再起する剣 2
「あのドーゲンが「マサキ」ってまさか!? そんな突拍子もないことがあるの?」
道周の大胆な推理に、マリーが素っ頓狂な声を上げた。
驚愕したマリーに対して、道周は冷静に説き伏せる。覚束ない足取りにも関わらず、道周の言葉は芯のある強いものだった。
「あるさ。リュージーンが言っていた「マサキの容姿の特徴」と、あのドーゲンは重なるところが多い。まさに日本人らしい顔立ちとは思わないか?」
「う……、確かにそう言われるとそうかも」
「何より、決め手は奴の権能だ。業火に雷と暴風、瞬間移動もセーネの権能だと思えば合点がいく。大地の隆起を操る権能も、東の領主のものだろう。
そう考えれば、複数の強力な権能にも頷ける」
リュージーンの補足に、ソフィが大きく頷いた。ソフィもどこか心に引っかかっていた疑念が、今の言葉で裏付けされたということになる。
「こんな出鱈目な権能を操る敵が2人もいてたまるか。
「200年前の勇者「ドウゲン マサキ」が敵に寝返った」。まだそっちの方がやり様があるってものだ」
「でも、そうだとしたら悲しいことだよね。200年の間、ずっと勇者を信じていたセーネたちの気持ちは裏切られたってことになるよ」
「それでもケジメは必要だ。勇者がどうして裏切ったかどうか問い質し、俺たちがケリを付ける」
「……そう、だね。セーネたちに苦しませないためにも、ここで私たちが決着を着けよう!」
マリーは両拳を胸の前で握り締め、碧眼に決意の火を灯した。
その表情は同盟の長としてではなく、セーネたちの友としての色が強く表れていた。
「何はともあれ、魔剣の切り札を使うにはドーゲンの大きな隙を突かなければいけない。テンバーの猛攻に便乗するにせよ、ただの不意打ちでは避けられてしまうだろう」
「だったら、私たちで攻撃をするよ。手数が増えれば、回避に割く意識も減るよね」
「ですです。通じるかどうかは置いておくとして、さすがのドーゲンでも楽ではないかと」
「よし、そうと決まれば特攻だ。あの無茶苦茶な権能に対して守りに入ると、じきに押し潰される。お前たち、攻めて攻めて、攻めまくれ!」
「リュージーンは?」
「俺が行くと足手まといになる。俺はここから適時指示を飛ばす!」
「そこで胸を張るなよ……」
そして、いつもの軽口を連ねて作戦が固まった。
マリーとソフィの支えから自立した道周も、戦えることをアピールするように四肢を振った。指先の痺れもなく、足に違和感もない。微かに耳鳴りが響き、立ち眩みのような感覚に襲われたが、それもすぐに止んだ。万全まではいかなくろも、短期決戦で決着を付けるための体力は気力でカバーする。
確かな足取りの道周を目の当たりにして、マリーも心配を止める。今、道周必要なのは励ましの言葉ではない。戦うための力と仲間だと悟る。
マリーはその証明として、墜ちた魔剣を引き摺って道周に届けた。
「はい、ミッチー」
「お、おう……。ありがとう……」
「今は私も戦える。自分の身は自分で守れる。だから、全力で倒してきて!」
「私も全力でカバーします。後ろは任せていただいて、どんと決めてきてください」
「だ、そうだ。俺のできることは終わった。任せるぞ」
「あぁ……。任せろ! 2回目の異世界転生なんだ。たった1回目のやつに負けてられるか!」
「「「おぅ!!」」」
4人は気持ちを一つにして雄叫びを上げた。固められた拳は晴天に突き上げられ、その瞳はテンバーと死闘を繰り広げられる「ドーゲン マサキ」に注がれている。
「行くぞ!」
先陣を切った道周に続き、マリーとソフィも駆け出した。勇猛に疾走する3人を見送ったリュージーンは蒼天を仰ぐ。
「ドーゲン マサキ」が展開する、超常的な権能の渦に飛び込み、第2ラウンドの火蓋が切って落とされた。




