第5話
本日二度目の投稿。
よろしくお願いします。
前話のあらすじ:
期待してARグラスを掛けたら、肩透かしされた
歪んでいた文字が消えて暫く経ったあと、ARグラスを外す。
改めて見た『お社』は特に何も変化は無い、子供の頃に見た古ぼけた外見のままだった。
いや、先ほどは気付かなかったが壁の一部が新しくなっていた。
そういえば大学進学前に来た時は壁板が痛んでいた気がする。
取り留めの無い事を考えていると、
「こちらを見ても大丈夫ですよ」と苦笑気味な竹崎さんの声が聞こえる。
後藤の指示を気にしていた事に気付いてくれたらしい。心が読めると、こういう時は便利だ。
振り向くと、若干気拙い顔をした後藤と、嬉しそうに端末を操作している竹崎さんが見えた。
何だ後藤、変な顔してさっきの発言を気にしているのか。強面で硬い声を出して威圧したからって、最近見た方々の一割も怖くなかったぞ。
『そうじゃない』苦笑しながら言うと、さっきまで掛けていたであろうグラスを見つめながら、後藤は表情を真面目に改める。
「先程のテストに疑問はあるだろうが、質問には答えられない事もある」
こちらに目を向けると、そう言った。
テスト前の業務説明だと思っていたが、既にテストは始まっていたらしい。
ろくに説明が無い事といい、デスマーチ発言といい、このプロジェクト相当問題有りそうだ。
前途多難を感じ後悔していると、
「そんなに悲観しないでください。あなたのおかげで大きく前進する目処が立ちそうです」
とても嬉しそうな顔をした竹崎さんが腕をつかんでくる。
どうやら、よく解らないが好印象を与えていたらしい。あくまで好印象ですよね?逃がさないって意思表示ではありませんよね?
何故か心の声に鈍感になった竹崎さんは、『説明を代わっていただきありがとうございます、先輩』と話題を変えてしまった。あれ、やっぱり心を読んでるこの娘?
それはそうと、担当が決まっていたから後藤は黙っていたのか。別にお前が下克上されたわけじゃないのか、残念だ。
『下克上済み』?先輩が変な顔しているけど、問題の無いの後輩?それと都合良い時だけ心が読めるんですね、後輩。
散々繰り返したやり取りを見て何故か納得し、『人前ではそのやり取り、気を付けろよ』と後藤は注意してくる。知らない人間が端から見ると、おかしな人達に見えるからと。彼女には今更遅いと思うぞ、もっと早く忠告してくれ。
だけど竹崎さんは照れ笑いを浮かべると、素直に受け入れていた。
何でも普段はあまり態度に出さないらしい。『便利だなんて感想初めて』って、それで好印象だったのか。成る程、よく解らん。
それと、何だかんだお前も慣れてるみたいじゃ無いか、後藤パイセン。
「二人ともその顔はやめろ。そろそろ移動するぞ」
二人に見つめられた先輩は、ばつの悪そうな顔をして移動を提案してくるのだった。
今までの登場人物には、特殊な特徴が無い人が二人だけいます。
さほど気にならないかも知れませんが、参考までに。
読んでくれた方がいれば、ありがとうございました。