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ほしめと×はねにえ

作者: ときのん

火華は実家に帰省していた。ほんとに、マジで、死ぬ程、実家が嫌いなのだが、年1回は顔を見せないと煩い親戚の為に毎年の今頃…夏休みとかお盆休みの時期に帰っているのだ。


火華の実家は山奥の神社にある為、周辺には都会のように遊ぶ場所も無ければ、四方八方森、森、森。といった感じの田舎である。たまに来る参拝客も神社の下のちょっとした集落のようなとこから来る人ばかりで……外からの客というのは見たことがない。顔見知りばかりでつまらない場所だ。


そんな中、珍しく。というか覚えている限りでは初めて、見知らぬ人が参拝に来た。顔の左半分を隠すような奇妙な面を付けている白装束?っぽい格好の女だ。右と左で紫と赤の別々の瞳が輝き、珍しいタイプの羽人なのかなと思いながらボーッと眺めていると、こちらに気づいてぺこりと会釈をしてきた。


「あの……すみません。参拝ってどうやるんですかね?」

「えっ……とぉ……」


急に参拝の仕方を聞かれて戸惑いつつ、靴を履いて縁側から女に近づく。


「態々すみません。参拝。初めてなんですよ」

「はぁ……珍しいですね。えーっとやり方は……」


隣に立って一つ一つの動作をゆっくり行う。彼女は動きを横目にゆっくりと真似して参拝を行う。参拝を終えるとありがとうと一言告げて、興味深そうに私の羽根を眺める。


彼女の身体は左右非対称というか、左右で身体の大きさに違いが見られる。明らかに左半身が右と比べて小さい。まるで全く体格の違う2人が1人になったかのような変な体躯だ。


彼女は自分に向けられている興味の視線に気づき、苦笑いをした。


「事故で身体が変な見た目になっちゃいまして……」

「なるほど……失礼ですけど、その格好だと神社に来るのも一苦労じゃないですか?」

「割と大変でした…………そもそも神社に来るのも初めてだったんでこんな階段長いのかぁ……って」


うちの神社はわりと山の高い位置にあるのでそれなりに階段を登らなければならない。アンバランスな身体では中々辛い場所だろう。


「参拝も初めてでしたっけ?」

「はい。私の妹の為……の参拝ですかね」

「妹の為?」


聞けば、彼女には妹が居るらしい。妹といつか色んな所を一緒に旅することを約束していたらしく、その旅の途中に神社に拠ったそうだ。今、この場に妹らしき人がいないということは神社の下にいるのだろうか?


「妹はここにいますよ」


ボソッと呟いた言葉を私は聞き取れなかったが、なんだか少し嬉しそうな笑顔を浮かべて、お礼を言って階段を下って行った。


……そういえば、左右の目の色が違うのはなんだったんだろう?オッドアイの動物なんていたかな……気が向いたら調べてみよう。




女は……レイは神社を降りて、適当な棒を拾って行き先を決めた。棒の倒れた方向へ宛もなく歩き始める。レイが生きていたのは、ただの奇跡だった。なんせほぼ左半身が吹き飛んでたのだから。寧ろなんで生きていたのか分からない。


ツギハギ……と言っても今は縫い目が残っている訳では無いが、音夢だったものと繋げたレイの身体はかなり歪で、如何に無理矢理繋げたかが分かる。


フラフラとする身体を杖で支えながら懐から取りだしたボロボロの日記帳を眺めてやる事を決める。何処に着くかも分からない道だし、日記帳通りに動ける訳では無いけど……


「まぁなんとかなるか」


先行きは不安だが……まぁ今更帰るとこもないし、引き返せない。レイはのんびりと適当な方向へ進むのだった。




「瓏さん、ねむちゃん連れてきて〜」


くまたろさんに言われて瓏がねむの部屋に行くとねむは机に突っ伏して何かを書いていた。なんとなく興味が湧いた瓏は後ろから手元を覗き込む。


簡素な日記帳にさらさらと絵や文字が書かれていくのが見えた。ねむは瓏に気づくと、日記帳を閉じて「何か用でもあった?」と質問する。


「いや、何書いてるのかなって思ってね」

「これはね、『やりたい事リスト』だよ。お姉ちゃんとやりたい事を書いてるんだよね〜……まぁお姉ちゃん。居ないんだけどねここに。いつかやる予定なんだ。このリスト」


そう言って日記帳の部分に大きなバッテンの付いた冊子を見せつけるように瓏の前に出して笑った。久々にこの子が笑ってるの見たなぁ……と思いながら…


「あ、そういえばくまたろさんが呼んでたよ」

「早く言って欲しかった」


ねむはササッと机の上を片付けて、瓏に向かって両手を広げる。瓏はハイハイと苦笑いしながはねむを持ち上げて部屋の外へ連れ出した。

もしも、ほしめとから帰ってきたレイさんが生きていたら……

もしも、ほしめとの世界とはねにえの世界が繋がっていたら……

という妄想で書いたものです。


まぁ、実際は即死だったのでこんな世界は存在しないのですが、レイさんも救われて欲しいなぁと思いますね。

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