がんばるう!
「うわーーーーーーっ!!!ちくしょーい!!」
リクルートスーツの女性、パビャ子は鉄塔の一番上で叫んでいた。風が吹き荒れる中、精一杯声を張り上げる。
「おなかいっぱい食べたああああああああああああい!!!」
「アホ!台風の日に何してんだよ!」
鉄塔を登ってきたのは、全身真っ白の男性だった。
「うわ!なんだおめえ!何故きた!!」
「なんだおめえはこっちのセリフだっての」
ブロンドヘアーをめちゃくちゃにして彼は横まできた。
「乎代子が家に入れてくれなくてえ…」
「そうか」
「暇だから叫んでた!」
「馬鹿だな」
台風の暴風は勢いを増していき、重厚なはずの鉄塔もわずかに揺れる。
「奢ってくれる?お腹空いたんだよお〜〜」
「残念ながら有り金全部燃えちまったんだ。アレがビームを発してよ、何もかも木っ端微塵だぜ」
「じゃあアレに追われてるの?」
「ああ」
「えっ──」いきなり鋭いビームが鉄塔を直撃し、電線が火花を散らして風にあおられた。一気に街が暗くなり、暗闇の中、何かがこちらに向かってくる気配がした。
パビャ子は獣のような身のこなしで下に降り、全貌を拝む。巨大な四足の怪獣が男に向かって登ってくる。
「何とかしろ!パビャ子!」
「えーっ」
そう言いつつも、風に暴れる太い電線を何とか捕まえ、電気をまといながらも輪っかを作る。
「よーし!私は凄腕カーボーイだ!」
カーボーイさながらにビュンビュンと振り回すと、目標物に投げた。大柄な体に線が下手くそながらに巻き付き、通電する。
「ぐああっ!」オマケを食らった男性も感電するが、あれも大層な奴だ。あれくらいでは死なないだろう。
体内の中にあったガスに着火したのか──怪獣は大爆発した。爆音と共に火炎が嵐の夜を照らした。
「なんか、スッキリしたかも」
胸の内にわだかまっていたモヤモヤがなくなった気がして、もう一度乎代子に会いにいこうと決意する。
「あーっくそ!何で爆発するんだよ…」
ぶっ飛ばされた純白のスーツの男性がこちらに歩いてくる。
「ラファエル!牛丼食べいくぞー!」
「は?俺ァ金持ってねえよ」
「乎代子に奢ってもらうんだ!」
にっかりと満面の笑みを浮かべ、パビャ子は意気揚々と彼女の元へ歩き始める。




