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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(フス編)
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にんしきのきょくせつ

「花嫁姿の幽霊…」

 女性は、帰り道の国道で花嫁衣裳を着た女性が佇んでいるのを見た。

 それは有名な噂で、雑誌やネットでも語られていたものだった。

 まさか。本当に居るとは、思わなかった。

「いや、出没地はこの国道じゃなかったはず」

 花嫁はただ車のライトに照らされ、白光りしては沈んでいく。

「アレに関わるのは危険だよな」

 自転車を押して、引き返した。そして何事もなく帰宅できた。

 廃墟化したアパートの一室で、パンを食べる。味を確かめる事もなく無心に口に運んでいると、ドアがノックされた。

「こんばんは」

「…夜遅くにどうしたんですか」

 女子高生が息を切らして、玄関前に立っていた。

「不法侵入ですよね?それ」

「あー…家に帰りたくないんですよねえ」

「とにかく、呼ばれてるんですよ。あの人が事故に遭ったって」

「アレが?」

「それで…色々あったんです。で、あの人が貴方を呼べって」

「はあ…」

 仕方なく腰を上げ、所持品をバッグに詰め込む。「じゃあ、行きましょうか」


 帰り道通った国道の、花嫁姿の幽霊がいた場所に警察たちが現場検証をしていた。

「貴方がこの方の親類ですか」

 刑事が淡々と尋ねてきた。

「ええ、遠い親戚です」

「彼女、事故にあったのに無傷でしてね。奇跡的に助かったんですが、第一発見者になりまして」

「なるほど」

「女の人が死んでたんですよ!」

 リクルートスーツの女性が横入りしてきた。

「そうなんですか」

「はい。まあ、詳しい事は言えませんが…」

 チラリと国道沿いの草やぶを見つめ、刑事は言う。暗くて状態は分からなかった。

 あれは、あの女性は有名な幽霊ではなかったのだ。死体を伺う事は叶わない。

 昔の噂に汚染され、屈折して幽霊を見てしまったのかもしれない。

 お互い認識しなくてよかった、と心の内でホッとした。

かわご…かいどうのはなよめを元にしています。

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