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短編とかその他

何度でもやり直して彼女に告白する男

作者: リィズ・ブランディシュカ



 とある学校の中、女生徒たちがうわさ話に興じていた。


「ねぇねぇ」


 よくある始まり方をしたその話は、すぐに忘れ去ってしまうものだ。


「人生をセーブする権利が、どこかのお店で取引されているらしいよ」


 その言葉に、別の女生徒が反応する。


「うっそだー。そんなのあるわけないよ」


「ほんとだってー」


「うそうそ。ありえないよ。そんなのに騙されるわけないじゃん。でも」


「でも?」


「本当にそんな事ができたら、何でもやりたい放題だよね」


 そこで、話は終わり。


 それ以上、広がることもひきずることもない。


 真実か定かではないものだから。


 かぎりなく嘘に近いものだから。


 しかし、時には、そんな嘘とされるものが現実に、存在することもあった。






――幻想百貨店――


 達筆な字で書かれた看板がある。


 そこは、人目にはめったにうつらない裏路地。


 ぼろ小屋のような店があった。


 その店から、男が一人出てきた。







 やったぞ!


 これで、何度もやり直しができる!


 かわいいあの子の心をつかみたい!


 けど、無理だとあきらめていたんだ。


 これで、何とかなるかもしれないんだ。


 なんて今日は、希望に満ちあふれた日なんだろう!


 バイトしてお金を貯めておいてよかった。


 今日、俺は苦労してその権利を購入したんだ。


 それは、なにか。


 人生をセーブする権利だ!


 都市伝説でささやかれてる程度で、昔は俺も信じてなかったんだけど。


 でも、どうしてもあの子とつきあいたくてさ。


 行くだけ行ってみるかって思ったんだよ。


 噂の店にな。


 そんで場所を調べて、ここを見つけたんだよ。


 路地裏にある幻想百貨店を!


 それでたった今。


 俺はその店に行って、権利を手に入れたんだ。


 人生をセーブする、その権利を。


 はぁ、これでもう大丈夫だ。


 失敗を恐れて、今までは何もできなかったけど、これなら勇気がでるぞ。


 どんなに高根の花でも、釣り合わなくても、きちんとプランを練れさえすれば、なんとかなるはず。


 さっそく告白だ。







 おかしいな。


 なんで、ダメなんだろう。


 何度もやりなおして、場所を変えたり、シチュエーションを変えたのに。


 どうして、受けてくれないんだろう。


 そう疑問に思っていたら。


「はっ初めてあった人とつきあえるわけないじゃないですかっ!」って彼女が怒り出してしまった。


 ああっ、まだ知り合ってなかった。


 失敗失敗。


 でも大丈夫。


 やり直せるから。


 今度は知り合ってから、告白しなくちゃな。






 んん?


 なんでだ?


 今度は手順を踏んでお友達からスタートしたのに。


 彼女は全然俺に振り向いてくれない。


 好きなアイドルとかユニットとかの話で近づいて、きっちり時間をかけて仲良くなったのに。


 何度告白してもうまくいかないんだ。


 色々な条件で試してみたのに、おかしいなぁ。


 このままじゃらちが明かないので、捨てる回で彼女に聞いてみた。


 そしたら「だって、そんな瞳孔開いて血走った目の人に告白されてもときめかないし」だって。


 おっと、しまった。


 意気込みが強すぎたらしい。


 今度は落ちついて告白しないとな。


 でも、そしたらまた玉砕。


 あれ?


 話が違うぞ?


 とにかくもう一度彼女に聞いてみよう。


 そしたら「成功して当然、みたいなドヤがおで告白されるのはちょっと」と言われてしまった。


 謙虚さがたりなかったか。


 毎回、次こそは絶対成功するって思いながら告ってたから、その影響だ。


 けれど、「あの、そんな演技めいた告白されてもときめかないので」とか「台本を読むみたいに言われても」とか言われてしまう。


 こっ、これは困ったぞ。


 何度も繰り返しちゃったからな。


 人生の一大事なのに慣れてしまったみたいだ。


 まずい。


 これはリセットできない。


 要するに心の持ちようが重要だからな。


 今さら最初の頃みたいに、どきどきしながら告白するってなっても、無理だよ。


 だって、失敗しても次があるし。


 やり直しがきくし。







 それからも俺は、様々なシチュエーションや方法を試して、彼女に告白してみた。


 けれど、彼女は繰り返せば繰り返すほど冷めた目になってくる。


 最近の告白なんて、何か言う前に「もういいです」って断られちゃったし。


 どうすれば、俺は彼女とつきあえるんだ!







 はぁ、最悪。


 私には好きな人がいる。


 せっかく特別な力を得てもらって、満足の行く方法でプロポーズしてもらおうと思ったのに。


 彼がその方法にたどり着いてくれるように、彼の部屋にしのびこんで、パソコンに幻想百貨店の噂が表示されるように細工をしたのに。


 ちっとも私の気持ちを分かってくれない。


 繰り返せる力を得た彼なら、きっとその答えにたどり着いてくれると思ったのにな。


 せっかく私も、繰り返される時を記憶する、なんて力を得たのに。


 残念。


 そうなってくるともう面倒くさくなってくるよね。


 百年の恋だって、百回も的外れなプロポーズをされたら覚めちゃう。


 この人、どうやったら私の事諦めてくれるんだろう。


 ねぇ、今失敗何度目?


 ひょっとして、私があなたを好きになる前にも巻き戻れる?


 めんどうだから、そうしてから私とのかかわりを絶って、恋をあきらめてほしいな。


 だって幻滅する前の私だったら、あなたと話し続けたら、絶対好きになると思うし。


「もういいです。私、アイドルの○○君みたいな人が好みなんで」


 性格は、悪くないのに惜しいなぁ。


 どうしてこの答えにたどりつかないの?


 私好みの顔になってから、告白しにきてよね。



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