なやみとみす
ミス(Miss)はかつての自分の名前をまだ捨てきれていなかった。まだ、というのも咋噬 南闇から早く忘れろと言われたからだ。
苗字と名前は一応、戸籍上で役に立つ。だが、もうミス(Miss)は戸籍や存在自体、失われた身なのだ。
自らの変化についていけない彼女は、名前を忘れてしまうのは自分自身を殺すのと同等ではないかと恐れた。
味覚も、五感も価値観も変わっていくのが分かる。コンビニで栄養補助食品ばかり買って、それで食いつないでいる。
「…お腹、すいた」
精神的に疲れ果て狭い部屋で蹲る。貧しいながらも大切に育ててくれた両親に会いたい。
肯定してほしい。自分が存在しているのを。
「ミスさん。骨、食べますか?」
笑顔のまま、人骨を差し出される。
「え…いや、食べません。骨って食べられるんですか」
「カルシウムやリンなどが豊富で体にいいですよ。それに貴方もそろそろ、食べた方がいいです──」
人体の一部を。
「しょ、食人なんて、犯罪ですよっ!」
「それは現代の価値観です。我々先祖は確実に食人をしてきたでしょう。まあ、食べた方の体調に悪影響もあるようですが…僕たちはそんなヤワでは無い。その、添加物だらけの菓子より余程体にいいですよ」
栄養補助食品をしてきされ、何も言えなくなる。
「私は…怖いです。人を食べるなんて、化け物みたいで…そしたら自分はどうなるのかなって」
「さあ。人によりけりですかね」
「南闇さんはどうして骨なんか食べるんですか?」
「おでんも食べますよ。コンビニのおでん、好きなんです」
「あ…そうなんですね…」
爽やかな笑顔。彼は一時もそれを崩さない。
「ミスさんはどうもその栄養補助食品を不味そうに食べているので、体質的に合わないのでしょう。僕の場合、骨は腐敗物が付着していないので抵抗なく食べれるんです」
人骨をかじりながら彼は言う。骨はいとも容易く砕かれ、食べられてしまった。
「…は、はあ…」
呆気に取られ、グッタリと壁によりかかる。骨に食欲は湧かないので、自分には向いてないのだろう。
「あの…両親に会いに行きたいのですが…」
「なぜです?彼らは貴方を忘れているのに?」
「最後に、一言だけでもいいから話して終わりにしたいんです」
「ふうむ…あまりよろしくない。拒絶されますよ」
いつも受け入れてくれたあの両親が、自分を拒絶する。想像ができなかった。
「…もしもの話です。貴方の代わりが家族にいたら、貴方はどうします?」
「え?」
「穴埋めが起きていたら、ミスさんはそれを受け入れて彼らと話すんですか?」
笑みを崩さず、彼は提案する。
「そ、それは」
もし自分が居た『場所』に見知らぬ人がいたら。
「う、うう…」
涙が出てさらに体を縮こませる。それに対し、南闇は何も助け舟を出さない。ただ骨を噛み砕くだけ。
(なんで、こんな酷い目にあわなきゃいけないの…)
骨え




