閑話4 モニタリングしている二人 1
20分程遅れました。申し訳ありません。
1時間では書き終わりませんでした。
今回の閑話はモニタリングしている二人のうち、大江部長の事情を書いています。
前話のあらすじ:
テストという名の実験には成功したが、モニタリングしている側に同調出来なかった。
テスト担当である中原君をようやく迎え、テストという名の実験を行う事1ヶ月。
『今回の実験で、ようやく糸口が見えるかも知れない』そこまでたどり着く事が出来そうだ。
予定時間まで10分前、いつでも開始出来る様に準備した私(大江綾音)は、今回のプロジェクトの遅れについて、思いを馳せていた。
ヘッドハンティングを受けてから1年強。転職に伴う業務引継ぎの遅れにより、私がプロジェクトに合流出来たのは、予定の半年遅れとなってしまった。
『アイツが邪魔しなければ、もっと早く合流できたのに』心の中で、つい愚痴が零れる。
物事が予定通りに進まないのはよくある事、仕方ない事だ。だが『部下の転職が気に入らないから』と邪魔をする様な人間には、なりたくないものだ。まして、自社に影響が出るのも構わずに邪魔するような人間には。
『いつか思い知らせてやる』以前誓った事を再び強く心に刻む。私は両親から、『恩は倍返し、仇も倍返し、敵は滅殺』と子供の頃から教育されているのだ。敵と認識した相手に容赦するつもりはない。
もっとも、敵と認識した相手は今まで1人だけだが。
そんな理由で遅れた私だが、プロジェクトへの影響は大きかった。システムの核となる部分は、隣にいる彼女が元々開発していたモジュールだが、これが特殊で、他のシステム部分との連携が全くうまくいかなかった。
指揮官の合流が遅れた現場は、この対策に失敗したのだ。
本来ARシステムに対するノウハウがあるのだから、最初に連携部分へリソースを集中して山場を超えてしまえば、後は問題無く進む筈だった。だが、現実には別の選択を選んだ。
インシデントが発生した際、会社が最初にとった行動は『静観』。
なまじ開発実績があった事で、役員は現場に対策を一任(余計な口出しで、現場に混乱を起こさない為)し、現場は明確な対策を打ち出せなかった。
現場が対策を打ち出せなかった事には明確な要因がある。指揮官の不在だ。
元々いた管理職は会社合併を機に早期退職、その後任に私が就く筈が予定が半年遅れてしまった。
この半年間、中途半端な期間だった為手を拱いてしまい、対策が後回しとなった。
この時点でも上層部は楽観視していた。今までの実績を検討して買収した、もっと言えば今回のプロジェクトの為に会社そのものを買収したのだ。その開発力を疑う事は無かった。
だが、現場は違った。この時点では、担当者からの悲鳴は開発部署共通の問題となっていた。しかし、ここでも明確な対策を打ち出せない。リソースの集中を指示できる人間がいなかったからだ。
結局、私が合流して問題を把握・対策を指示するまで結果的に放置されてしまい、開発は半年間停滞した。
こうして、私の合流の遅れが開発の遅れとなり、そのまま彼、中原君の合流の遅れへと繋がった。
その事は本当に申し訳なく、私は着任早々、開発部の皆に謝罪した。皆は謝罪は不要だと言って私を受け入れてくれた。だが、中原君には未だ謝罪出来ていない。彼にはまだ、何も説明できていないからだ。いつか、全て説明して謝罪しなければならない。その為にも、先ずは今日を乗り切らなければ。
「皆、頑張っているし、今回うまく行けば、今月は長期休暇(お盆休暇)を取りましょう」
気分を切り替え、隣にいる彼女に話しかける。
彼女はシステムの中核を開発した、今回のプロジェクトの鍵となっている人物だ。そして、インシデントの渦中の人物の一人。幸いここの開発部はアイツの様なクズは居らず、直接彼女を責めるような者はいなかった。それでも周囲から隔意を感じた筈なのに、彼女はけして仕事を投げ出さなかった。あるいは、そんな彼女の態度があったから、周囲も彼女を責めなかったのかもしれない。
そして今日、この日を迎えた。開発部全体が、特に彼女ともう一人の渦中の人物、連携部分担当の竹崎さんが諦めずに努力した結果が形となろうとしている。その事が、素直に嬉しい。
私は『恩は倍返し、仇も倍返し、敵は滅殺』する。だから、頑張ってくれる皆の為にも、プロジェクトが成功する様に導く。そして、結果として皆に仇成した元上司は必ず潰す。
その後のテスト結果、中原君から報告とモニタの内容を確認し、
「今回の実験は成功よ。よくやってくれたわ、ありがとう」
彼に感謝の言葉を伝えるのだった。
大江部長に敵視されている人物は、彼女が嫌いで邪魔したわけではありません。
彼女を評価していた為、遅延工作による引き抜き相手側の翻意を狙いました。
彼女自身の翻意は難しいと考えていたからです。
ですが結局失敗してしまい、結果として自社と引き抜き先の両方に迷惑をかけ、彼女の敵意を買いました。
それがなければ、彼女から『敵』とまでは認定されませんでした。
彼女の設定として、大まかな所は以上となります。
読んでくれた方がいれば、ありがとうございました。




