表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生は履歴書のどこに書きますか  作者: 打段田弾
第6章「異世界大戦」編
361/369

世界を喰らう者

「自爆……、だと……!?」


 道周の檄に言葉が失われる。言葉の意味を咀嚼するまでに時間を要し、理解した後に戦慄が走った。


『理解したところで未来は変わらん』

『貴様らは、この大地ごと消え失せてもらう』


 魔王の背の双頭が勝ち誇った声音を漏らす。腹の底から滲み出る声音は跳ね上がり、勝利を確信しているようだった。


『グゥゥゥ……、ガァァァ……!』


 そして魔王の本体が高らかに呻き声を上げた。うずくまった巨体の腹部は奇妙に膨張し、その中に抱える物体は今も尚膨らみ続けている。


「まさか、お腹の中にブラックホールを創っているの……?」

「それも、今までの砲弾とは比べ物にならない大きさだ。この大陸ごと、いいや、この世界ごと滅ぼすつもりだ」

「我が身を犠牲にしてでも差し違えるつもりか!」


 魔王の奇行に、堪らずバルバボッサが怒号を上げた。他の世界から来た魔王が、その世界に生きる者も大地も全てを消し去ると言うのだ。

 これに怒らぬ者はおらず、抗わぬ者はいない。

 怒りに身体を震わせ冷静さを欠いた領主たちに対し、マリーは冷静に状況を把握していた。領主たちの怒りを理解する一方で、マリーは魔王の思惑を見抜いていた。


「違う……。魔王は自分を犠牲になんてしない」

「そうだ。奴は「死」程度では滅びない。いつか、どこかの世界に転生し、また悲劇を生む。奴はここで倒さないと、滅ぼさないといけない」


 道周とマリーは不退転の覚悟を決める。フロンティア大陸の平和と安寧を取り戻すだけの戦いではくなった。

 存在すら知らない平行世界を賭けた、大規模な闘争になり変わった。かけられた命は数知れず、天秤に乗せられた未来は無限大である。


「ミチチカ! 業を出し渋っている暇はないぞ。全力で叩き潰す!」

「おう。猶予もないとなれば、短期決戦で仕留める。ジノ、マリー、皆、力を貸してくれ!」


 聖剣を天に掲げたジノが大地を駆ける。

 魔剣の枷を解いた道周が跳躍する。

 大地を這う紫炎の海をスカーが切り裂き、振り下ろされる節足の打撃をアドバンが打ち返す。魔王が吹き出す荒れ狂う息吹をバルバボッサが跳ね返す。


『グゥゥゥ、ガァァァ……! 滅びよ。数ある三千世界を食い荒らし滅ぼし、我は君臨する。我が暴食と必滅の性は、誰にも止められんんんんん!!』


 うずくまって呻いていた魔王が鐘声を上げた。本体である巨躯が捩じられたということは、その体内に超新星爆発の用意が整いつつあることを意味する。


「魔性開放――――!」

「聖剣抜刀!」


 2人の剣士が、愛剣の性能を遺憾なく発揮する。

 枷を外した魔剣は剣身から白銀の光が放出される。渦巻く光の奔流は天を衝く柱となり、刀身一体の斬撃となる。

 魔王を殺す聖剣の輝きが増す。ジノの手の中に納まりながら、聖剣の存在感がみるみる溢れていく。輝かしく優しさに満ちた光の剣閃は、「邪神」や「魔王」という諸悪の根源を絶つ刃に変わる。


『来るがいい、剣士ども!』

『我が積年の怨念を、憎悪を晴らすときだ!』

『この世界とともに貴様らへの無念を晴らす。そして我は次の世界へ行こうではないか!』


 魔王の三つの頭が咆哮を上げる。いよいよ最後の攻防に奮い立ち、対魔王への切り札が炸裂する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ