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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(フス編)
35/162

がんばるう!

「うわーーーーーーっ!!!ちくしょーい!!」

 リクルートスーツの女性、パビャ子は鉄塔の一番上で叫んでいた。風が吹き荒れる中、精一杯声を張り上げる。

「おなかいっぱい食べたああああああああああああい!!!」

「アホ!台風の日に何してんだよ!」

 鉄塔を登ってきたのは、全身真っ白の男性だった。

「うわ!なんだおめえ!何故きた!!」

「なんだおめえはこっちのセリフだっての」

 ブロンドヘアーをめちゃくちゃにして彼は横まできた。

「乎代子が家に入れてくれなくてえ…」

「そうか」

「暇だから叫んでた!」

「馬鹿だな」

 台風の暴風は勢いを増していき、重厚なはずの鉄塔もわずかに揺れる。

「奢ってくれる?お腹空いたんだよお〜〜」

「残念ながら有り金全部燃えちまったんだ。アレがビームを発してよ、何もかも木っ端微塵だぜ」

「じゃあアレに追われてるの?」

「ああ」

「えっ──」いきなり鋭いビームが鉄塔を直撃し、電線が火花を散らして風にあおられた。一気に街が暗くなり、暗闇の中、何かがこちらに向かってくる気配がした。

 パビャ子は獣のような身のこなしで下に降り、全貌を拝む。巨大な四足の怪獣が男に向かって登ってくる。

「何とかしろ!パビャ子!」

「えーっ」

 そう言いつつも、風に暴れる太い電線を何とか捕まえ、電気をまといながらも輪っかを作る。

「よーし!私は凄腕カーボーイだ!」

 カーボーイさながらにビュンビュンと振り回すと、目標物に投げた。大柄な体に線が下手くそながらに巻き付き、通電する。

「ぐああっ!」オマケを食らった男性も感電するが、あれも大層な奴だ。あれくらいでは死なないだろう。

 体内の中にあったガスに着火したのか──怪獣は大爆発した。爆音と共に火炎が嵐の夜を照らした。

「なんか、スッキリしたかも」

 胸の内にわだかまっていたモヤモヤがなくなった気がして、もう一度乎代子に会いにいこうと決意する。

「あーっくそ!何で爆発するんだよ…」

 ぶっ飛ばされた純白のスーツの男性がこちらに歩いてくる。

「ラファエル!牛丼食べいくぞー!」

「は?俺ァ金持ってねえよ」

「乎代子に奢ってもらうんだ!」

 にっかりと満面の笑みを浮かべ、パビャ子は意気揚々と彼女の元へ歩き始める。

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