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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(フス編)
38/162

ゆうどう

 夜の道で防犯灯に照らされた影がスッと伸びている。

 乎代子はふと足元を見下ろした。アスファルトのデコボコに染み付いた自らの影を。

 チカチカとうるさく点滅していた前方の灯りが、ネオンライトに近い緑色に変わった。「ん」

 ぼんやりと廊下を照らすような誘導灯──のような、薄気味悪さを醸し出している。それを皮切りに道の防犯灯は緑色に染まる。

 はあ、とため息をつき、彼女は歩き出した。駅からの帰り道。くねくねと曲がる裏道に近い住宅地を縫う、人気のない路地。

 夜中に起きている輩はいるだろうが、外が緑色に染まっている事に気づいていないようだ。

 乎代子は痴漢や強盗に出くわすよりは良いと判断して足を進める。

 すると走る足音がして影が走っていった。影は自分の足元から離れ、視界から消えた。

 追いかけるか否か。

 嫌な予感がするのでゆっくりとした歩幅で先に進むと、鋭いブレーキ音と物がぶつかる音がした。

 二股に分かれた道で車が止まっている。運転手が出てきた途端、防犯灯はいつもの白い灯りになった。

「あちゃ〜…猫轢いたー…チッ」

 野良猫が轢かれていた。地面に横たわっている動物を乱雑に端に寄せると、そそくさと軽自動車は走っていった。

「化かしたのか、化かされたのか…」

 猫までたどり着くと、観察する。首輪はしていないから野良猫だろうか。

 この猫が長らく生きて力をつけ、乎代子を化かした正体なのか、またはナニカに化かされ影を追いかけてしまった犠牲者なのか。

 分からない。

 仕方ない。手を合わせようとしたが、やめた。猫はこうなってしまったら危険な存在であると迷信がある。

「ああ…一日の終わりに嫌なモノ見ちゃったな」

 ぼやきながら大通りに通じる路地へ歩き出し、肩を落とした。

久しぶりに書けました!

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