そういえばそんなゲームてしたね…
「やっと皆に…追いついた…!」
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ネーム:ニナ
レベル:35
ジョブ:黒魔術師
ステータス:VIT:0 STR:0 INT:45 DEX:0 MND:0 DEF:0
スキル:【初級魔法】フレイムボール アイシクルパイク エレキショック エアブラスト
【中級魔法】ライトニングレイ ハイサークル
パッシブスキル:マナチャージEX
混合魔法作成
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レベリング方法はもちろんPKだ。
というよりこの辺り一帯の適正レベルは1~20。
始まりの街なのだから当然そこまで強くはなく、上位ジョブになる前にほとんどのプレイヤーは次へと向かう。
しかし四人は僅か三日で、適正レベルを軽々と超えた。
通常ならレベル20に到達するには真っ当な手段でどんなに早くても二週間と言われている。
真っ当な手段、ならだが。
当然、真っ当な手段ではない。
「お金もレベルももうこの街じゃきついかもな。どうするよ」
正門広場のすぐ近く、プレイヤーが経営している落ち着いた外観のカフェ。
ゆるふわな美人お姉さんが開いているという事もあり様々な常連客が多く利用するカフェだ。
そこのオープンテラスで今後の方針について話し合いをしていた。
「というかもう適正レベルぶっちぎっちゃったし次いこ~よ!」
「そうですね、というよりこの街で少々やりすぎたのか掲示板で叩かれまくってますしね。そろそろ次の街に乗り出しましょうか」
四人の悪評は今や留まるところを知らず、生産ジョブの人間までにも知れ渡っていた。
今もこうしてテラス席に座っているだけで刺すような視線が集まっている。
気にしない四人だが居心地がいいとも感じてはないようだ。
「その前に…幻珠…取らないと…?」
「「「あっ」」」
レベリングと金策ばかり考えていたせいで趣旨をすっかり忘れていた三人。
『そんな設定だったなそういえば』『すっかり忘れてた…』『不覚です…』と反省する三人。
「よし、じゃあパパっと第一の幻珠取りますか」
「「「おー」」」
向かった先は第一の幻珠がある『奈落の魔窟』。
全10階層の造りなっており第10層にボスがいるとのこと。
獣系のモンスターが多くポップするこのダンジョンでは素早い敵が多く、攻略のカギと言われているのがTTK(Time to kill)だ。
TTKを上げようとすれば簡単な方法は三つ。
『レベルを上げる』『装備を強くする』『人数を増やす』だ。
そういった観点から攻略適正レベルは20、人数は六人以上とされており一番初めのダンジョンとしてはかなり高難易度だ。
しかしオーバーレベルの上に一日でデュエル410勝するプレイヤー達にとってTTKなんてのはあってないようなものだった。
というかさっきからラディーがひたすらに一人で暴れているだけで他三人は他愛無い会話をしながら歩いているだけの状況だ。
「た~のし~!縮地さいこー!アハハハハハ!」
水晶と岩で作られている通路を縦横無尽に跳ねまわり弱点部位を性格に攻撃していく様は『戦闘』ではなく『蹂躙』だった。
響くのはラディーの笑い声とモンスターの叫び声のみ。
「『口寄せ!』やっちゃえシロちゃん!」
マナを消費し使い魔を呼び出す『口寄せ』と自身の斬撃で惨殺を繰り返す。
ちなみに白いイタチが使い魔なため安直に『シロちゃん』という命名らしい。
『口寄せ』や『召喚術師』など、の使い魔は基本は『プレイヤーのステータス依存』で強さが決まる。
火力全振りのラディーの使い魔、当然火力が以上に高く設定させられていた。
「ぬっ…!この虹色の水晶…指定作成装備に使う…」
暴れるラディー、採取に勤しむニナ。ニナに命令されるがまま付き合わされる残り二人。
攻略というよりピクニックでもしに来たような一同だった。
そして第10層に到達した一行だったが体力が削られるどころか(ラディー以外)マナすら消費していない完全状態だ。
「おー仰々しい扉だな」
左右には骸骨が描かれ互いに手を伸ばし抱き合っているような装飾が施されていた。
「んじゃ、サクっと終わらせて次行きましょうか」
ボス前なのに緊張感の欠片もない一行。
そして扉を開き、ボスの見た瞬間一行は更に緊張感を削がれた。
青い巨躯に一本角。髪は生えておらず鋭い目つきのボスだった。
「おしいな…」
「デカいこん棒持ってたら…」
「一つ目じゃないのか~おしいね」
「痛恨の…一撃…!」
その某人気シリーズのモンスターそっくりな容姿のボスが口を開く。
『汝ら我が所有する幻珠欲するなれば、この上位悪魔ギラマンテスを討ち果たして見せよ!』
「うわ名前まで近いぞ」
「運営狙ってるのかな…」
「つかあのモンスターにそっくりなのに態度が面白すぎる!」
「もういっそ…名前変えてこん棒持たない…?」
『なんぞ貴様ら失礼な事を考えておるな?」
「「「「いえ、全然」」」」
「っともう十分面白がったしいい加減倒すか」
「「「賛成!」」」
最初に動いたのはガリル。
『武装変換』でスナイパーを呼び出し構える。
そして道中空撃ちし続けて貯めておいた『バーストショット』を放つ。
見事にヘッドショットが決まるが怯んだだけで決定打にはなっていない。
奈落の魔窟のボスの特徴はその巨大な体から放たれる殴打による一撃の重さと連打。
相手のスキル数こそ通常攻撃と回復薬や遠距離担当のプレイヤー潰しのための『空弾』のみ。
しかし盾役一人で基本持たないため、二人三人と増やし攻略するのが推奨されているボスだ。
そのため火力役が不足しがちになるため早いパーティーでも討伐タイムはおおよそ『十分』。
そんな相手に四人は盾なしで挑まなければいけない。
ガリルの『バーストショット』の次に動いたのはラディーだ。
一直線にボスへと駆けていくがそれを見逃すボスではない。
上段から振り下ろされる巨大な拳、地面砕き轟音を響かせるがそれを難なく左に体を捻り避けながら三閃、すべてに『見切り』が発動し『乱翼双剣』によるバフも乗っている。そしてすぐさま足元まで駆け寄り乱舞の如き連撃を叩きこむ。
それを嫌がるボスは自分の足元に対し『空弾』を放とうとするが。
『パワーショット』
『ライトニングレイ』
ニナとガリルによる的確なヘッドショットにより中断を余儀なくされる。
そして状況を把握、敵の分析をあらかた終えたレイも行動に移す。
「お二人はそのまま遠距離攻撃を潰し続けてください。私は前線でラディーに向けられた殴打を潰します。」
「「おっけー」」
ざっくりとした作戦しか立てずラディーと合流しに駆け出すレイ。
「ラディー!こちらに走ってきてください!」
唐突に足元で狂喜乱舞していたラディーを呼び戻した。
全力疾走でこちらに向かってくるレイを目視したラディーはおおよその狙いを把握しレイの言う事に従う。
互いの距離がある程度近づいたその瞬間、体を捻りながら地を蹴り事もあろうかラディーに向けて猛烈な蹴りを放つ。
それを察していたラディーは宙で一回転。足をたたみレイの蹴りを足場に矢のような大跳躍。
撃ち落とさんと放たれる殴打を紙一重で避け『見切り』を乗せ首元を一閃、『縮地』により壁へ着地しそのままボスへ再びの突貫。
それを『空弾』で落とそうとするがそれが許されるわけもない。
『空弾』がダメならとその拳をラディーに向けて振るう。
が、しかし足元を駆け上がり割って入ったレイの『剛拳』によりはじかれ態勢を崩す。
首元から肩へ、そのまま腹へと自身の体全てを縦に回転させ両の剣で何十閃かもわからない見切りが発動した超連撃を繰り出す。
そして着地と同時、ボスの絶叫と目を回したラディーの転倒音が重なり勝利を確信する。
『見事ッ!この上位悪魔である我を倒すとは!褒美にこの奈落の幻珠をくれてやる!』
と仰々しいことを言いながら某モンスターにそっくりな上位悪魔はその場で粒子となり消えていった。
「弱いな」
「想像の数倍弱かったですね」
「つまんな~い」
「歯ごたえ…ぜろ…」
討伐タイムは二分半というレベルがオーバーキル気味ではあったがとんでもないタイムで奈落の魔窟攻略は終わった。
そのまま一行はダンジョンから出るためのワープポータルに入り次の街へと向かった。
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一方その頃四人に恨みを持つ掲示板。
【PK魔の被害者の会】ではこんな会話がされていた。
『あいつらが奈落の魔窟入ってくの見たけどこの街から消えるっぽいぞ』
『マジかよ。まだ報復出来てねえんだけど』
『まあもうこれでPKされることもない…のか…?』
『つか次向かうってなったらさ、あのギルドがあいつらに制裁加えてくれるんじゃね?』
『ああ~確かにな、マジあいつら痛い目見てほしいわ』
『いや俺はガリルの野郎だけ制裁されて欲しいわ。レイ様万歳!』
『はいはいドM乙』
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そんな悪評とは裏腹に四人のボス攻略を見ていた者達がいた。
ボスに挑戦しているパーティーがいるときは扉が開きっぱなしになっており、他プレイヤーが入れないよう結界が貼られる。
その結界越しから盾無しの四人パーティー、しかも昨今悪い意味で有名なプレイヤー達の戦闘とあって録画機能を使い動画投稿サイトにアップロードしたものがいた。
『は?盾無しは頭おかしいだろ、つか動画の三分ないからまさかとは思ったけど…』
『戦闘開始から二分ちょっとで倒しててやべえな。俺六人で挑んで十五分かかったぞ』
『全員火力ジョブでもヤバすぎ、PKされてあいつら嫌いだけど腕はガチだな』
徐々に四人の実力が広まりだしたのだった。