にくをはむ
パビャ子は何となく歩いていると、いきなり近場にある団地の管理人に声をかけられた。
数人、団地の住民たちもついてきて、パビャ子さんはとても力持ちで有名だから、と。ドアをあけて欲しいと言われた。
警察に通報したが忙しいのかなかなか到着しない。待ちかねた自分たちで何とかできないものか。
断る理由もなく彼女はついて行く事にした。
どうやら数週間、電気がついたまま郵便物が溜まった部屋があるらしい。内側からきつく何かで止められ、管理人の鍵でも開けられない。
おまけに日に日に強くなる何ともいえぬ不快な異臭。
ひなびた団地には騒然となり、住人たちの野次馬ができていた。
パビャ子はその階まで案内させられ、ありったけの力でドアノブを引いた。内側で踏ん張っていた何かが弾け、そのまま蝶番も破損する。
ブワリと、ハエと腐敗臭が一気に漏れだし、同行者たちは咳き込んだ。
中の住人は間違いなくお亡くなりになっている。
誰もが確信し、管理人は危険な好奇心からか足を踏み出した。
リビングから、何かが蹲りクチャクチャと咀嚼している音がする。その周りにはハエが飛び交い、壮絶さを物語っていた。
「ギャアアアアア!!!!!!!!」
管理人が悲鳴をあげ腰を抜かす。「え?なになに?」
パビャ子はドタバタとリビングまで走った。すると目の前には、自分と同じくリクルートスーツをきた何かが蹲り、腐敗した人間を貪っている。
悪鬼の如しその様に住人らが嘔吐し、逃げたりしていく。
死肉を食むソレはこちらを認識すると、大口をあけ、いきなり四つん這いのまま、パビャ子に飛びかかってきた。
「うわっ!!」
すんでのところで避け、噛みちぎられるのを防ぐ。ヤツは華麗な身のこなしでフローリングに着地すると一目散に逃げ出した。
「あ!待てーっ!」
パビャ子もたまらず後を追う。
それに唖然としていた管理人は我に返り、警察の到着がやけに遅いと再び悲しくなってきた。当然だがこの部屋はしばらく使い物にならなくなるだろう。
悪夢にも魘されるかもしれぬ、と我が身を呪いながらも這いずりながら玄関へ向かった。
あまりオススメできる自作小説ではないのですが、私は気に入っています。
自分の中では穏やかな隠れ場所みたいな感じがして、落ちつくのです。
細々と「虚無なありきたり」を書き続けられたら良いなと思っています。




