ふぁふろつきーずげんしょうみすい
空から、夜の赤みがかった曇り空から人が落ちてきた。どこから降ってきたのだろう?と無意味名 パビャ子は発生源を探した。
「ありゃあ〜〜~」
オシャレなコンクリート打ちのアパートから?いや、斜め前にある一軒家から?それとも眼前にそびえ立つデパートだろうか?
「お姉さん知らないの?空から魚が降ってくる事もあるんだよ?」
人の近くにブロンドヘアーを一つに束ねた儚げな少女が立っていた。全身真っ白なスーツをきていた。
「ファフロツキーズ現象って言うんだよ」
「何それ?」
「空から魚やワニ、色んなモノが降ってくるってぇヤツなんだけどね。1890年代のイタリアでは赤い雨も降って来たんだって」
赤い雨なんて世紀末を告げる現象みたいだ。
「えー!おもしろぉい!!」
パビャ子は目の前に落ちているサラリーマンと思わしき人をまじまじと観察した。
「この人はどうやってここまで落ちてきたの?!?」
「一説には竜巻や飛行機から落下してきたんじゃないか、って言われてる」
「エッ!この人、飛行機から落ちてきたん?!すご!まさかアクション映画みたいに敵と戦ってたのかな?」
ドキドキハラハラする映画では飛行機から飛び出して戦うシーンがある。大体はスパイやCIAだったりするが、この人はごく一般的なサラリーマンにしか見えなかった。
「世の中、色んな人がいるなぁ」
きっとサラリーマンのふりをした凄腕のエージェントだったのかも。
「分かっているくせに」
死体が喋った。顔はほとんどアスファルトに叩きつけられて破損していた。
「分かっているくせに」
騒がしい音がする。間近にある線路で電車が止まっている。デパートに隣接する駅からやかましいアナウンスが流れている。
『ただいま当駅において起こりました人身事故によりまして──』
人身事故だった。
この人は電車が迫ってきた線路に身を投げて、当たって、この場所まで飛ばされてきたのだろう。
「警察が来るかも、ずらかろ」
白いスーツの少女は幻のように消えていた。幻だったのかもしれない。
パビャ子は駅に行くのをあきらめ、踵を返した。
「さよなら〜」




