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異世界転生は履歴書のどこに書きますか  作者: 打段田弾
第6章「異世界大戦」編
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動き出す領主

「や、元気そうだねミチチカ」

「セーネ! どうしてグランツアイクにいるんだよ?」


 久方ぶりの再会を果たしたセーネと道周は、喜色に満ちた挨拶を交わした。2人はハイタッチを鳴らして笑顔を向け合い、それぞれの近況を伺う。


(わらわ)もおるぞ」


 親しく言葉を交わす道周とセーネに妬いたスカーが、割って入るように身体を捻じ込んだ。その褐色に焼けた魅惑的な身体を存分にあてがい、魅惑的な誘惑をする。

 凹凸のはっきりとした女性的な身体つきに、セーネが顔を真っ赤にした。セーネとて女性的なふくらみとくびれのはっきりしたスタイルをしているが、スカーと比べると些か貧相に思えてしまう。


「そんなに近付かなくてもいいんじゃないかな?」

「あら、セーネも触っていいんでしてよ。妾は男女問わずに愛を振り撒くぞ」

「そういうことじゃなくてだね!」


 セーネは耳まで真っ赤にして反駁するが、スカーの飄々とした受け答えは揺るがない。暖簾に腕押しとはこのことであり、セーネがどれだけ喚いてもスカーには響かない。


「まぁまぁ落ち着いて。どうしてセーネもスカーもグランツアイクにいるんだ? セーネはとにかく、スカーはニシャサを離れて大丈夫なのか?」


 見かねた道周が、スカーの四肢の誘惑を断ち切って仲介に入った。

 セーネは相変わらずふくれっ面を浮かべるが、スカーは意気揚々と受け答えする。


「おや。ミチチカ、其方は何も聞いておらんのか?」

「何もって、何も。何が何で何が何だか。一体、何がどうしてなんで?」

「ちょっと黙ろうかミチチカ。わざと回りくどい言い方をしているね。

 僕から説明しよう」


 セーネは嫉妬も羞恥もない冷静さのまま、人差し指を立てて道周の口を塞いだ。そして深い溜め息を吐いて、事情を1から説明する。


「まず、何も話を通していなくて申し訳ない。今回は情報を絞りに絞っていたんだ」

「絞っていたって、グランツアイクにセーネたちが集まることをか?」

「そうだよ。正確には、義兄は性質上長距離の移動に手間取るから僕が代理だ」

「でも、領主が自分の領域を空けるっていうのはマズいんじゃないのか?」

「だから情報を絞ったのだ」


 道周の問いに答えたのはセーネ、ではなくスカーだった。

 セーネは良いとこ取りをされて頬を膨らませるが、咳払い一つで気持ちを切り替える。


「この情報は、義兄とその側近、スカーと側近、バルボーとモニカ、そしてニシャサに残ったリュージーンたちしか知らない」

「まさか…………」


 道周はセーネの言葉の裏にある真相に気が付く。


「そんあことをしたら……」

「情報が筒抜けならば、魔王軍に攻め入られるかもね」

「そんな囮作戦みたいなことをしていいのか!? スカーはそれを知って――――」

「承知の上である」

「っ……!?」


 スカーの静謐な回答に、道周は豆鉄砲を喰らった。その淡々とした声音もさることながら、即答の様に面食らう。

 スカーは顔色一つ変えずに、不思議そうな顔をする道周に言って聞かせる。


「妾の領域には優秀な兵士がおるのだ。魔王軍と言えど有象無象。

 大軍で押し寄せるのならば、我ら同盟でエヴァーに攻め込めばよい。少数で攻め込むのならば、返り討ちにしてやればよい」

「だからって、明らかな囮作戦じゃないのか?」

「なに、攻め込まれると決まったわけではあるまい。妾は別として、其方が仲間を信じずにどうする?」

「……、それもそうだな。疑わしきことがなければ堂々と胸を張ればいい。俺たちにできることは、本番の戦いに向けて作戦を詰めるだけだ」


 気分を一新させた道周は、鼻息を荒らげて会議のテーブルに向き合う。グランツアイク側によって用意された作戦会議のテーブルには、すでに5つの椅子が備えられていた。

 上座には司会進行を務めるモニカが座っている。その右手には主催者のバルバボッサが席についており、残るメンバーの着席を待っている。


「……さぁ、作戦会議といこう」


 セーネの言葉に道周は頷き、スカーも後に続いた。3つの領域と魔女同盟の代表が一堂に会し、迫り来る大戦に向け着々と準備を進める。

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