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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
ンキリトリセン(ミスの決別と清楚凪 錯迷の襲来編)
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ただいちぞくのつきもの(イタチキツネ大明神)

 多田(ただ) 香純(かすみ)は毎日の日課──祖母を『介護』していると、メリッと半開きの口からイタチに似た化け物が出てきた。驚いたが、さらに有り得ないのは…イタチの顔面は人間であり、意地悪い笑顔を浮かべて香純を見ていたからだ。

(え…、なにこれ)

「ツギハオマエダ」

 イタチがニヤァと口角を吊り上げ言う。「わ!」

 呆然としていると居候をしている赤谷(あかたに) 美萌(みもえ)がとんでもない速さで異形生物を鷲掴みした。

「先輩、ボサッとしてると食べられちゃいますよ」

 拗ねているような、嫉妬しているような、そんな顔で後輩が言う。

「なぜ、お前らの周りに化け物、いなかったハズ」

「い、イタチさん…?貴方、何者?」

 ジタバタするイタチ?を凝視しながら、戸惑った。顔つきは赤ん坊に近い、可愛らしいふくふくとした女の子だが…。

「イタチ?ワタシはそんなヤツじゃない。お前らを代々食ってきた、偉大なイタチキツネ大明神だ」

(い、イタチなんだ。結局…)

「偉大って、私より弱そうですよね?それよりなんで先輩の家族に取り憑いてきたんですか?」

「ば、化け物同士わかるバス!ご飯になるからだ!」

「はー、そういう化け物もいるんですね」

 あまり理解していなさそうに美萌は頷いた。

「知らないノカ?憑き物を?」

「知りませんよ」

 二人で話し合っているのを前に、このイタチがずっと祖母の体内にいたのだと驚いてもいた。今まで気配すらせず、生前の祖母も自覚していないようだとた。血にまみれた生活をしている後輩とは残虐性が雲泥の差である。

 血抜き用の刃物をかざされ、イタチはガタガタ震えた。

 彼女が言うには自らはマジナイ()を扱う使役者に命じられ、特定の家の一人に取り憑くと、その人間の血肉をゆっくりと食い、周りに悪影響を及ぼす類いの化け物らしい。寄生された人間はひどく情緒不安定になり、周囲も障りを起こすようになる。命令されてからこの、この世の者でない部類は多田一族の人を取っかえ引っ変え食べてきた。

 母親が死んだ今──祖母に乗り移り、今度は香純へ鞍替えしようとしたのだ。

(じゃあ、これまでお母さんもおばあちゃんもコイツに狂わされてきたの?)

 どう受け止めていいか分からない。

「ヒィ!食べないでくれェ〜〜」

「じゃあ、先輩を食べないでくださーい」

 人面獣の喉に刃先をスリスリする。

「わ、わかった!ワカッタ!なら、このオンナをアルジとする!そうしたら食わない!」

「え?え?」

「オマエをご主人様にして、他のヤツをクウ!」

 恐怖で顔面蒼白な化け物は懇願する。そして付け加えた。

「それには()()()()()にお許しをもらわなければ。サクメイ様に、会いにいく!」

「サクメイ様?誰なの?美萌ちゃんは知ってる?」

「いいえ」

「儀式!ギシキする!サクメイ様を呼ぶのだ!」

 儀式?あの怪しい蝋燭とかを立てて、星を書いたりする?

 二人は顔を見合わせる。

「なんか楽しそうじゃないですか?先輩!」

「え?!」

「やってみましょうよ!」

ギャグ要素を入れたくて、ちくわ大明神にしようか迷ったんですが、それはいけないので必死に止めました…。

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