雑魚に用無し
雑魚戦闘に時間はかけません。
一話で十分です。
雑兵相手では燃えません。
早く強い人を出したい。
喉仏を狙った打突。
呼吸を止め、武器を手放とし、膝を折らせ、
無防備な後頭部を晒させる優れた一撃。
「砕イッッ!」
何の変哲もない棒。
だが体重をかける位置やタイミング。
打ち込む部位によっては十分凶器足りえる。
後頭部に棒の先端が落ちる。
そして相手の意識も堕ちる。
アーメットの振るう棒術。
それは真夜中に現れた集団を
『確実に』『的確に』『迅速に』『着実に』
何より『丁寧に』無力化していく。
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武器を持っている相手は武が悪い。
女性を狙おう。
可憐でか弱い女性を人質にすれば
状況を一変出来る筈だ。
「そうぅらあ!!!」
女性だからといって
適当に狙いを定めたのは愚かだった。
相手はオーク。
二メートル越えで隆起した筋肉。
女性というにはあまりに男性的な彼女。
鈍な武器では跡すらつかない。
彼女にかかれば成人男性など
片手で持ち上げられる。
持ち上げられている。
首根っこを掴み、頭を下に向け
地面まで急転直下で落下とす。
下の地面が泥濘んでいて良かった。
首の骨が折れて死ぬ確率は、今はまだ五割程だ。
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もっと相手を選ぶべきだ。
女性という選択肢は悪くない。
今度は細身のメイドを狙おう。
手に武器も持っていない。
「お二人共、頑張って下さい。終わりましたら、温かいホットミルクでもご用意致しますので」
彼女は応援しかしていない。
呑気だ。
狙ってくださいと言わんばかりに。
二人を囲っている多を囮に、少人数でメイドの元へと走り寄る。
だが近付けば近付く程に
彼女との距離が遠のく感覚に襲われる。
原因は風だ。
メイドと間に突風が吹いている。
雨は真っ直ぐ落ちているというのに。
暴風で服も髪も後ろに靡く。
「チィ!!! こんな、風、くらい!!!!」
「……残念ですけど、時間切れです」
「何ふざけたことをっ?!」
時間は常に流れている。
手をこまねいている今も尚。
後から追いつくのは容易い。
風避けの前任者がいるから。
「失礼ッ!」
ガラプは二人の荒くれの間に顔を出す。
そして右腕は右の男の腰に回し、
反対の腕は同じく左の男の腰に回す。
本来ならこの技は一人用。
だがオークの桁違いの力と風が味方している。
だから可能だ【S・D・B・D】をするには。
「死ねゴラァ!!!!!!」
天高く飛び上がり、地面に叩きつける。
いつも以上に気合を入れて飛んだ。
そこに普段よりも一人分多い体重。
(跳躍力+風力)×重力
受け身なんぞ知らない不幸な二人は、
頭から地面に叩きつけられ、
首の骨に異常をきたす重傷を負った。
「コレで全員ですか?」
着実に仕事をこなすアーメット。
風で棒術が扱えず、素手での締めだったが、
何の支障もなく鎮圧してみせた。
「皆様、お疲れ様でした。それでは後始末の後、お風呂にでも入りましょうか」
「おーっす」
「了解です、メイド長」




