それから
「おめでとうございます。三人目のご懐妊です」
「【アイアンクロー】はやめてえ!」
ライラにぎりぎりと頭を潰されるレヴィを見ながら、マリーは己の腹を撫でた。もう三回目だと言うのに喜ばしさは変わることがない。
「アタシは言ったな?マリーは体が小さいんだから無理させるなと言ったな?その脳みそに詰まってんのは藁か、カカシヤロー」
「カカシなら知恵はあるし!」
「うんうん。燃やす以外なら藁を詰め直せば元通り」
「一度でも折り目がついたら元には戻らないんだよ!?」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ兄妹を見ながら、マリーは今度の子の性別はどちらなのか考えていた。初めての息子となるか、三人目の娘となるか、今から楽しみである。
ライラはそんな呑気なマリーを見て、溜息をついた。
「前にも言ったけど、経産婦だからといって安全なわけじゃないよ。出産はいつだって命懸けだし、妊娠は何があるか解らない。母体の負担はそれだけ大きいんだ」
「解ってる。でも、それで諦められたら母親じゃないから」
こう言われてしまっては仕方がない。ライラは溜息を一つだけつき、定期検診の日程を組んだ。意気揚々と部屋を後にするマリーを見送り、未だ頭を擦るレヴィに問う。
「それで“転生したらドアマットヒロインと結婚しました!?”の主人公は、宣言通り子供に囲まれた訳だけど?」
レヴィはよく十年以上前の雑談を覚えてたな、とライラの記憶力に驚きながら答える。
「エンディングにはまだまだ」
「そう?」
「人生これからじゃん?」
そう言われると医者は「そうね」としか返すことしか出来なかった。
レヴィが部屋を出ると、娘達に囲まれているマリーがいた。
「ライラと何を話していたの?」
「物語の“幸せになりました”ていう一文は意外に重い、て話だよ」
人生が平坦であることなど有り得ない。大なり小なり、悲しいことや辛いことがある。それらを含めて、それでも良い人生だと思えるならば“幸せになりました”という結びを選ぶしかないのだろう。
「確かに、これから何があっても最後に幸せだったと言えたらいいね」
「僕はむしろ“これからが面白いのに!”て言ってみたいわ」
「それって誰?」
「アンパンのヒーローを生み出した人、94歳」
娘二人は作者に心当たりがあるらしく「最高に格好いい」「スケールが違う」と頷き合っていた。しっかりオルタムリジンの性質を受け継いでいる。
レヴィはからりと笑う。
「そういう人生になれるかは僕達次第だけどね。どんなに知識を持ってても、良い道具を生み出しても、お金があっても、幸せになれるとは限らないから」
「うん、努力しようね」
この物語はここで幕を閉じる。この先は語るべきではないだろう。もう舞台には虐げられた令嬢が居ないのだから。
ここまで読んでくださって有難うございます。有機野菜です。
この「虐げられ令嬢、知識チートな陰キャに嫁入りする。」について正直に告白します。プロットとか存在しないので、いつも話が二転三転しました!!!
説明文にもあるようにフワッフワな知識で書いているので詰めが甘く、しかもプロットも存在しないので矛盾だらけでさぞや読者の皆様は混乱したと思います。申し訳ない。
男爵はただのクズだったのに被害者になってるし、アンゼリカはアオイと結婚してるし、商人が黒幕になってるし、なにこれ???誰だよ、こんな意味分からない話を書いたやつ…私か…。
ちゃんとした設定の存在する話ではありませんでしたが、少しでも皆様に楽しんで頂けたなら幸いです。
沢山の評価、感想、誤字報告、ありがとうございました。ここまで読んでくださった全ての方に感謝いたします。