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異世界に医者はいらない  作者: 技兎
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三代勢力


 新章突入

 前話から数ヶ月が経過しました。

 新たな物語と新たな展開が始まります!


 密猟 恐喝 詐欺 窃盗 奴隷 情報

 金を稼ぐ為、金に成るモノを掻き集める。

 三代勢力の中で最も幅広く事業を展開する。

 異国の主領(ドン)が支配する組織【金樹(ミダス)


 求心 助力 信仰 信者 洗脳 啓蒙

 巧みな話術と蛇の様な執着心。

 この組織に(せき)を置く者は裏の人間に限らない。

 異端の神を信仰する教会【ハーメルン】


 挑発 戦争 武器 傭兵 殺戮 虐殺

 世界で起きる戦争の発端はココにある。

 戦争を引き起こし、両陣営に手を貸す死の商人。

 (ただ)れた女傑(じょけつ)金字塔(きんじとう)の頂点【ローランド】



 裏社会を纏める三代勢力。

 完全なる無法地帯と化していた裏社会。

 それを各々が自身の利益の為、

 ルール有りの無法地帯に作り替えた。


 ルール。彼らにとって不利益な自由を規制した。

 無駄な争い、無許可の縄張り争い。

 言葉を交わさず、三者は暗黙の了解で定めた。

 そしてそれに下の者共は従順に従う。


 自分の頭で考え、己を律する。

 でなければ死よりも辛い拷問を受ける。

 見せしめに何人もの死体が街灯に吊された。

 苦悶の表情を晒しながら、

 死体が腐り落ちるまで誰も触れられなかった。


 あんな風になりたくない

 あんな風に死にたくない


 〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜


 何故、裏の勢力図の説明をしたか。

 メイド長ら一行はラグーンを離れ、

 三代勢力の一角がいる地域に訪れているからである。


「……ココはいつ来ても不愉快極まりない」


 付き添い人であるアーメット。

 普段着である兜はそのまま。

 旅用のフード付きのマントを着用している。


 普段は紳士的な彼が毒舌を吐く。

 この場所に着いてからずっとこうである。

 苛立ちを隠そうともしていない。


「スゥー……あ〜、そこかしこから血の匂いが。しかも何十、何百って数。人だけじゃない、獣や多種族の匂いも大地に染み付いてやがる。怖いね〜恐ろしいね〜」


 付き添い人二人目ガラプ。

 彼女は顔を隠す服装をしていない。

 素顔を晒し、肌面積の多い服を着ている。

 否、もはや服とすら呼べないボロボロの布服だ。


 異種族が街を練り歩くのは煙たがられる。

 だがこの街に限ってはそれがない。

 むしろオークというだけで防犯に繋がる。


「私もココには長居したくはありません。早々に用件を済まして出ましょう」


 一行を指揮しているのはメイド長。

 彼女だけは普段通りのままである。

 メイド服は外せない。

 ある意味この中で一番目を引く存在かもしれない。


 一行がこの街に訪れた理由。

 それはある問題を片付けるべく、

 諸事情で動けないネイヴの代行者として参上した。


「ようやくこの『でかい荷物』ともおさらばか。にしても、何が入ってんだあ? たまにチャポチャポ音は聞こえてるけどよ」


 ガラプの身長に届く程大きいキャリーケース。

 中身は贈り物としか二人は聞かされていない。

 二人、メイド長を除いた二名。

 彼女だけは中身の詳細を聞かされている。


 荷物の大きさと重要性から三人が抜擢された。

 キャリーケースの運搬をガラプが。

 鍵と説明役はメイド長。

 そしてアーメットは護衛と道案内を担当している。


「中身は私も知らされていないの。ネイヴ先生が言うには、相手に気持ちを伝える品だそうよ。ならきっといいものに違いないわ」


 メイド長は一貫して嘘をつき続けている。

 知っていると言わないのは、中身を言えないからである。


「『相手に気持ちを』……それを間に受けていいのやら」


「ん? どう言う事だ?」


「いや何、これから会いに行く相手のことを思うと、どうにもそのままの意味、とは考えられないと言うだけ。私の心が(ひね)くれているんですよ」


 ガラプは素直に受け入れる。

 アーメットは碌でもない物と確信していた。



 今回ココを訪れた理由。

 マネーが雇った襲撃者達の中に一人。

 二階へから侵入してきた男を覚えているだろうか。

 執事長に撃退された名前のない彼の事である。


 男は夢半ばで捕まった。

 その後屋敷の何処かに軟禁されていた。

 その後、『色々』あって男は吐露した。

 男曰く、侵入の目的はネイヴの情報の取得。

 漠然としているが、本当に漠然とした理由だった。


 ネイヴに関する情報であれば何でもいい。

 彼の出生から医者として名を()せるまでの情報は、

 名うての情報屋ですらキャッチできていないのだから。


 死者復活の仕組みに繋がる情報であれば尚良し。

 死んだ人間に会いたい人間は多い。

 ここ異世界であれば特にその価値は跳ね上がる。

 求める人間が多ければ多いほど、

 生み出される巨万の富は高く積み上がる。


 侵入して得たいモノは分かった。

 では次は雇い主は誰なのかと言う話題に移る。


 男は音の魔石で状況を録音していた。

 情報を売るのだからそれは理解できる。

 問題は録音が途中からだった事だ。


 〜〜〜〜 〜〜〜〜 〜〜〜〜 〜〜〜〜


「……扉の前に到着。コレから屋敷内へと侵入する」


 〜〜〜〜 〜〜〜〜 〜〜〜〜 〜〜〜〜


 窓から侵入し入ったのは手術室。

 男は素人で、中のある道具の用途は理解できなかっただろう。

 だが、理解できないからこそ録音するのではないか。

 ネイヴに関する情報に価値があるのであればなおさら、

 そういったものを詳細に話すのではないか。


 しかし男の魔石は内装を無視していた。

 いきなり部屋を出る扉から始まっていた。


 男への事情聴取は長期に及んだ。

 中々バックにいる黒幕を吐かなかった。

 無名ながらも、男は裏の人間だった。

 結局吐いたのは、最期の最期になった瞬間。

 死を懇願して全てを話した。


 ヴァネッサが旅路に出た数ヶ月後の話である。

 どれだけこの男が駄々を捏ねたか分かるだろう。

 穏便に済ませたかったが、野放しにもできない。

 粘り負けたネイヴが最後に非人道的な手段をとった。


「ココです」


「ココって……この寂れた酒場がか?」


 看板は傾き扉は両開きが片開きに。

 低俗な落書きに空瓶が転がり、

 残飯や糞尿に虫が(たか)っている。


 扉に手を置くと壊れ落ちる。

 その拍子に舞い上がる埃。

 そして何かが足元をカサカサとすり抜ける。


「汚っね汚っね。ここが本当に目的の場所なんかあ? こんな何もない場所に」


「くしゅん! ……こんな事なら、お屋敷からマスクを借りて来れば良かったです。鼻がむず()っがっ……イックシュン!」


 アーメットはバーカウンターの裏に回る。

 床に溜まった埃を手で払い除ける。

 手袋を外し、爪を這わせて何かを探した。


 何かとは突っかかりだった。

 突っかかりを見つけ、床を(めく)ろうとする。

 すると床の一部分が剥がれてレバーが現れた。


 そのレバーを引く。


「中央の床に取っ手が現れたはずです。ガラプさん、貴方の力でそれを引っ張り上げてください」


「任せとけい!」


 キャリーケースを壁に寄せ、取っ手を引っ張る。

 取っ手は太い鎖で繋がれていて、ガラプが力を込めて引っ張ると、厚い鉄扉が床から現れた。


「バーカウンター裏で誰かが引っ張り続けないと姿を隠す仕掛け。そして中央の取っ手は、相当な力持ちか数人がかりででしか開かない。この上なく面倒な仕掛けですね。大丈夫、ガラプ?」


「余裕余裕ッと!」


 掴む先を取っ手から太い鎖へ。

 そしてそのまま鉄扉を横から鷲掴みにする。

 それも片手で。


「それよかさ、さっきっから俺らを見てる連中は誰? なーんかチラチラこっちを見てるし……今も外から見てるよなあ!!!」


 ガラプの声に恐れをなしたのか。

 ドタドタと見苦しい音を立てながら退散していく。


「『今更』構っても仕方ありません。連中のことは気にせず、早く中に。いくら貴方がオークといえ、その掴み方は無理があるのでは」


「別に?」


「アーメット、彼女は最強よ。力関係で彼女を心配するのは無用よ。むしろ彼女の自信を刺激するわ」


 メイド長の忠告は遅かった。

 見せつける様に鷲掴みにした手に力を少し込める。

 すると厚い鉄扉が締められて薄くなってしまった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] いったいアーメットたち一行の目的はなんなのでしょう…そして勢力が崩れたとは…。なんだか危険な香りがしますね…一体どうなってしまうのか…すごく気になります!
2022/07/26 11:34 退会済み
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