あまやどり
パビャ子は廃工場の中を歩いていた。理由はバケツをひっくり返したような雨から逃れるための雨宿りで、何となく鉄の匂いがしたから──。
鉄なら、工事にたくさんある。しかしパビャ子は嗅ぎ分けていた。これは生物かは発せられる血の匂いだ。
ここ数日、食事をして居らずお腹がすいていたので、何か食べたい。動物の死骸なら多少満たされる。
血の匂いを辿りながら歩いていると、背骨が浮き出たこの世の者でない部類が何かを貪っていた。人だ。
「助けてくれーっ」
(チェ。人か〜)
お腹が空いているが、あのこの世の者でない部類は不味そうだ。興味を無くして踵を返す、とあちらがパビャ子に気づいた。新たな食べ物だと、血走った眼球が熱視線を送ってくる。
「わ〜」
仕方なく逃げて、様々な機材を伝い、上に行く。あちらも獲物を追いかけて這い上がってきていた。
「あ」
横にどでかい鉄球があった。これならあの変なヤツを潰せるかも。
周りにある工場の機材やらを投げ、化け物に投下する。「ギャアア!」
化け物が地面に落ちて──パビャ子は鉄球を手に落とした。
食われていた人が言うには登山中、変な生き物に捕まり動物がギッシリと土に埋められていたらしい。何人か同じ境遇の人がいて、励まし合い助け合っていた所──あの廃工場へ連れてかれた。
辛うじて電波が通っている事から、人は通報して救助を待つという。
(動物、もか。行ってみよう)
話によれば奇妙な形の古木の、崩れかけた社殿の横だそうだ。パビャ子は地図など持っていないが、勘で探り当てた。
人に手入れされなくなった神社の横に、こんもりとした土の山がある。手で掘っていくと衰弱した動物にありつけた。
「ラッキー!」
バキバキと体を食いちぎって、何体か食べていると何人かが現れ助けを乞う。手を握り引きずり出すと、礼を言う──が、パビャ子の口に動物の肉片がついているのが分かったのか、悲鳴をあげて逃げていった。
「へんなのー」
あはは、と笑って、残った動物らの体を貪る。こんなご馳走は久しぶりであった。雨も止んできて、辺りは静まり返ってのどかな気分だ。
「近くに川があったから洗いに行こ〜〜」




