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異世界転生は履歴書のどこに書きますか  作者: 打段田弾
「イクシラ革命戦線」編
36/369

セーネの告白 2

「セーネの告白 1」の続き

「俺とマリーを召喚したのは誰だ?」


 場の雰囲気が一瞬にして凍り付いた。

 散々茶化していたマリーの作り笑いも張り詰めている。

 控えてるシャーロットも心なしか眉をひそめ、主へ無礼を働いた道周を締めようかと身構えている。

 そんな緊迫した空気を打ち破ったのは、セーネの高笑いだった。


「はっはっは! いきなり突っ込んだことを聞くんだね。

 ……いいとも、答えると言ったのは僕だ。嘘偽りはない」


 セーネは膝を叩いて哄笑を上げる。主の愉快な様子を見て、シャーロットは矛を納めた。

 マリーも弛緩した空気に胸を撫で下ろし、セーネの続くであろう言葉に耳を傾ける。


「「誰が召喚したのか」という問いについての解は「分からない」だ。

 以前の僕には世界を越えた召喚を行う術があったが、今の僕にはない。関連する権能は、精々「召喚の予兆を捉える」が関の山だ」

「確かセーネの権能ってやつを勇者に分け与えたんだよね?」

「マリーの言う通りだ。僕の白夜にまつわる権能"星の運航"の半分を勇者に割譲した」

「じゃあ、何で死んだはずの勇者の権能がまだ生きている?」


 道周の質問は一々が的を得ていた。

 的確な質問にセーネは冷や汗を流し苦笑しながらも回答を渋る様子はない。


「僕にも真実は分からない。ただ可能性として「魔王が勇者の権能を奪った」「"星の運航"の権能以外に異世界召喚を行う権能が存在する」の2つが考えられるかな」

「「勇者が裏切った」ってことは?」


 道周の不躾な問いかけに、堪らずシャーロットが身構える。

 セーネが身振り一つでシャーロットを諌めるが、マリーが険しい眼差しを道周に向けた。

 

「ちょっとミッチー! そんなことセーネに言ったってしょうがなくない? セーネは勇者を信じて権能を別けたんだよ。そんな勇者が裏切るなんて」

「有り得なくはないだろう。可能性の議論として省くのはいただけないな」


 静観していたリュージーンがここに来て口を挟んだ。

 元魔王軍の一員として策略を巡らせ、政戦を潜り抜けてきた者として思うところがあったのだろう。


「ちょっとリュージーンまで……。それじゃあまるでセーネが」

「「出し抜かれた間抜け」ってことになるな!」


 悪びれる様子もなくリュージーンは笑い飛ばした。その目に余る非礼さに、シャーロットとマリーは必死に怒りを堪える。

 間を取り持つのは道周だった。


「そこまで言うつもりはないけど、可能性として考慮すべきだとは思う。

 俺とマリーにとっては一大事なんだ。召喚したやつに会って、「なぜ召喚したのか?」を問い正さなきゃいけない。それに元の世界に戻してもらわないと困る」

「ミチチカの言う通りだ。僕としたことが失念していた。申し訳ない」


 セーネが頭を下げ、これ以上の議論は打ち切られる。セーネの潔さと事を荒立てずに丸く納めた手法は、元とは言えさすが領主と言えよう。

 しかしマリーは未だ憮然とした顔をしている。

 道周はそれを承知の上で、雰囲気を変えようと次の質問を投げた。


「次の質問、単刀直入に聞くけど、ソフィに俺たちを連れて来させた理由を聞きたい」


 道周の次の質問にも、セーネはニコッと笑って答える。


「ミチチカなら何となく分かっているんだろう。僕は君たちを当てにしている。

 僕も単刀直入に言おう。夜王を倒すのに協力して欲しい」

「私たちで……、夜王を?」


 呆気に取られたマリーはおうむ返しをする。


「これは僕たちの下心だ。断られる可能性もあるが、もちろん引き受けてくれるよね……?」


 セーネは今までになく邪悪に微笑んだ。

 影のある笑みには、かの夜王と同じ血筋を感じさせる冷たさを含んでいる。

「セーネの告白 3」へ続く

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