しほうしきのやかたのちだまり
パビャ子は細い路地を進むと不思議な古めかしい館にたどり着いた。
まるで寺院のような佇まいの建物は戸が口を開けている。誘われるまま足を踏み入れると、延々と続く廊下とたくさんの襖が並んでいた。
たまにそういう空間があるのは、昔から知られている。伝承があるのだから不自然な事柄ではない。ただ襖には血の染みがついているので、昔から言われている理想郷ではないのだろう。
「あーそぼ」
廊下の奥から子供の声がして、コロコロとサッカーボールが転がってきた。
「やだーよ」
パビャ子は手当り次第に襖を開けてみる。春夏秋冬の美しい景色。さながらまるで竜宮城のようだ。
「あーそぼ」
子供が呼んでいる。無視して襖を開けると、普通の和室があった。血染みがすごいのでここで何かあったのだろう。
「次の襖は開けちゃダメだよ」
廊下の奥で違う声がする。パビャ子はどうすべきか迷って、廊下の先で多数の人が覗いているのに気づいた。老若男女。彼らはこの建物に囚われているのか。
「じゃ〜帰るね」
来た道を戻る。「バイバーイ」
サッカーボールを寄越した子供が手を振って、送り返してくれた。悪い子ではなかった。
──ただ遊んでほしかったみたいだ。
「人食い屋敷か…聞いた事ないな」
乎代子が例の細い路地の向こうを見据えた。大通りの景色が見えるだけであの建物はない。
「何がいたんだろうね」
奢ってもらったアイスクリームをなめながら上の空で返事を返した。
「ロクなモンじゃないだろ。どうせ…」
あの館は今もどこか遠い知らない土地に移動しているのかもしれない。あの人たちもまだ囚われたまま。
「お前も興味本位でよく入るね」
「食べ物があると思ってぇ」
「そんなに飢えてるのか…」
四方四季の庭をイメージをして書こうしたらこうなりました…。なぜ…
四方が「しほう」なのか「よも」なのか分からず、しほうにしました。




