許可の線引き
レヴィは先日より進めている仕事を見返して、あることが気になった。様々な資料をひっくり返し、見比べては新しく描いた地図を何度も確認している。
「あの、なにか間違いが?」
マリーが恐る恐る尋ねてみれば、レヴィは慌ててブンブンと首を横に振る。
「間違いじゃないよ!このあたりの山が気になるなってだけ!」
「山、ですか?」
先程まで見ていた地図をいくつも広げ、更に様々な資料を広げていく。木々の様子や地層、伝承など報告書は多岐にわたる。それらを並べてマリーに見せた。
「このあたりは火山なんだろうなーって思ったんだ」
「火山?」
一体それはなんだろうと首を傾げるマリーに、レヴィは慌てて図を描いて説明し始めた。
「山って2種類あるんだ。山の中にマグマっていう熱い泥のようなものが流れているのが火山」
「どれぐらい熱いのですか?」
「千度、て言っても解らないよね。お肉なんて焼く前に炭になっちゃうぐらい!」
想像もできないほど熱い泥が流れているのだとマリーは驚く。レヴィはどう説明すれば解るか、精一杯考えながら口を開いた。専門的なことを早口で言うのは【オタク】の悪い癖なので抑えるよう注意する。
「熱い泥が流れている山と、そうでない山は違うのですか?」
「稀にこの熱い泥が山の外に出ちゃうことがあるんだ。それは災害になるから気をつけないとね。でも、普段は人間の生活を良くしてくれるものなんだよ。マグマの近くにある水はお湯になっちゃうんだけど、それを温泉っていうお風呂にすることもできるんだ」
「それは凄いですね。わざわざ沸かさなくてもいいなんて!」
レヴィをはじめ、オルタムリジンの血を引く者にとって温泉はとても馴染み深い。疲れが溜まれば温泉に入りたいと思う者も多いほどだ。オルタムリジンは温泉に謎なほど執着する傾向がある。
「陛下に報告して温泉を探してもらおうかな。見つけてもらえたら入りに行こうね」
「レヴィと温泉、ですか?」
マリーの言葉にレヴィはカッと顔を赤くする。ぶんぶんと両手を振って、そのつもりはなかったとアピールする。
「違っ!あの!そう!家族で!屋敷の皆と一緒に行けたらいいなっていうか!けして僕がマリーと温泉に入りたいって言ってるわけでは!いや、ごめんね【キモい】こと言ったよね僕はマリーにそういうことをしたい訳じゃないというか強いるつもりはないというか」
ぶんぶんと首を横に振るレヴィに、マリーは顔を赤くして俯いて
「私は、レヴィと入っても、いい、です、よ」
そうボソボソと言うので。
「ライラァァァァ!!!!」
【陰キャ】は妹に助けを求めるしかできなかった。おお、勇者よ。【ヘタれ】てしまうとは情けない!