プロローグ
青春とは何か。
ひとえに括れるものでは決してなく、100人いれば100人の青春があるだろう。
しかしそんな青春を、誰しもが経験するであろうその事象を謳歌出来ずにいる4人の少年少女達がいた。
『悉くを無双する者。』
『軍師おれば勝つこと叶わぬと言わしめた者。』
『無傷の王として恐れ戦かせる者。』
『創造神と呼ばれる者。』
その分野において右に出るもの叶わず。
そう、『ゲーム』において。
そんな少年少女の目先の悩みと言えばもっぱらこれだ。
「「「「もっと張り合いのあるゲームないかなあ…」」」」
そんな贅沢とも取れる嘆きを零した数舜。
眼前のモニターが激しく発光し、そこで四人の意識は光の中へと消えていった。
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「はいはぁ~い、皆さま起きて下さぁ~い!」
そんな間の抜けた、おちゃらけた声と共に4人の意識は覚醒する。
「ん…ここは…?」
そんな当然な疑問符を透き通った声で問いかける。
他3人も当然の反応と言わんばかりにあたりをキョロキョロと見渡す。
「おっはようございまぁ~す!そしてようこそ!ゲーマーのためのゲーマーだけが入ることの許された『ロード・オブ・スロー』の世界へ!」
「「「「…?」」」」
「おやおやぁ~?まだ寝ぼけてるのですかねぇ?一言でいうとですねぇ、あなた達最強のゲーマーでも満足出来る世界にお連れした次第なんですよぉ~!」
ほえぇ?
といった表情から変わらない4人。
そんなことはお構いなしにペラペラと事情を説明する案内人。
このおちゃらけた案内人の話を要約するとこうだ。
既存ゲームで満足出来ない、そんな超ド級コアゲーマーのために用意されたゲームの世界。
この世界ではマウスも、キーボードも、コントローラーも使わず己の身一つ、レベルを上げ、様々なスキルを習得し、この世界の神の座に付く最強のゲーマーを決めるゲームだそうだ。
「神の座とか言ってますけどぉ~、まあクリアした人は元の世界に帰還して頂く流れになりますけどねぇ~?まあただのゲームクリアだと思ってくださいぃ~。」
話を聞きながら少しずつ頭が回ってきた4人。
「質問いいか?」
最初に口を開いたのは茶髪に高身長、眼鏡をかけたクールなイケメン青年だ。
「仮にそのゲームをクリアしたとして俺たちのメリットは?それと元の日本に戻ったときに行方不明扱いされていたら困る。その辺はどうする」
「はぁい~、ゲームをクリアしたあかつきには富と名声、とまではいきませんがぁ~、富のほうはお約束しますよぉ~?金貨300万枚の大出費ですぅ~」
「次は私が質問してもいいですか?その金貨とやらはどれほどの価値なのでしょうか?換金も出来ないものを貰っても困るのですが…」
そんな大人びた心配をする銀髪を腰まで伸ばし、制服を着ているあたり高校生だろうか。
スレンダーながらも大人びた雰囲気を醸し出し、どこか扇情的に見えるほどの美少女だった。
「そうですねぇ~、金貨300万枚はぁ~、日本円で30億ちょっとぐらいですねぇ~?仮にクリアされて帰還するときはぁ~、ちゃんと日本円で一人30億渡すのでぇ~安心ですよぉ~?」
「「「「30億?!」」」」
「それとぉ~、元の世界に戻った際のお話ですがぁ~、あなた達がこちらの世界にいる間、向こうでのあなた達に関する記憶は全て消えていますぅ~、戻った際に都合よく改変されるので安心してくださいぃ~!」
心底安心出来ない、そんな発言の扱いに困っていた4人に向けてそのおちゃらけた案内人は言ってはいけない事を言った。
超が付くほどのゲーマー、そして数あるゲームの特定ジャンルで最強を謳われているゲーマーには絶対に言ってはいけない事。
「まぁ~、この世界が出来て2年たってもまだクリア者出ていないのでぇ~、自信のない方は辞退していただいても構いませんよぉ~、後発組ですしね~ウフフ~」
「「「「ブチッ」」」」
そのたった一言だけで4人はもう他のことなどどうでもよくなるほどの熱が付いた。
「こと、俺に限ってクリアできないゲームがあるわけねえだろ?」
「うち…ゲームで詰んだこと…ないよ…!」
「ここまで煽られてしまっては私引き下がるわけには行きませんね」
「つかさ、うちの事バカにしてんの?」
そんな性格まで尖っている4人に火に油を注ぐ結果になった。