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流浪の魔女の娘  作者: 黒城詩音
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魔女の娘、魔法薬の勉強をする



「ヤシャがそんなことを言っていたのかい?」


「そうなの…お母様できる?」


お使いから帰ってから、ヤシャに頼まれた自分に魔法の適性があるかどうかを見てほしいというお願い事をお母様に伝える。お母様も一瞬考えはしたが、モーモー乳の瓶を片付けながら話し始めた。


「できるかといえば、できるよ。でもお前の時みたいにすぐは分からない。お前だって時間がかかっただろう?」


「そういえば…」


そう言って自分の時のことを思い出す。確かに一週間くらいかかった記憶がある。それも魔女の自分が一週間だった。普通の人間でも最低半年はかかるというから長期戦確実。


「もし、ヤシャに魔女だと打ち明けてもいいならうちに泊まり込みで面倒見てもいいよ」


「それしかないか…」


「あのご夫婦なら妙な偏見なんてなさそうだけれど、最悪村中に広がって引越しになる可能性はあるけどねぇ」


魔女という存在に関してあまりよく思われていないらしいことは前にお母様から聞いた。これがきっかけでもしかしたら…お母様はそんなことを思いながら今まで隠していたのだろう。娘でさえしらなかった。自分の場合はそもそも魔女のこともほかの家庭のこともしらなかったので普通の具合が分からなかったのも確かに多きい。


「お前は学校に行くからいいんだけどねぇ…帰ってくる場所が点々としていたら嫌だろう?」


「ヤシャ…お願いならかなえてあげたいけど。それも考えなきゃいけないんだね」


「そうだよ、魔女に対するヘイトがなくなるまではねぇ」


そう言って悲しそうな表情を浮かべるお母様にそもそもどうして魔女がこんな扱いを受けるようになったのかを聞こうとした矢先だった。聞けなかった。いままで見たことがないくらいに悲しそうな表情を浮かべてつらそうにしているのだから。いくら自分のこととはいえ、今は聞けなかった。

とりあえずは一度家に遊びに来てもらうことにして話を終わらせた。お母様なら最悪魔法で記憶を多少操れるらしい。本来ならばやってはいけないことらしいが、たぶん平気だろうという。明日にでもそれを伝えに行こうとお使いを頼まれた。


とはいっても、明日のお使いは村にある医者のもとにつくった薬を売りに行くというだけなのだが。

その帰りにかなり遠回りをして牧場によろうということになった。医者に売りに行くときにはお母様も珍しく村に降りていく。


「そういえばお母様って…魔法使いってことにしているの?」


「白魔導士だよ」


「白魔導士って?」


「治療や薬品を作ることに長けた魔導士さぁ。本来魔法使いは区別する言い方をしないんだけどねぇ…治療がとくいな魔法使いたちをそういうんだ」


「へぇ…そうなんだ」


「まぁ普通回復魔法のできる人族は、魔法使いの中でも少ないからねぇ。魔女なら当たり前のように使えるものを」


そう言いながら、大量の試験官に出来上がった薬を分けて淹れていく。量が多いので大きな寸胴の中に黄緑色した液体を注いでいく。試験管を次々に手渡していく。渡したものに薬品を加えていく。それが一通り終わり次第薬品をためている倉庫にそれを持っていく。


「イレーネ、面白いものを見せてあげるよ」


「なに?お母様」


「この試験管を見てごらん。何が違うのかわかるかい?」


そう言って取り出したのは試験管が十本ほど差し込まれているものだった。どれも薄い緑から真夏の森の葉っぱのように深いきれいな緑まで様々だった。共通していることといえばすべて緑色だということ。今作っているものと同じものは三番目に薄い緑色。


「濃さが違う…よね?」


「濃さが違う…そうだね、それが何につながると思う?」


「薬の効果が大きい…とか?」


「正解だよ、イレーネ。今作っているのは三等級のポーションだよ。等級は品質を表しているんだ。品質が高いものならそれだけ効果が大きい」


「じゃあ、この一番いいものを作らないの?」


「人族を装っている以上、最高品質が王宮で使えている専門の人で四等級なんだよ。普通の魔女でも最高品質は七等級まで」


「じゃあ、誰が一番いいものを作れるの?」


「魔族の中でも特に魔力の扱いに長けたごく一部の者さぁ。繊細な魔力の操作が必要だから八等級以降は伝説級といわれているんだよ」


「へぇ、なんでそれがうちにあるの?」


「私が魔国で一番の薬師だったからさぁ。お前のお母様は薬を作らせたら右に出るものはいなかったんだよ」


「そうなの?お母様すごい!!」


「そんな魔女の血を引いてるお前ならこの伝説級もいずれ作れるようになるかと思ってねぇ。見本にするためにいつか作っておいたんだよ。この間のマナ回復用のポーションもあるよ」


「みたい、みせてお母様!」


「こっちへおいで、イレーネや」


そう言ってこれからの私の勉強のために作っておいてくれた薬品を見学することになった。この間から薬を作るやり方を教えてもらっているが、実際にはまだ作ったことはない。どうしても必要な魔力の操作という課題をできるようにならなければ最下位級の一級でさえ完成しないのだそう。そして、魔法を使うことで一番大事なことは魔力の操作だという。

これをいかに繊細に、無駄なく、素早く行えるのかが本人の実力に関わってくるらしい。たまに何かを勘違いしている人もいるから気にしないようにと言われた。


「勘違い?」


「例えば…学術院の試験項目の欄に総魔力量っていう項目があるんだけれどねぇ。個人の持っている魔力を測るものだ。だけど、魔力が大きければ強いわけでもない。それに、魔力は鍛えられるから入学する子供に測らせても何にも役に立たない。まだ魔力に目覚めていない子供もいるからねぇ」


「へぇ…そうなんだ」


「魔法を発動させるには必要な魔力を必要なだけあればいいんだ」


「大きくこめたら強くなるわけではないの?」


「イレーネや、ペンとマッチ棒を浮かび上がらせたときの事を思い出してみるんだ。必要な魔力は違ったかい?その後岩を持ち上げたときに必要だった魔力は変わったかい?」


「…そういえば、あんまり変わらなかった気がする」


「お前が紙を浮かび上がらせたように、特別に操作が必要ならその分の魔力は必要だよ。でもね、浮かび上がらせるだけなら必要な魔力は変わらないんだよ。『創造と結果』のうちどんなことを魔力でやろうとしたかがかわっただけなんだ」


そう言ってお母様は説明が終わると薬品庫から出ていった。それを追いかけるように自分も外に出た。



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