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入学式

前作品が終わる前に書いてしまいました、学園ファンタジーです。

読んで頂けると嬉しいです。

 



 火 水 氷 風 雷 鉄 光 闇


 土岩雲雪霙煙砂草花虫糸球人形菓子薬品熱湯溶岩隕石建物動物幽霊化物自動車電化製品エトセトラエトセトラエトセトラ……。


 中学生美術部員のスケッチブックの方が、まだ整合性があるだろう。

 思い付く限りの地球の持ち物を具現し、投げ合う子供の喧嘩を見下ろしていた叶雨かのうが、深い後悔を飲み干し立ち上がった。

 世界の全てが決まる戦いだと理解する程、己の異端に吐き気がこみ上げる。叶雨を除き誰もが真剣にふざけた物を作り、目前の相手に渡していた。渡し方は共通していて、どの贈り物にも殺意と使命感が籠っている。血走った目の後輩は被る猫を捨てて、ファンシーな熊を全力投球していた。受け取る側の奇声がこんな高い所まで響いている、気のせいだが。

叶雨が立つ崖の遥か下で、義務を果たそうとなりふり構わない人の戦意が立ち昇っていた。


 分かっている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()だ。


 汚れ裂けると分かっていて拘りを込めた制服の胸辺り、叶雨だけが装着を強制された通信機能付き身分証明書。機能と効力をどれだけ高く見積もっても、全く釣り合わない役割が課せられた地獄行片道切符。

 下から飛んできた流れ弾、否流れ靴を手で弾く。時速百二十は有りそうだった。


 空を仰げば青の美しさに癒される余地の無い、地上の乱闘とは一味違う戦いの舞台。高速の領域で交わされる死の軌跡が、風も雲も消し飛ばし無数の火花で絵を描く。


 前も上も下も右も左も、退却は許されない後ろも、叶雨にとっては生き止まりだ。命を餌に涎を垂らす敵を相手どって、切り開かなければ道は無い。

 みるみる降下するやる気ゲージを察した管制が、身分証明書のバッジから待ったを掛ける。


「〈作戦開始一分十五秒前、気分はどうかな?〉」

「最悪です、帰っていいですか?」

「〈作戦が終了したら打ち上げをしよう、君の大好きなシフォンケーキを用意しているよ〉」


 期待はしていないが、一蹴を通り越し本心を気にすら留めてくれない相手にストレスが溜まった。通信機の向こうから、多くの女性の腰を砕いた美声が続く。


「〈後五十五秒。作戦行動時刻三十秒前から衛星観測を開始します、実行班は準備を急いで下さい〉」


 唯一の特殊実行班である叶雨は、眼下の喧嘩を無視してその先を見た。肉眼で確認出来ない距離にある場所、能力を開放する前から叶雨は存在を確信する。

 派手な音に視線を下げれば、最前列で奮闘する戦友の存在。距離もあり姿が肉眼で見える訳もないが、広範囲で激しく暴れる銀色は間違いなく友のそれだろう。その暴虐を補助する影を僅かに捉えながらも、己の役目の為断腸の思いで未練を断ち切った。

 ネクタイを掴み、生きて帰る事だけに心を注ぐ。


「〈四十秒〉」


 瞬間、敵地の景色が歪んだ。肌が泡立つ感覚に、体が()を開放した。


「〈三十五秒〉」

「敵が動いた、作戦を前倒しする!」

「〈え?ちょっと待って!援護車両がまだ予定位置に!?ああもう!衛星との信号正常、位置情報確認!観測映像問題無し!〉」


 周囲の空間が軋む。見えない場所から届く力と、叶雨の力がひしめいた音だ。無色無臭の押し競饅頭に、戦場が動揺の声を零した。

 心の臓が呼応して、大きく小さく身を捻る。ポンプした血潮の熱、軋みだす骨の悲鳴。皮膚から、全身から立ち昇る力の揺らぎは、叶雨の視界と世界を■■く染めた。

 上下左右で投げ合っていたソレとは別次元の力同士、純粋な力比べに叶雨は笑いを抑えきれなかった。

 不利である事勝率が低い事、些細な焦燥だと投げ捨て、一歩を踏み出す。


 やっとあの同族ひとに会いに行ける。


 肉眼を放棄し、()がその姿を目視した。見慣れない古の部族染みた、コスプレとも表現できる服装。叶雨の周囲に集約する力と押し合える出力を補助し、纏った者の自我を闇に溶かしている。

 背中まである艶の無い黒髪は、最後に触れた時より長くなっていた。前髪の影から覗く赤い眼光が、敵意のみで叶雨を刺す。


「―――撃滅する―――」


 変わり果てた姿に何も感じない訳ではない。芽生えたのは、歓喜だ。

 独りぼっちだと思っていた世界に、初めて同じ種族が誕生した。同族意識とは、家族愛と同種である。

 同類を殺せと言われても、異常者と罵られても。


 この(ちから)に勝る喜びは、世界に認知されなくとも構わないのだ。



 世界に亀裂が入った。























 ― ― ―






















 思春期の玩具箱をひっくり返した光景に、学校を間違えたと叶雨は後悔した。


 港から来た迎えのバスに揺られ五分、窓から見えた光景だけでこの島の歪さが分かる。その中心にして原因の学校に着いてみれば、ご覧の出迎えに殆どの新入生は口を閉じれなかった。

 これから三年はお世話になる国立賦力第三高等学校の門を潜り、校舎までの長い歓迎を全身に浴びせられる。新入生が二列で何とか通れる隙間を残し、道には知っている物から物か分からない物まで好き勝手に並べられていた。横からは風に乗った桜の花びらが、言葉を模り歓迎の意を示す。桜に限らない数多の方法で示される出迎えの声無き声で、ようやく入学式の一環なのだと前方の生徒が歩幅を戻した。


 行進の淀みが無くなったと思えば、目の前の停止した背中に鼻をぶつけそうになる。背中の向こうには趣味が良いとは口が裂けても言えない、光り輝くシンデレラ城が新入生を待っていた。この島の家全てから電灯を借りても足りない電気の暴力は、色と光量を明滅させこちらを手招きする。

 泥棒にでも入るような忍び足で先頭の新入生が進んで行き、続く同級生の後ろで静かに着いて行った。眩しさに閉じていた目を開けば、門の先には巨大な普通の校舎が在る。

 最新技術を組み込まれた綺麗な校舎だが、目に痛いファンタジー城の中とは思えない。前方生徒の視線を追って振り向けば、通ったばかりの道に上を見ながらゆっくり歩く後続の姿。叶雨達が数秒前に居た方向からしか可視化されない幻、夢と勘違いする展示物の出迎えに興奮を覚えて仕方がなかった。

 大半が同意見なのだろう、校舎に進む足が速度を上げていく。自分にも同じ事が出来るかもしれない、そんな夢を見させてくれる学校に叶雨達は入学するのだ。



 普通の高校とは比較にならない広さの体育館で、二種類どちらかの服を着た生徒が約六十人、用意された椅子に落ち着きなく座っていた。隣に座る男子の貧乏ゆすりを無視する為、自身の恰好の確認を行う。

 ダークブルーのブレザーに指定のネクタイは青みがかった黒でブラウスは白、その全てに第三高校の校章が刺繍されていた。肘上辺りのブレザーに縫い付けられたベルトは、袖を捲り固定する配慮が施されている。性を意識させる下半身の衣服は男子がスラックス、女子は膝上五㎝丈のプリーツスカートだ。タイツかレギンスで迷ったが、適当な厚さを考えるのが面倒で後者を履いている。

 女子用制服の細かい皺を伸ばし、ステージに上がる誰かを待っていた。


「なあ、お前どっから来た?」


 右を見ると貧乏ゆすりを止めて口を動かし出した、声が固い男子生徒。隣で同じ学校の制服を着ているのだ、当然新入生。緊張する気持ちは分かった。解きほぐしに協力する。


「混じりっ気無しの日本国民。アジアンに見えた?そっちはミックスしてるみたいだけど」

「やっぱ分かる?母親がロシアでさ、日本語しか喋れないのに外国の観光客に話し掛けられてまいるぜ。どうすれば良いと思う?」

「大和男児って書いた名札でも付ければ?」


 頭一つ高い位置から見下ろされて落ち着かない気持ちが募る。銀髪男子の目が丸くなり驚きを露わにすれば、年相応の印象に変化した。

 顔が整ってる異性を見ると、無条件に失礼な言葉が出てしまう。直さなければ、ボッチは嫌だ。


「……髪染めろ以外を言われたのは、初めてだ」

「それはちょっと、勿体ないと思っただけ」

「お前、面白い奴だな」

「お前、は止めて。紅雫こうだ叶雨」

力富りきと・シルヴァーだ、よろしくな」


 力富は青い瞳を輝かせ片手を振った、顔面レベルが高いとさまになる。反対の席には何故声を掛けないか気になったが、どうやら寝ているらしい。入学式で眠れる猛者に、力富も敬遠を禁じえなかったのだろう。


 体育館の隅まで響く、高いヒール音。お喋りが重なり雑音となっていた叶雨ら新入生のざわめきは、一瞬で沈黙した。壇上の脇から美しく波立った金髪を泳がせ、少女はマイクの前で足を止める。髪一筋も乱れを許さない動作に、誰かが唾を飲み込んだ。


「新入生の皆様、私は今年の上半期生徒会長を務めます。三年一組、ヴィリアーレ・キャメロンと申します。細かい学校案内は教師の方々にお任せし、この場では僅かながら年長者としての責務を果たす所存です」


 我の強い印象の見た目とは裏腹に、優しい滑り出し。何人かの肩が柔らかくなる中、力富側とは反対の席の女子生徒は今にも立ち上がりそうな程興奮していた。


「私から出来る助言はそう難しくありません、新入生の皆様、どうか()()()()()()()()()()()


 言葉の真意を読み取れず、困惑が空気に濃く混じる。


「今期新入生六十二人、これまでの記録から考えると最低でもこの中の十人は、卒業式を迎えられないでしょう」


 六人に一人は退学する、確信している宣言に叶雨は唇を固く結ぶ。凍り付いた空気は皮膚に張り付き、呼吸を阻害した。後ろの生徒の息が荒くなるのが聞こえてくる。


「理由は様々でしょうが、強制でも自主的にでも皆様は何も気にする必要はありません。ただこの超越世界に触れられる才能が無かっただけの事。才能の無い人間など、掃いて捨てる程存在しているのですから!だからどうか気を落とさず、別の道を模索なさって下さい!」


 自分達がどんな顔をして彼女の瞳を見つめているか、母性すら宿す彼女にしか分からないだろう。本心からの言葉だと判断する材料は無いが、嘘だと言い切れる根拠も無い。


「まずは一年。己の分相応を見極め、そうしてまたその椅子に座っている者がいるなら、今度こそ貴方達を心から歓迎致しましょう!今の二年生が、ですけれど……。それでは何かご質問等は御座いますか?」

「はいっ!!」


 この緊迫した空気を吸っていないような反応で、隣の女子生徒が一拍と置かず手を上げた。勿論速度を重視する意味は無かった、少女以外疑問が生まれる心の余裕を持った新入生はいないのだから。


「元気ですね、どうぞ質問なさって」

「はい!生徒会長さんの銀賦ぎんふはどんなものですか!?」


 銀賦。別の緊張が体育館を占める。そんな変化もまるで眼中に無いのだろう、女子生徒は本物と見紛う金の瞳を壇上から外さなかった。

 生徒会長の表情はピクリともしないが、返答には逡巡し時を要した。


「……ふふ。新入生さん、お名前は?」

ロウ林杏リンシンです!」

「そう、面白い子ね狼ちゃん」


 面白いと人に言うのが、最近の流行なのだろうか。

 生徒会長は口角を高くして、何かを撫でるように手を動かした。日常の動作とはかけ離れた、意図ある仕草。頭上に出現した光源に意識を奪われ、生徒会長の呟きを聞き逃した。



「舞いなさい〝Seven()()Star()〟」



 星空から切り取った流れ星が、思い思いの軌道を描き宙に舞っている。一しきり飛んで満足すれば、静かに叶雨ら新入生の手元へ流れ落ちた。両手の受け皿に触れ跡形も無く弾け飛んだ光、残ったのはローマ数字が二つ並んだバッジである。

 校門外から続いていた異様な展示物を思い出させる、()()では考えられない現象。


 これが『銀賦』。


「右の胸ポケットに装着して下さい。無い者には教師から注意、又は罰則が科せられます。右の数字が学年左の数字がクラスとなっていますので、私の退場後壁の案内に従い行動なさいませ。時間までに己の判断で着席する事も出来ない者には、容赦なく退学勧告が下るでしょう。先程の希望についてはこれで大丈夫かしら、狼ちゃん?」

「はい!ありがとうございました!」


 怯える後輩を脅しながらも、疑問には優しく答えた。よく分からない先輩である、あんな人ばかりなら今後の学校生活はとても薔薇色にはならないだろう。

 叶雨の問題も含めれば、少しも油断できない三年間になりそうだ。


 完璧な礼をもって、ヴィリアーレ・キャメロンの宣言は終了した。


「以上、生徒会長挨拶とさせていただきます。改めて皆様、御入学おめでとう御座います」




 一年一組、他の教室はまだ分からないが普通の学校と大差は無かった。机をくっ付ければ倍の人数勉強できそうな広さ、黒板は何の素材か岩を平らにしたように見える。机は引き出し部分が無く、それ以外は椅子と同じ木製だ。

 金属部分が全く見当たらないが、この学校の存在理由を知っているなら疑心は湧かない。


「紅雫!同じクラスだな!」

「そうだね」


 最後列で一つ席を挟んだ場所から、教室直前まで一緒だった力富の手が振られる。二人の間にいる生徒が突っ伏して寝ているので話しやすいが、教室の誰も席を立って会話をしていなかった。生徒会長の言葉が新入生を席に縫い留めているのだ、そんな中で席を立とうとは叶雨も力富も考えない。


「こいつさっきも俺の横で寝てた奴……だと思う。どんな神経してんだ?」

「アルミニウム合金なんじゃない?それより、来たよ」


 叶雨の返答に息を吹いたのも束の間、教師の出現に力富は背筋を伸ばす。張り詰めた緊張に、誰一人常識通りではいかないと理解している事を知れた。脅すような入学式は決して無駄ではなく、油断さえ無ければ大丈夫だと、次の瞬間まで信じていた。

 グレーのスーツを着た髭の男性、教師だろうが身なりは少々雑である。


「一組担任の空武式からぶしきだ。これから放送で名前を呼ばれた者は生徒会長挨拶があった第一体育館に行け、最終入学試験を行う」

「はあ!!?」


 男子生徒の一人が上げた声は、この場にいる全員の胸中と同期していた。


「どういう事ですか!?試験を通ったから学校ここに入ったんですよ!?」

「そうか、後一回頑張れ。試験を終えた奴から試験内容を聞いたら即退学だ、生徒手帳を貰った奴から今日は帰れ。食堂の行き方は石板横に書いてある。以上、解散」

「ちょっ先生!?」


 最低限を告げると、空武式はダルそうに背を丸めて扉を潜った。衝撃発言で気付くのが遅れたが、二mに届く身長だ。背筋を伸ばせば頭をぶつけていただろう。的外れの納得に意識を割き、机を叩かれるまで反応出来なかった。


「おい試験だってよ!何だろうなあ!」


 力富の興奮を隠せない表情が、心臓の早鐘を緩やかに戻してくれる。周りとは噛み合わない笑顔に、叶雨の心は救われた。名前を呼ばれた一人目が、真っ青な顔色で人生の岐路に赴く。


「―――楽しそうだね、余裕?」

「ちっげえよ。何やんのか知らんのに、不安もクソもねえだろ?」

「大物だ。けどその口調、人を選ぶから気を付けなよ?」

「そっちこそ、挑発気味なのは根っからか?顔が強張ってるぜ、試験でミスるなよ」


 手の震えを固い握拳で抑え、頬の肉を無理矢理目の下に集める。強がりとばれても構わない、強く在ろうと意地を張れない奴はこの学校では生き残れない。

 特に叶雨は大きな問題を抱えている。弱気も不安も、笑って隠せる位の肝っ玉が必要不可欠なのだ。


 〈一年一組、力富・シルヴァー。三分以内に試験会場へ来なさい〉


 十人と終わっていないタイミングで、力富の名が呼ばれた。多国籍な学校だからか五十音順ではない、何か法則性はあるのだろうか。

 親指を立てて扉を開ける姿に、何人かの女子が高い声を出した。イケメンめ。


 教室に一人目が帰って来た。最初に呼ばれた生徒がいつまでも来ない所を見ると、教室に戻るような指示は出ていないのだろう。

 注目されていると自覚出来ない程、戻って来た生徒は憔悴していた。顔を下に伏せ、覚束ない足運びが縺れる。後ろの扉から戻って来て叶雨の近い場所でこけた生徒、咄嗟に駆け寄った。


「大丈夫!?先生を―――!」

「―――く」

「え?」

「はやく、早く探さないと。私の星私だけの力の形、退学は嫌だ退学になりたくない退学はお母さん南君ごめんなさい、大丈夫私は出来る出来る出来るできるできる、嫌!退学だけは……!」


 正気を失いかけている。保健室に連れて行こうと肩に触れた時、叶雨の手との間に視認不可能な静電気が走った。電気と言っているが実際は違う、正しい名前は叶雨も知らない。

 コンマ数秒の叶雨の思考停止を、不自然に思った者はいなかった。


 〈一年一組、紅雫叶雨。三分以内に試験会場へ来なさい〉

「!誰かこの人頼む!呼ばれたから行かないと!」


 試験への不安が時間経過で和らいだのか、数人の親切なクラスメイトが応えてくれる。案内に描かれた保健室へ運ぶ後ろ姿を一瞥し、早足で体育館へ向かう。緊張は有るが、不安はかなり薄れた。

 貴重な情報提供者である女子生徒の無事を祈り、足を掛けた階段の先からその男は現れる。


「力富……」

「よお!」


 試験前と何も変わらない表情だ。自信が有るのか深い意味は無いのか、叶雨に向く瞳に心配の光は無い。出会って数分の相手には過ぎる信頼が、上げたままの手に込められていた。ならば。

 結果は聞かず、力富と同じ方の手を上げて精一杯応えた。


 パンッ!

「待ってるぜ!」

「食堂の席でも取っといて」


 衝撃で生まれた痺れが手を震わせる。あのハイタッチの瞬間に走った電気が、叶雨の脳内でアドレナリンを分泌させた。電気が伝えた情報と興奮に、叶雨の心は躍る。

 そうだ。こんな序盤も序盤でこけるようなら、紅雫叶雨という人間はこの世界で生きられない。

 無表情の上級生が開いた扉の先、三人の大人が待っていた。


 そして入学を果たす。

 同類との出会いは確定した。




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