ちをはう
パビャ子はドタバタとリビングまで走った。すると目の前には、自分と同じくリクルートスーツをきた何かが蹲り、腐敗した人間を貪っている。
悪鬼の如しその様に住人らが嘔吐し、逃げたりしていく。
死肉を食むソレはこちらを認識すると、大口をあけ、いきなり四つん這いのまま、パビャ子に飛びかかってきた。
「うわっ!!」
すんでのところで避け、噛みちぎられるのを防ぐ。ヤツは華麗な身のこなしでフローリングに着地すると一目散に逃げ出した。
アイツは野生下に生息する獣のように、素早い動作で逃げていく。どういう理屈か、アパートの壁をいとも簡単に登っていく。
パビャ子はしょうがなく、アパートのベランダを利用しながら後をおった。血湧き肉躍る。ヤツのような、ワケノワカラナイ馬鹿に会ってみたかった。
屋上までやってくると血まみれの獣は唸りながらも身構えた。四つ足の生き物のように、いつでも飛び書かれるように。
ボサボサのやけに色素の薄い茶髪と、ギラギラと敵意に光る双眸。血にまみれた口。しかしその容姿は熊や獰猛な動物ではなく、どう見ても人の形をしていた。
女性なのか、それとも子供なのか。男性とは思えない細身。異常にやせ細った肢体には似合わぬ、鋭い爪。
「こんにちは!!私と同じ人に会えるなんて嬉しいよ〜っ!」
パビャ子はフレンドリーに挨拶しようとした。だが、歯を剥いて威嚇されてしまう。
「あれ、もしかしてェ…言葉喋れないの?」
「…が、ギギ」
そうらしい。睨みつけながら、ジリジリと距離を縮められる。
「食べても美味しくないよ!私、人間より美味しくない肉してるから!ほら!一度はやってみるといいんだけどさぁ!自分の腕さぁ!食べた事あるんだけど〜」
餓鬼道に堕ちたそのケモノは眼前にいる女性が普通の人間ではないと察知するや、警戒態勢と興味を失い、ピョインと屋上から身投げしてしまう。
まるで身軽な猫のように、ニャンパラリと着地するとあっという間に姿を消してしまう。
「チェ〜〜~っ。久しぶりに話が合うヤツに巡り合えたと思ったのに〜」
ぶうたれるパビャ子はしゃがみこむと雄大に広がる関東平野を望む。また会えるよね。
彼女は笑顔で冬空のおかげで綺麗に見える富士山を愛でる。
野生児?登場です。




