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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とりあえず殺せば何とかなるって婆ちゃんが言ってた

よくある異世界召喚をされた。


クラス全体が召喚されて、その中に一人勇者がいて、王様に魔族が攻めてくるから魔王を倒してくれと懇願される、今時珍しくもないありふれた勇者召喚ものだった。


ちなみに、俺は暗殺者だった。影が薄いって言いたいのか、やかましいわ。


名前をよく覚えてないクラスの人間たちは、はしゃいでいる。特に二次オタどもは、はしゃぐを超えて興奮していた。最初はこれもよくある傀儡ものを疑っていたようだが、実際に魔法やスキルといった不思議パワーを前にして疑念は霧散したようだった。浅はかかもしれないが、気持ちはわかる。


俺は毒魔法と酸魔法の二種類を使うことが出来た。もうちょいなんかなかったのか、そんなに俺が憎いか。


そして、はしゃぎ疲れたのかクラスの人間は、皆それぞれ案内された部屋のベッドでぐっすりと眠っていた。警戒心0だな。


今、俺は客室を抜け出して城内を探索している。自分からしていることとはいえ、俺も寝たい。


暗殺者のスキル(足音とかを消せるやつ)を発動させながら歩き回っていると、案の定やたらと豪奢な扉を見つけた。王の寝室か執務室だろうか、騎士らしきごつい鎧を着た人間が二人立っている。…人間だよな?全く動かないから不安になるんだが。とりあえず、通気口から侵入することにした。ちょうど人が入れるくらいの大きさだった。警備大丈夫か?


光が見えてくると同時に、扉が開く音がする。誰かが正式なルートで入ってきたのだろう。邪道ルートの俺は息を潜めることにした。


入ってきたのは、勇者召喚をされた王の間にもいたお姫様だった。名前は忘れた。人の名前覚えられねぇんだよ。


「お父様、勇者様方は今お眠りになっていますわ」


実の父に話し掛けるにしては、やけに淡々と姫様が告げる。


「おお、そうか。くっくっく、所詮は子供よ。煽てればすぐに図に乗りおって」


おっと??雲行きが怪しくなってきた。


「わしらに利用されてると知らずにのう、暢気に寝ておるとは」


はい、確定。どう見てもただの傀儡ものです。本当にありがとうございました。


「宝物庫で勇者召喚の儀について記された書物を見た時は、バカバカしいと一周したものだが、戦争の道具としてならば有用だのう。使い物になるまでどのぐらいかかるかは書いておらんかったが、いざとなれば使い潰せばよい。あぁ、無能はダンジョン探索の先鋒隊にでもして、魔物の餌にしろ。良いな?」


こくり、と頷く暗い目をした姫様。にしても、こいつクズだな。俺もクズだが、流石にここまでじゃない。だから、下に降りて姫様の口をまず布で封じ、王様をさくっと普段から持ち歩いているサバイバルナイフで殺した。そしたら、首を振って暴れる怯えた姫様を刺し殺した。毒魔法は使えなかった。飲食物に混入させるにしても、紅茶を飲んでるのは王様だけだったし、毒霧を発生させるにしても、通気口にいた俺も死ぬ。一番手っ取り早いのがこれだった。どこを切ったり刺したりすれば簡単に死ぬか覚えるだけで、特別な技能は要らないし。


そういえば、何か王様を殺した後、姫様の目に光があったというか、そんな感じがした気がするんだけど。気のせいか。まぁいいや。任務完了、ミッションコンプリート。外の騎士たちも気づいてないようだし、さっさと死体処理終わらせよう。…本当に警備大丈夫か?心配になってきた。いや、それはいいんだよ。直ぐに意識が逸れるの本当に悪い癖だと思ってる。早く治したい。


ぶっちゃけ、暗殺した後、何が一番面倒かって、死体処理なんだよな。場所とか気ぃ使うし、埋めるのも焼くのも沈めるのもどれも疲れるし。空間魔法とかが使えれば収納して山奥にポイとか死蔵できたんだが、生憎俺が使えるのは毒魔法と酸魔法だ。ラインナップだけ見たらただの悪役だ。まぁ、クズだし間違ってはないんだけど。


あ、酸魔法なら溶かして終わりになったりしないかな。流石に凶悪過ぎてクラスの人間にも使えること話してないし、俺が犯人だってバレることも無いだろ。部屋ごと溶かせば痕跡はなくなるし。ついでに、俺も溶かされて殺されたことにすれば、いなくなっても不思議じゃない。持ち物まとめて、部屋溶かしてこよう。後、王様が主導してたぐらいだし、もしかしたら、騎士の中にも加担してたやつがいるかもしれない。探そう。


殺して、溶かして、処理して、城から出ていく準備が万端となったとき、一人の女騎士が現れた。あ、こいつも加担してたやつだな。殺そう。


「ま、待て!わた──」


何か言おうとしたようだが、構わず殺した。だが、失敗したな。少し声を出させてしまった。俺もまだまだだ。


死体を溶かそうとしたとき、倒れた死体から何かが落ちた。なんだこれ、手紙か?


『告訴状』


あっ、色々察した。内容を読むと、今まで加担してきた犯罪が事細かに記されており、加担してきた他の騎士や使用人たちの名前、そして自分は騎士を辞める旨が書かれていた。何の罪もない子供を誘拐してしまった、とも書かれていて、恐らくこれが俺達のことだろう。

王様に命令されて逆らえなかったとはいえ、犯罪を犯したのは事実だし、むしろこれで確証が取れた。つーか、これを最初に見つけてれば、資料とか漁る手間が省けたんじゃ…


……


……


……いや、考えても仕方ない。とりあえず溶かそう。そうだ溶かそう。溶かせば解決するんだ。きっと、そうなんだ。


よし、準備は終わった!途中ちょっと心が折れかける出来事があったような気もするが気のせいだな。うん!


この王国から出るのは確定しているが、どこに行こうか迷うな。殺した騎士から盗った地図には、面白そうな国がたくさんあった。


あーでも、この魔法王国ってのがよさそうだな。略して魔国。王様が言ってた魔族がいるらしい。行くか。割とあっさり行き先は決まった。


ちなみに、俺はこの後魔国の王、魔王様にスカウトされて、魔国の近衛騎士団長となる。『毒酸の騎士』という異名を貰ったが、仮にも魔王様の側近が、そんな邪悪な異名でいいのか。甚だ、疑問だ。

主人公

クズを見付けたら殺して解決しようとする。そこになんの激しい感情も無く、ただ「クズだ、殺そ」といった事務的な感情である。道徳心が無いわけではない。むしろありすぎてクズを見過ごせない。結果、殺す。クズを殺すことへの罪悪感はないが、倫理観は一応あるので、殺すことでしかクズを絶やせない自分のこともクズだと認識している。

国王に洗脳されてたお姫様ルートと犯罪に加担し罪悪感に苛まれる女騎士ルート、両方のフラグをバキバキに折った。

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