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残虐!非道!クソ野郎!

 街を出て徒歩で数分のところにある森林地帯。

 その森は本来ならば静寂に包まれているのだが今日は違った。


 「いぎゃああああああああああああああああああああああああ」

 「やめ・・・やめてくれ!あああああああああああああああ」

 「なんでだどうしてだ意味が分からないいいいあああああああああああああ」

 

 絶叫と悲鳴による阿鼻叫喚の森となっていた。

 理由は当然四人による虐殺行為、奇襲、罠、多人数による一方的な攻撃。

 非道と罵られながら容赦なく、慈悲もなくPKを稼いでいく。

 

 「お、おまえらに人の心はないのか?!普通思いついてもやらないだろ!モンスター大量に引き連れて擦り付けた後にPKなんて!」

 

 トレイン行為、その行為はプレイヤーから忌み嫌われ、行った者には罵詈雑言が送られる。

 しかも四人はトレインをした後にこともあろうかPKを行なったのだ。

 

 「システム的に出来ることは…やっておっけー…」

 

 「使える手を使わない理由なんてないっしょ!」


 「運が悪かったな」


 やられたほうからしたら最悪な手段をさも当然だ、と言わんばかりの四人。

 そしてその無機質な狩人の八つの瞳に睨まれ戦意喪失してしまう。


 「軍師殿、次はどうするよ」


 「軍師殿はやめてくださいガリルさん…」

 

 「トレイン作戦思いついたのレイだししかたないっしょ!」


 「もう!!」


 なんと清楚で礼儀正しいレイ発案の作戦だった。

 ゲームに対する姿勢だけはまったく清楚の欠片もなかった。


 「次どうしましょうね…」


 うーむ…と悩むレイだがすぐさま作戦を思いついた。

 項垂れて首を斬られるのを待つだけのプレイヤーに不意に声をかける。


 「あのすみません。PKしたら所持品が落ちますよね。それってPKした人された人以外も盗れるのですか?」


 それを聞いた三人はレイの意図を把握した。

 三人が「あ~」とか「いいなそれ」とか「最…高…」などと不穏な事を口走っている。

 たぶん、というより十中八九ろくな作戦ではないだろう。


 「ああ…拾えるよ…どうせ俺のアイテムも持ってくつもりなんだろ!ぢぎじょう、グスン…」

 

 「皆さん作戦決まりましたよ、フフッ楽しくなりそうです」


 

 ==============================================


 レイ達が非道な作戦を立てているとは知らないプレイヤー二人が森へと入った。

 

 「なあレベル10超えたしそろそろ次のエリアいかね?」


 「まあありかもな~、今日の探索終わった後に考えてみるか」


 他愛無いやりとりをしていたその二人組はある物を目にする。

 プレイヤーが死亡した際に落ちるインベントリだ。

 普通ならそんなものは落ちていない、当然気になるのは人間の心理だろう。

 だがそれが命取りになった。


 「ラッキーと思ったけど石ころ一つしか入ってないじゃん…」

 

 「初心者が森に入ったけどモンスターにやられたんだろ」


 「そっかー、まあ探索いこ━━━」


 その瞬間、上空から巨大な岩石が落ち、二人のプレイヤーは下敷きになってしまう。

 岩石はオブジェクト判定でダメージは与えられないので二人は『ただ』下敷きになってしまった。

 

 「大成功じゃん!」

 

 「ない…す…!」


 「軍師殿はさすがだなあ」

 

 「軍師殿はやめてくださいッ!」


 下敷きにされ困惑している二人の前に上機嫌な四人が現れる。

 当然下敷きにされた二人は四人が仕掛けた罠だとすぐに気づき声を荒げるもレイの一言で二人に戦慄が走る。


 「ね?言ったでしょニナちゃん。マナを使ったらダメージ出てこの人達落石だけで死んじゃったでしょ?でも『ただ』の岩を使うことで『一番レベルの低い人』が楽に経験値を稼げるんだよ」


 「それにインベントリが消えないように中身全部盗ってから石ころ一個だけ入れるあたりさすがだな~って!」


 この作戦の流れはこうだ。

 インベントリなんてものはそこらに落ちているものではなく、もし落ちていればプレイヤーが死亡した証だ。そしてインベントリが消えていない、ということは中身があるということ。

 それを見たら『合法』でアイテムが手に入るわけだ。

 欲しいと思うのが人間というものだ、そこに漬け込む作戦だったのだ。

 あとは簡単、インベントリに釣られたプレイヤーを落石で動けなくしてPKするのみだ。

 

 ただもちろん相手は罠かもしれないため警戒するだろう。そのためタイミングは対人において相手の機微を細かに読み取るのに卓越した目を持つガリルがタイミングを決めていた。

 FPSで培われたその観察眼に狂いはなく見事罠に嵌めることに成功したのだ。


 それもそのはず、ガリルはリリースから僅か2年立たずにオフライン世界大会が二度も開かれる超ビッグタイトルのFPSでその両方で優勝している。

 運なども絡むFPSにおいてこの記録は以上なまでの戦績だ。

 それでも二連覇を達成せしめた理由は未来予知にも近い相手の行動予測、それほどまでのプレイヤーならレベル10そこらのプレイヤーを罠に嵌めるなんてことは造作もないことだ。


 「お・・・お前ら最低最悪じゃねえか!!」


 「クズ野郎ども!きったねえ手使いやがって!正々堂々勝負しろ!」


 当然の抗議、を右から左に流しこんな発言をしだした。


 「みんなレベルいくつ?」


 「うち…7…」


 「あたし9だよ!」


 「俺も9」


 「私が一番低いみたいですね、6なので私がもらいますね」


 そんな狂気じみた発言をし、そそくさとトドメ作業に入るのだが絵ずらがひどい。

 レイのジョブは拳闘師。

 まあ殴るわけだが、高レベル相手に数回では体力を削りきれない。

 よって殴って殴って殴るのだが、絵ずらのインパクトが凄まじい。

 『絶世の美人』が男が見たら誰でも惚れてしまいそうな『笑顔』で『鼻歌交じりに』マウントを取ってボッコボッコと殴りつけているのだ。

 一部特殊界隈の人達にはご褒美かもしれないが、やはりひどい絵ずらだ。


 「ふぅ~終わったー、レベルも8まで上がりました!」


 その日、森林地帯は一日中阿鼻叫喚が巻き起こっていたという話だった。


 ==============================================


 PKによる大量の経験値と森林地帯で取れるレア素材や、モンスタードロップ品を大量に略奪した四人は宿屋へと帰還する。

 

 「それにしても経験値美味しかったですね」

 

 天使のような笑みで悪魔のような行為を悪びれた様子のないレイ。

 それに対し他三人も『ちょろかったな』『うまし…!』『つかあのプレイヤースキルの相手に罠とかいらなかったっしょ!』などと楽し気に談笑を繰り広げる。

 

 そんな中レイがふとサイト巡回をしていた際、こんな愚痴スレを見つけた。


 『森林地帯で卑劣なPKをされた奴の会』


 当然そこへの書き込みは怒りや恨み等などの書き込みばかりだ。


 『ありえるか?!トレインだぞトレイン!しかもその後弱ったとこを遠距離PK。最低だろ?!』

 『俺レアモンスターと戦ってるとき、助っ人のフリされてPKされた。討伐間際でだぞ!ふざけるなッ!』

 『俺もPKされたわ。でも俺を殺した犯人はギャルっぽい巨乳だったからちょっと…』

 『わかる。俺、銀髪っ子にマウント取られてぼこぼこに殴られた。実は少し気持ちよかった…』

 『は?裏山。PK犯の前にお前をPKしたい』


 などと徐々に話はずれていってるが四人に向けてのヘイトは凄まじいものだった。

 そしてそれを見たレイが新たに作戦を思いついてしまう。


 「おや、軍師殿がまた悪だくみを思いついたようだぞ」

 

 「レイってばきっちく~!」


 「見た目は天使…頭脳は悪魔…その名も非道神レイ…」


 「もうッ!皆さんやめてくださいよッ!」


 そしてその作戦を三人に伝え始めるレイだった。

 

 

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