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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜  作者: 犬冠 雲映子
ンキリトリセン(ミスの決別と清楚凪 錯迷の襲来編)
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わからない

 大きなイチョウの木が生えた公園。丑三つ時は沈まえりかえり、どこからか夏の虫の音がする。

 ラファティ・アスケラはブランコに座り、無になりながら夜風に吹かれていた。

 するとどこからともなく、猫か赤ん坊か。判別のつかない声が聞こえ、どんどん大きくなってきた。

「な、何だ?!」

 おにゃあ。おにゃあ。空中でスッポンくらいの塊がこの公園にやってくる。「ひいい!」

 塊のシルエットはどう見ても胎児で、ありえないくらいでかい。そして公園の真ん中あたりに来ると浮遊し、止まった。

「う、うわぁ…」

 こっちに激突してこないだろうな──と警戒していると、サササーっと棒人間に近い者たちが集まって来てあの『胎児』を囲み始めた。

「な、なに?!なんなの?!」

 しきりに鳴いている塊をあやすわけでもなく、奴らはクルクル回り始める。早送りされた動作だがラファティには彼らは盆踊りをしているのでは?と気づいた。

 音のない、不気味な盆踊りに圧倒されていると、今度は鹿が入ってきた。

(悪夢か?)

「こんばんは。ラファティ・アスケラさん」

「こ、こんばんは…」

「サクメイは清楚凪(■■■) 錯迷(■■)。今月は鹿の姿です」

「はぁ…」

 清楚凪 錯迷と名乗った──鹿は角が立派で、目が6つもあった。異形だと一目で分かる彼は盆踊りを見やった。

「始まりますね」

「始まる?」

「何かが始まるかもしれないし、始まらないかもしれません。サクメイは分かりません。しかしアレが居る以上は否定できません」

「は、はあ」

 よく分からないが、この世の者でない部類はだいたい理解不能である。

「参加しますか?盆踊り」

「いやいや、俺はいいです」

「そうですか。じゃあ、一刻も早くこの場を離れた方がいいですよ」

「ですよねえ〜〜!じ、じゃあ!お疲れ様ぁ!」

 鹿を取り残し、さっさと公園から離れる。精神的に疲れ果ててとりあえずコンビニへ向かう。

(そろそろお盆か…だから)

 いいや、あんなの今まで目にした事がない。ある程度、この世の者でない部類が活発化する時期ではあるが。

 今は明るい場所の下で冷たい飲み物を買って、冷静になるべきだと。ラファティ・アスケラは切に願った。

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