

 ソイツが振り返り、こちらを認識した。獣の顔であるはずの部位は人の造形をしている。

 ありきたりな若者の顔だった。ニヤニヤといやらしい笑みと血まみれの口元が、この世の者でない部類だと告げている。香純は悲鳴を堪え、後ずさる。

「あはは。新しい獲物じゃん」

「ひ、ひい!」

「ねえ?オネエさん。この道、ナメラスジだって知らないの?それともワザと通ってルの?」

 ナメラスジ?知らない単語に女子高生は首を振った。

「こ、この道。好きだから…パビャ子さんとか、乎代子さんとかに会える、し…」

「オネエさん、アイツらと友達?わ〜悪趣味ぃ」

 彼女たちの名を聞いた途端、化け物は食欲を無くしたようだ。

「食事中ごめんなさい。すぐ立ち去ります…じゃ、じゃあ!」

「分かってねーな。この、のびるを見たんだもん。ずーっとオネエさんに付きまとうからね」

 背中に浴びせられる言葉に恐怖しながら、多田 香純は疾走する。あれは何なのだ。

 今まで見た事のない奴だった。悔しい。あの道が好きなのに。

のびるくん初登場!!

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