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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
ンキリトリセン(ミスの決別と清楚凪 錯迷の襲来編)
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だいえんだん のしゅくふくを

サクメイシリーズが完結いたしました。

ありがとうございました。

 覃(のびる、ひととなる)は死の亀裂から、外気に漂う濃い匂いを察知した。

 と、同時に至愚から言われた願いを思い出す。

 ──昔のよしみでアンタにお願いだよ。清楚凪 錯迷が零落するのを防いでくれ。

 どうやらそれは防がれたようだ。なぁんだ、とのびるは欠伸をする。どの道、人面獣やなり損ないの支配権を握り圧迫していた清楚凪 錯迷とやらは零落もせず──気配も消えた。

(自由になった気分だナー。こりゃー、楽でいいや)

 支配から解き放たれた今。自身には何も望みはない。ただこの深い亀裂の中で過ごしては、死を纏わせた人間を食らうだけ。

 しかし何とも不快な死の匂いがする。気になりソッと景色を伺った。

「のびるさんっ!何をしているのですか?」

 背後から明るい音吐がして、振り返るとリクルートスーツを着こなした『めんどくさいヤツ』がいた。

「どこからかすんごい絶望の匂いがしますう!うふふ」

 嘘くさい喜びに満ちた顔を貼り付けた女性は死が蟠る晦冥を自由自在に泳ぎ回る。自身と似た属性を持つ異なる種族。

「めんどくさい。去れ。のびる、お前の相手したくない」

「気になった癖にぃ。間蔵(まくら)は見てきますが〜。だってそこからキッショイ先輩の気配が消えて嬉しいんですもの」

「べーっ」

 あっかんべーをされ、間蔵と名乗った女性は能天気に笑う。彼女は自らのテリトリーに不法侵入されてみたらどんな反応を見せるだろう?

(おもしろそーだ。しかし、消されたくないな)

 間蔵はこれでも強い部類のこの世の者でない部類だ。下手したら簡単に抹殺されかねない。

「のびるさん、ではっ」

 敬礼をするや否や、彼女はテレポートし居なくなってしまった。

(勝手なヤツらだ。ミンナ。ジブンのことしか考えてない。ん、それがフツーか?ふつーフツー)

 フツーフツーと繰り返し、所でフツーって何ぞや?と顔を回転させる。壊れた彼は今日も暗がりに住まうのだ。


 乎代子はギュッとパビャ子をきつく抱きしめた。己も皮膚やらを負傷しているが、それよりも目の前にいる存在を此岸へつなぎ止めたいのが第一だった。いなくなるような予感がしてこの体で束縛するしかないような。

「…へんなの。乎代子がハグしてきた」

「死なないでよ…」

「るるるん。こんにちわ〜!呼ばれてやってきました!尾先ヶ(おさきが) 間蔵(まくら)と申します!」

 いきなり頭上から脳天気な自己紹介をされ、ついには幻聴が聞こえたのかと思った。

「な、何だ、お前!清楚凪 錯迷の仲間かっ?!」

 ラファティが腰を抜かしている。

「んー、ちょっと違いますう。あのくそキモと一緒にしないでくださーい」

 ウインクすると、フワリと乎代子の頭に触れた。

「貴方の絶望を、希望に代えてあげます。今回はスペシャルサンクスです!くそキモ野郎を封じ込めてくれたお礼です」

「え…くそ…キモ?」

「けれども覚えていてくださいねっ。貴方の絶望は地球にいる誰かに転嫁されます。それがこの世の摂理ですから!──では!」

 仕切り直しとばかりに女性は咳払いをし、集中する。

「希望〜希望よ。おこれ〜、やー」

 案外棒読みな呪文。しかしそう言った途端、重症をパビャ子が元の無傷な状態に戻る。


 ──乎代子の絶望とはパビャ子が死んでしまう事だったのだ。


「パビャ子…!」

「あ、あれ?痛くない…?なんだー、夢だったんだ」

「夢じゃねえよ!尾先ヶ 間蔵って人が助けてくれたんだ」

「ん、んんー?何かお会いした事がある人黄ですねぇ。まさか、お二人とも…パーラム・イター先輩の…!生きていたのですか?!間蔵ちゃん嬉しいでえす!あ、すいませんっ。え?!仕事が──また会いましょう!絶対ですよ?」

 慌てふためいた彼女は目をキラキラさせて、その場から跡形もなく消えてしまった。嵐が過ぎ去ったように静まり返り、ラファティが脱力して膝をついた。

「なんだアレ…つ、疲れた…俺、もう、腰が抜けて立てねえよ…」

「あー…、私も…」

 乎代子もパビャ子の上に倒れ込む。「おもたーい」

 それを眺めていたサリエリも緊張を解き、腕を組んだ。瓦礫の山に囲まれ、山から冷たい風が吹いてくる。あれだけ騒がしく物音を立てたはずなのに、消防車やパトカーもやってこない。

 それもそのはずか、先代の天使が強い結界を張っていたのだから。

「世の中、何が起きるか分からないものだな」

 夢幻のようだ。奇跡。魔法。

(奇跡は確実にこの世界に存在する。それをこの目で見たんだ…僕だって…)

「新たな潜伏先を考えなければならないか…はあ…ラフ。この二人を頼んだよ。僕は…本来関わるべきではないからね」

「ち、ちょっと」

 早足で去っていく少女にため息をつきながら、ラファティは項垂れた。

「はー…、どいつもこいつも。二人とも。動けるか?」

「私の傷も治してくれよ」

 乎代子が爛れた箇所を指さした。「いてえんだよ」

「わ、分かったってば」

尾先ヶ 間蔵さんが登場!

区切りが良いので『虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜』を一旦、閉店ガラガラにさせていただきます。

まだ書き終わってないジャングル編もあるので、2巻目?も書きたいな〜と思っております。

密やかに書いていましたが、一瞬でも目にとめてくださりありがとうございました。

ではでは。

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