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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(フス編)
39/162

ふぁふろつきーずげんしょうみすい

 空から、夜の赤みがかった曇り空から人が落ちてきた。どこから降ってきたのだろう?と無意味名 パビャ子は発生源を探した。

「ありゃあ〜〜~」

 オシャレなコンクリート打ちのアパートから?いや、斜め前にある一軒家から?それとも眼前にそびえ立つデパートだろうか?

「お姉さん知らないの?空から魚が降ってくる事もあるんだよ?」

 人の近くにブロンドヘアーを一つに束ねた儚げな少女が立っていた。全身真っ白なスーツをきていた。

「ファフロツキーズ現象って言うんだよ」

「何それ?」

「空から魚やワニ、色んなモノが降ってくるってぇヤツなんだけどね。1890年代のイタリアでは赤い雨も降って来たんだって」

 赤い雨なんて世紀末を告げる現象みたいだ。

「えー!おもしろぉい!!」

 パビャ子は目の前に落ちているサラリーマンと思わしき人をまじまじと観察した。

「この人はどうやってここまで落ちてきたの?!?」

「一説には竜巻や飛行機から落下してきたんじゃないか、って言われてる」

「エッ!この人、飛行機から落ちてきたん?!すご!まさかアクション映画みたいに敵と戦ってたのかな?」

 ドキドキハラハラする映画では飛行機から飛び出して戦うシーンがある。大体はスパイやCIAだったりするが、この人はごく一般的なサラリーマンにしか見えなかった。

「世の中、色んな人がいるなぁ」

 きっとサラリーマンのふりをした凄腕のエージェントだったのかも。

「分かっているくせに」

 死体が喋った。顔はほとんどアスファルトに叩きつけられて破損していた。

「分かっているくせに」

 騒がしい音がする。間近にある線路で電車が止まっている。デパートに隣接する駅からやかましいアナウンスが流れている。

『ただいま当駅において起こりました人身事故によりまして──』

 人身事故だった。

 この人は電車が迫ってきた線路に身を投げて、当たって、この場所まで飛ばされてきたのだろう。

「警察が来るかも、ずらかろ」

 白いスーツの少女は幻のように消えていた。幻だったのかもしれない。

 パビャ子は駅に行くのをあきらめ、踵を返した。

「さよなら〜」

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