腹黒ドS清楚系美人による悪魔の金策
レイという少女は本当に有能だ。
「レベル皆さんいくつですか?私18です」
「俺は20」
「うち…19…」
「あたしも20だよ!」
ふむふむと頷きながら何かを考え込む。
おそらくまたろくでもない作戦だろう。
「次はお金を稼ぎましょう!」
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街の噴水広場には巨大な掲示板がある。
そこではパーティーメンバーを募ったり、ギルド設立メンバーを探したりと様々な用途で使われる。
そしてそこに不穏な張り紙が一枚。
デュエル対戦相手求
挑戦者勝利条件 募集主勝利条件
・3分以内に相手に攻撃をあてる ・3分間攻撃に被弾しいない
・挑戦者の体力を全損させる
挑戦者敗北条件 募集主敗北条件
・3分間攻撃ヒット0 ・3分以内に攻撃に被弾
・挑戦者の体力全損
・募集主が敗北した際には50万ギルの支払い
・挑戦者が敗北した際には2万ギルの支払い
挑戦希望の方は西門前までお越しください。
P,S PKされた鬱憤を晴らせるかも?
「これで良しっと」
「名付けて!殴り返してもいい殴られ屋作戦です!」
一同は、いやもうそれただの喧嘩じゃん、レイは以外と天然入ってるんだなあっと心の中で零した。
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『なめた事してくれるじゃねえか!』
『早く出てきやがれくそ野郎ども!』
『レア素材返しやがれ!』
『もっと殴ってくださいっ!』
様々な罵詈雑言が飛び交う中三人は予想以上の人の集まりに困惑していた。
「いやー…まさかこんなに集まるとは…」
「軍師殿の煽りスキルは天晴だなあ」
「レイって見た目とは裏腹に腹黒ドSだよね~」
西門前には大量のプレイヤーが集まり、150人ほどが今か今かと待ちわびていた。
全員が全員PKをされたわけではないだろう。面白半分、野次馬の人も結構な数いるようだ。
そんな中群集をかき分け一人の青年が現れる。
「お前ら!よくも昨日はやってくれたな!四回もPKしやがって!」
昨日の騒動の被害者のようだ。
しかし四回とは…あの森林地帯で虐殺行為が行われているのを分かっていて四回も足を踏み入れたらしい。
「いやお前アホだろ。俺らがずっとPKしてるの知ってて来てたんだろ、逆恨みすなって」
「つかアホじゃん?」
「確かにそれはアホですね…」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!俺と勝負しろ!真向勝負ならお前らみたいな下衆には負けたりしない!俺の名はメギル!必ずや報復を果たす!」
顔を真っ赤にし今にも湯気が出そうなほど怒り心頭なご様子のメギルと名乗った青年。
武器は片手直剣にシールド装備、ジョブはおそらく下級ジョブの『戦士』だろう。
戦士の特徴は、『攻撃寄りの盾』。攻撃スキルも豊富だが盾としての防御スキルに癖があり人を選ぶとされているジョブだ。
「それじゃ誰が行きますか」
「あいつに決めさせればいいんじゃね?」
「誰が戦うかは挑戦者サイドに決めてもらうってこと?面白そー!」
『という事だ』と事情を挑戦者サイド全員に伝え一騎打ちのデュエルが開始される。
そしてメギルが選んだ挑戦者はガリルだった。
近接特化ジョブである『戦士』と『魔銃師』の相性はかなり悪いだろう。
「俺でいいんだな?」
「お前のPKが一番悪質だったからな!必ずや倒す!」
デュエル条件を設定し相手に申請を飛ばし互いに了承をしたらカウント共に開始だ。
そしてそのカウントがゼロになり開始のアラームが鳴るのと同時。
「シールドダッシュ!」
開始と同時、指定した相手の眼前まで超高速に移動するスキル『シールドダッシュ』。
タンク同士のスイッチの際に使われる技を応用し相手へと斬りかかる。
上段から振り下ろされる剣を焦る様子もなく体を左にそらし避けて見せるガリル。
(へー、以外と早いな、でもさちょっと直線すぎるんだよな)
そして空いた右脇腹に『パワーショット!』
「グハッ!て・・・てめぇ!」
「おらまだまだ行くぞ!」
軽いノックバックにより距離が開く。
そして間髪入れずに通常攻撃の『ショット』で追撃をかける。
その瞬間、群衆にどよめきが起きる。
ガリルが放った銃弾、片手四発ずつの計八発。
その全てが与ダメージが倍になるヘッドショット。
魔銃師が玄人向けと呼ばれる理由はここだ。
理論値ではDPSは最強核なのだがそこに辿り着けるものがいないのだ。
しかしガリルにとっては造作もないこと。
手招きするように挑発を始めるガリル。
(戦ってみてわかった。こいつはバカだな、煽れば煽るほど雑になってくタイプだ)
(どうせまた『シールドダッシュ』で突貫してくるんだろう)
「ぶっ殺してやる!『シールドダッシュ!』」
バカだ…と頭を抱えつつ、避けてはカウンターを決め、時折挑発じみた通常ショットで場の支配権を持ち続ける。
上段から撃ちおろされる剣戟を、首元に迫る横なぎを、すべての攻撃を回避する。
そこからは一方的だった。
メギルの接敵スキルは『シールドダッシュ』のみと把握した時点でガリルの戦法は決まっていた。
『シールドダッシュ』で突貫してきた時は回避からのパワーショットを二発打ち込み、距離を取る。
距離を取っている時は執拗なまでのヘッドショット狙い、これは盾に防がれるがそれでいい。
この時点で相手は『詰み』だ。遠距離攻撃はなく近づく唯一のスキルも無力化されている。勝ち目はゼロだ。
メギルは防戦一方の状況からまったく抜け出せずそのまま三分経つ前に体力全損で敗北となった。
「ぢぎじょおおおおおおおおお!!真向勝負なら勝てると思ったのに!なぜだ!」
「お前バカだろ」
「うるせえええええええ!次は絶対に勝ってやるからな!覚悟しとけよ!」
そんな噛ませ犬発言をし、涙を流しながら走り去ってしまう。
ジョブ相性もかなり悪かったが、『攻める』か『守る』のどちらかの行動しか取らない時点で対人相手はかなりへたくそだ。
直情的な性格の持ち主にはPVPは向いておらず、対人においてはどんなジャンルだろうが『駆け引き』が必須技能だ、それをどこまで高められるかによって勝敗は大きく動く。
それが一切ない時点で…。
あいつマジで対人向いてないな…と少し哀れみの感情を抱くガリル。
「へっへっへ、次は俺が行くぜ」
筋骨隆々、巨大な斧を持った屈強な大男が現れる。
上位ジョブの『ウォーリアー』という一撃特化のジョブだ。
「俺の対戦相手はそこの銀髪の姉ちゃんで頼むぜ」
「構いませんよ」
何やら下卑た笑みを浮かべながらニヤニヤとレイに近づく。
「なあ姉ちゃん、もし俺が勝ったらよ、50万いらねえから今日一日付き合ってくれやゲヘヘ」
「いいですよ?勝ったらですもんね」
下卑た笑みに対し、天使のような笑みで快く承諾する。
後ろでラディーが『う~っわ…』とゴリマッチョ男にドン引きしているが気にしない。
「それじゃ始めようや!」
申請を送りカウントが始まる。
「よっしゃいくぜえええええええ!」
上段から振り下ろされる巨大戦斧を軽々避け、その戦斧を足場に跳躍。
大男の眼前まで跳躍し猛烈な回し蹴りを決めるもDEFが高いのかズザザッと地面を後退するのみだ。
「ぐがあぁ!やってくれるじゃ―」
(戦闘中に何をしゃべっているのですかね…まったく)
すぐさま懐に入り腹部への連打、それを嫌がり大男は掠っただけでも即死しそうな横薙ぎを繰り出す。
しかしそんな苦し紛れの大振り当たるわけもなく、レイは胴を寸断するような一撃を回避する。
そして目の前にいたはずのレイの姿が消えた。
「あぁん?どこいきやがった!」
想像以上の苦戦に苛立ちを隠せない大男は声を荒げる。
それを挑発するかのようにレイが後ろから肩をトントンと叩き不適な笑みを浮かべ腕を取り。
その瞬間大男は宙を舞った。
上空を三回転半、縦に回転し脳天から地面にたたきつけられる。
「おー軍司殿により見事なトリプルアクセルだ」
「十点満点だね!」
大男に歩み寄り、顔は笑っているが内心穏やかではない表情のレイ。
「勝ったら、一日付き合う、でしたよね?」
「い、いやあ…そのぉ…その話はなかったこと―」
「でしたよねー?」
そこからは大男が泣き叫び謝罪を繰り返す一方的な血みどろの戦いとなった。
ラディーの戦闘も一方的だ。
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・スキル【見切り】発動!
・スキル【見切り】発動!
・スキル【見切り】発動!
・スキル【見切り】発動!
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「何でそんなに『見切り』が発動するんだよおかしいだろおおおおおおお!」
斬り刻まれただ一度の攻撃もなくバフが乗ったカウンターを受け続け絶叫と共に崩れ去った。
攻撃を仕掛ければすべていなされ瞬時に数閃の斬撃が襲い掛かり、迂闊に手が出せなくなればこれでもかと攻め立ててくる。
超怒涛のスピードファイターの戦いぶりに翻弄され続けなすすべもなく敗北を期した。
そんな一方的な試合展開を見ても挑む者は絶えなかった。
上位ジョブに昇華した者も多くいたが三人にいいように型に嵌められクリア条件の『一撃当てる』ことすら出来たものはいない。
そんな状況が続けば普通は萎えたり、諦めたりするはずなのだが誰も諦めなかった。
次第にレイとラディーへの挑戦ばかりになる。
理由は簡単だ。
『俺寝技されてるとき、手首が幸せすぎた…』
『ラディちゃんのチラリズム…』
『レイ様!どうかこの俺をもっと!』
『ラディちゃんの回避の仕方だと脚フェチの拙者はたまらん…』
『揺れがっ!揺れが俺を誘惑するんだ!』
PVP会はレイとラディの鑑賞会になっていた。
それに気づかない二人、気づいているも伝えないガリル。
このゲームには『欠損デバフ』というものがあり、痛覚が遮断されている世界だからとレイによる強烈な寝技が炸裂。
十字固めを受けたプレイヤー、左腕が逆方向に向きながら放った『太ももと胸がっ』と発言したことにより変態達の挑戦、鑑賞場となったのだ。
しかしバレるの時間の問題だった。
レイが放った『サマーソルト』によりことは露見した
「あー!あんたら今どこ見てたのよ!」
そんなラディーの一言により露見した事実、男たちは絶望恐怖、もっと拝みたいという渇望、人様々な表情を浮かべレイを一見する。
肝心のレイと言えば…
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!」
真っ赤な顔をしながら左手で胸元を隠し、右手でスカートの丈を抑え、ぷるぷると体を羞恥に震わせ男たちをにらみつけていた。
その瞬間群集の思考回路はただ一点の終着点、世界の心理を悟り、抗う事の出来ない理を理解した。
『今なら死ねる…』
これ以上の幸せはないといった表情を浮かべながら死刑執行を待つ男衆であった。