なやみくんのじっかほうもん はぁ!
ミス(Miss)はやきもきしながら日々を過ごした。これからどうすべきか、悩むも踏ん切りがつかない。人の道から転がり落ちる前も、優柔不断で他人へ判断を委ねてきた。そのツケが回ってきたのだろうか?
妖しげな人面獣からもらった金平糖にも手をつけていない。
家族に会いたい。一目だけでいいから。
その想いが強くなっていくのを感じ、それでいいのではないか、と心が傾いていた。
ある日、咋噬 南闇が自らの実家へ案内してくれるという。心底驚き、彼にもそのような気持ちがあったのだと喜んだ。
しかし彼は爽やかに言う。
「貴方がしようとしている事が、どういう結果をもたらすか。それを見せようと思います」
「え、じゃあ、南闇さん、無理やり」
「いえ。僕も昔、両親に会いにいきました。ミス(Miss)さんのようになりたての頃、とにかく自由の身になり、わけも分からず実家へ向かったのです」
都内から少し離れた土地にある、閑静な住宅街。電車を乗り継ぎやってきたその街は柔らかい空気が漂っている。南闇もこのごく普通の世界で育ったのだ。
あまりにもかけ離れた印象をしていたものだから、意外だな、と駆けていく子供たちを目で追う。
「そうだったんですね…」
「まあ、見てみましょう。壮観ですよ」
戸建てだらけのノスタルジックな道を歩いていくと、電気柵と思わしき囲いと大量の監視カメラがつけられた家屋があった。
「あれが僕の実家です」
『仁尾』と書かれた表札の家は、この一帯から浮いていた。周りから恐怖されているのか、隣家の垣根は厳重に仕切られている。
「また来たのか!闇業者っ!帰れ!」
どこから出てきたのか、初老の男が鬼気迫る形相で棒を持ってこちらに走ってくる。あれは釘を打ち込んだバッドだろうか?分からない。
「ぎゃああああ!!」
即座に逃げ、ミス(Miss)は異常な光景と住民に身震いした。
「あ、あれ、本当に南闇さんのお、お父さんなんですか?!」
「はい。僕の父だった人です」
笑えるでしょ。と彼は平生の笑顔のまま、皮肉を言った。
彼いわく自身はこの世から抹消され、替えの存在──仁尾家の息子がいた。彼も南闇と同じ大学に通い、似たようなキャンパスライフを送っていた。しかし闇バイトに手を染め、殺害されてしまう。それはニュースにもなり、世間的に仁尾家は白い目で見られた。
そのタイミングで南闇が訪れてきたのだ。
「この格好ゆえに闇バイトの仲間だと勘違いされて、僕を殴ったんです。驚き、絶望しました。父は優しい人でしたから、母も僕を追い出そうと必死に…それで、つい、母を突き飛ばしてしまったんです」
化け物の体力を得た南闇はまだ手加減すらできず、母はクシャリと歪んでしまった。それを見て、父は気が狂ってしまったという。
「僕も目先の欲にくらんで闇バイトにそそのかれ、痛い目に遭いました。運命があるなら残酷ですよ。せめても埋め込まれた存在は幸せに、僕の先を行って欲しかった。普通に生きて、両親へ親孝行くらいはして欲しかったですね」
「…。じゃあ、私の家も」
「その可能性が高い。ミス(Miss)さん、あきらめた方がいいですよ」
この人は意外と他人思いな性格をしているのではないか?と、ミス(Miss)は陰鬱となる。そんな彼は母殺しを冒してしまった。精神的にかなり苦痛だったろう。
「…」
「さ、ご飯でも食べましょう」
切り替えるように、彼は歩き出す。ご飯──人間だろう。ミス(Miss)は迷う。どうしたらいいのだろう。
破ァーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!




