第20話
遅くなりました。申し訳ありません。
それにしても、なかなかベータ版リリースまで話が進まない。難しいものです。
よろしくお願いします。
前話のあらすじ:
新機能が発動。とても怖かった。
開発部の見守る中、靄の向こう側に謝罪するという行動に沈黙が降りる。そんな中、後藤が声を掛けてくれた事で、漸くその事に気付いた。
奇行を見られた恥ずかしさと、謎の圧力からの解放に思わず涙する。これも十分奇行に思えるが、この涙は理解して貰える気がする。きっと生暖かい視線で見守ってくれている筈だ。
現実逃避気味にそんな事を考えるが、そうしてばかりもいられない。ここには自分しかいないのだ。自分が動かなければ、いつまでも話が進まない。
なけなしの気力を振り絞り、仕事に戻る。目の前の景色は変わらないが、先程の様な恐怖は感じない。恐怖や不安が感じさせた幻だったのだろうか?だが、新機能が説明通りなら、そして正しく機能していれば、感じた圧力を軽んじる訳にはいかない。
「中原、その…有らせられるのか?」
遠慮気味に後藤が声をかけてくる。ここでまた、更なる勘違いに気付いた。開発部側は呆れていたのではなく、謝罪相手が其処に有らせられる可能性に様子を伺う事しか出来なかったのか。
無理もない。先輩の『作品』には、無茶苦茶な前例がある。万が一、正常稼働していた場合、無礼は許されない。少なくとも、現場の人間が危険に晒される可能性がある。それを思えば、沈黙も当然だ。
後藤は後輩を気遣かって交代したのか。おそらく竹崎さんは此方の様子から、少なくとも存在を確信している事を理解した筈。何人もの『本物』に触れてきた、規格外の存在に耐性のある自分でもあの体たらくだ。慣れていない人にはショックが強過ぎてもおかしくない。その点、後藤は未だ半信半疑だから交代できたのだろう。部長は様子見といったところか?
一つ深呼吸をする。
跪き、頭を垂れる。
そして一言『おそらく、おわします』と報告する。
靄の向こう側は判らないが、今も存在感を感じる。私見だが、テストは成功したと判断してもいいだろう。
今までのエフェクトは『後光』等といった現象。そして、仮名『特殊エフェクトB』とは、其処から更に踏み込み、具現化する機能。今回の場合は、有り体に言えば『お社の祭神』をこの場に『神降ろし』する事とも言える。あくまでも、読み取った情報を元にした『神様』になるが。
今更ながらに思うが、システム開発だからと何処か軽く考えていたようだ。最初に感じた威圧も当然だ。デジタル処理で御降臨されようが、『神様』は『神様』。お供え物も儀式も無しに不躾に呼び出す等、逆鱗に触れるのも当然。部長や先輩も含め、事の重大性を認識出来ていなかった。もっとも神職でもない、ただのエンジニア集団が、システムテストを其処まで神聖なものと捉える事は難しい。開発支援用AIも同様だ。そんな判断が出来るAI等、某シリーズの新作ゲームを製作する度に参拝する老舗ゲーム会社にしか無いに違いない。
もう一度深呼吸をする。未だに意識が空回っている様だ。圧はもう感じないが、慎重に振る舞わなければ。
【謝罪は受け取った。元よりお前は我が氏子の様なもの。此度の無礼は許そう】
靄の向こう側から信託が届く。これは音として現されたので、モニタ側にも届いた筈。
【そもそも儀式で呼び出された様なもの。今の世に合わせたやり方と思えば、驚きこそすれ、非礼と言う程の事もない】
祭神の言葉に安堵する。
【今風と言えば、もう少し言葉も変えるか。こんな感じか?先程から調整しているが、上手く行かん】
続いた言葉に、何処か風向きがおかしい事に気付く。
【それにしても、お前マジでビビり過ぎ。此方が驚いただけなのに怒ってると思うとか、まだ昔のトラウマ残ってるのか】
神様、昔この辺りでアイツと遊んでいた事を知ってるのか?いや、歴史を読み取って具現化されるなら、当然知っている筈。
【フム、そういう感じなのか。ならば、余計な事は言うまい】
あの神様、何かあると言ってる様なものですが?御勘弁願えませんか?それと、心が読める事とか驚きません。似た様な事例を知っているので。
色々と混乱してきたけど、最初に感じた生暖かい視線は、神様からだった事だけは理解しました。
読んでくれた方がいれば、ありがとうございました。




