あなたの手を離さない
どこにもいかないで
私のはじめてのお願いです
あなたとの時間が楽しすぎて
私はここに長居してしまったのです
あなたの旅立ちの日を
わかっていた筈なのだけれど
私はきっと目を背けたままだった
連れてって
そう言うことはどうしても出来なくて
私は泣きながら
あなたの手を握りしめていた
あなたとの別れの時がきて
私は微笑んだけど涙は止まらなかった
いかないで
心の中でだけ泣き叫ぶ
あなたはまた来るからと
そんな本当にならない約束を告げて
私から離れてゆく
遠ざかってゆくあなた
私はまたひとりに戻る
私はその夜
泣きながら眠って
幻のあなたと
夢の中でふたたび出会った
「ちくしょう…」
目覚めた私はそう呟く
腫れぼったい目をこすりながら
私は枕元の煙草に火をつけた